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バラナシのプージャは古典的?ハリドワールのエンタメ性溢れるプージャとの違いに驚く

バラナシ
目次

【インド・スリランカ仏跡紀行】(94)
バラナシのプージャは古典的?ハリドワールのエンタメ性溢れるプージャとの違いに驚く

宿で一休みした私は夕方、再びガンジス川周辺へとやって来た。

プージャ Wikipediaより

これから夜のプージャ(火の儀式)がガートで行われる。バラナシに来たならばこれを見ずして帰れない。

朝にも来たはずだが全く違う世界に見える。

早朝ここを通った時はまだ夜の世界で、店も全て閉まっていた。それがこうして店が開いていると色彩のある世界が帰ってきたような気がしてくる。インドといえばやはりこの色彩なのだ。

さて、ガート付近までやって来た。

まだプージャの開始までは30分以上あるがすでにかなりの人が場所を確保している。ガートの階段に座ってその時間を待っている。たしかにかなりの混雑ではあったが意外と整然としている。ハリドワールのカオスを見た私からすると、ずいぶんおとなしい感すらある。(ハリドワールのカオスについては「(3)ハリドワールの祈りの儀式プージャを体験~巡礼者達の熱気とエンタメ性溢れる祭式に驚愕」の記事参照)

ガート正面のここがプージャのメイン祭壇となる。

私はというと、この写真正面に写っている建物のテラス席からプージャを見ることにした。ガイドさんによればここがベストスポットなのだそう。

こちらがテラス席からの眺めだ。川岸に祭壇が一列に並んでいる。ここにバラモンが来て火の儀式を執り行うのだ。

そしてこの写真を見てわかるように、川には多数の船が係留されている。船からもプージャを見ることができるのだ。おぉ、ガンジス川に浮かびながら真正面でプージャを見れるなんて最高ではないかと私も思ったのだがガイドさん曰く、それは避けた方がよいとのこと。なぜなら川の上は蚊がものすごいらしいのだ。それを聞いて私もぞっとした。やはり安全なこのテラス席が一番だ。

時間が近づいてきた。祭壇の上に花びらが敷き詰められる。中央の祭壇にはシヴァ神の像や祭具が置かれている。

少しずつ暗くなってきた。それにつれてこのガートにどんどん船がやって来る。この写真からも会場の熱気が伝わってくるのではないだろうか。

間もなくプージャ開始だ。祭壇の光が眩しく感じられるほど辺りは暗くなってきた。インドらしい鐘の音がひたすら鳴らされる。

バラモンが祭壇中央に集合。いよいよプージャが始まるようだ。さて、本場バラナシでのプージャはどのようなものなのだろうか。

儀式開始の前から鳴り響いていた鐘の音はそのままに、太鼓の音も加わる。しかし予想していたよりもかなり穏やかな音楽だ。バラモンたちの動きもかなりスローモーション。煙の出る小さな筒のような物を持ち、ひとつひとつゆっくりとポーズを取っていく。

しばらくするとようやく火の出番がやって来た。ハリドワールでも見たような祭具を用いて火を掲げていく。

おお!ここから盛り上がっていくのか!と思いきや、音楽は変わらず呑気なまま。バラモンの動きもほとんどない。

何だろう。もっと皆が盛り上がるような激しいビートだったり、キャッチーなメロディなどはないのだろうか。ハリドワールで見たあのエンタメ性溢れるプージャとは随分な違いではないか。私は困惑するしかなかった。

バラモンの動きも相変わらずスローモーション。そうだ。そもそもこのプージャの開始からして一列に並んだバラモンが音楽に合わせて手拍子をするという何とものんびりとした始まりだったのである。そしてそれは最後まで変わらなかった。さすがに最後の方は盛り上がるだろうと思ったのだが違ったのである。

そして興味深かったのがプージャを見ているインド人もあまり盛り上がっているようには見えなかったのである。そう、静かなのだ。あの全員が熱狂するハリドワールのプージャとはまるで違うのである。これはどういうことなのだろう。

私達はこのプージャが終わる少し前に席を立ち帰路に就いた。プージャ終了後は混雑で大変なことになってしまうのである。

見ての通り、皆整然とこのプージャのラストを見守っている。「何だろう、何かインドらしくない」とふと思ってしまった私はおかしくなってしまったのだろうか。

帰り道、私はガイドのグプタさんに聞いてみた。

「ここはいつもこんな感じなのですか」

「はい。そうです。昔からずっとこうです」

「去年ハリドワールで見たプージャと全く違うのですがなぜなのですか」

「ハリドワールはデリーが近いので都会風です」

ん!?ハリドワールが都会風!?どういうことだ?

「ここは昔からのプージャをしていますが、向こうはデリーの都会人がよく行くのでその影響を受けています」

そうか!だからハリドワールには現代的でキャッチーな歌と演出があったのだ!

私は恐るべき思い違いをしていた。熱狂的でエンタメ性の強いハリドワールの方がよりインド的かと思ったら逆だったのである。むしろ古典的なインドらしいプージャはバラナシにあったのである。ハリドワールは都会的なのだ!より現代的でエンタメ性に特化したプージャがそこで行われていたのである。

そしてグプタさんはこう続けた。

「バラナシに来るインド人は皆沐浴が目当てなので朝にそれが済んだら帰ってしまいます。なのでプージャは見ません」

「え!?プージャを見ないのですか?」

「はい。プージャを見ているインド人はだいたい遠くから来てここに泊まる人くらいです。南インド人の方が多いですね。彼らは夜することがないのでプージャを見に来ています」

信じられない・・・。まさかそういうことだったとは・・・。

だが、言われてみれば妙に納得である。明らかにあのプージャを目当てに来ている人は少ないだろう。それはそこにいる人達の熱量を見れば明らかだ。ハリドワールのものすごい熱気と比べると明らかに違うのである。

そうか・・・。となると私のインド初体験となったハリドワールがいかにとてつもない場所だったかがよくわかる。

「バラナシはとてつもないカオスだから普通の日本人はだいたいやられる」という話を聞いていたので、私はそれこそ恐れおののいていた。だからこそ私はバラナシの前哨戦としてハリドワールに行くことを決め、昨年の内に渡航した。

それがどうだろう。一番ディープなところに私は最初から突っ込んでいったのである。それはショックを受けて倒れるのも当たり前だろう。あのカオスはバラナシの比ではなかった。バラナシはもはや国際的な観光地と化しているが、ハリドワールは今もなおインド人の熱狂の祝祭空間なのである。

こうなると、私はこのバラナシにもはや何も驚かないのである。なぜなら最初のハリドワールですっかり度肝を抜かれ切っていたからである。あそこが一番どぎつかったのだ。これにはもう笑うしかない。

こちらはこのバラナシでのプージャを撮影した映像だ。参考までに見て頂ければ幸いだ。

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そしてこの記事で私の初インドとなったハリドワールでのプージャの様子を詳しくお話ししているのでぜひ比べてみてほしい。

いずれにせよ、聖地バラナシでのプージャは非常に興味深いものがあった。

やはりインドに来たらここに来ないわけにはいかない。最後の最後でここに来れたのは私にとっても大きな意味を持つことになった。インドはやはり奥が深い。いつもいつも予想外のものを見せてくれる。だから面白いのだ。私はインドが大嫌いだが大好きだ。やはり面白い国なのである。

主な参考図書はこちら↓

生活の世界歴史〈5〉インドの顔 (河出文庫)

生活の世界歴史〈5〉インドの顔 (河出文庫)

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※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。

「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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