ブッダ苦行の地、前正覚山へ~苦行時代を過ごしたウルヴェーラー近郊の洞窟寺院
【インド・スリランカ仏跡紀行】(85)
ブッダ苦行の地、前正覚山へ~苦行時代を過ごしたウルヴェーラー近郊の洞窟寺院
ラージギルを出発した私が次に向かうはブッダガヤ。いよいよブッダ悟りの地へ向かう。
ラージギルからブッダガヤへの道は岩山が多い。
この山を越えてブッダガヤへと向かうのだ。
出家後、ブッダはウルヴェーラー(苦行林)という地で壮絶な苦行を開始したとされている。ウルヴェーラーは古代インド語で「限りなく広く砂の堆積の続いている所」という意味だが、実際にそれがどこを指しているのかは今もわかっていない。
ラージギル周辺でビンビサーラ王と会談したブッダはブッダガヤ方面へと移動し苦行をしていた。そのため、このような岩山をブッダが通っていた可能性がある。
大きな岩がごろごろと積み重なっているような山もあり、修行に適した雰囲気は確かに感じられた。
こうした山々を車窓から見ていると私もうずうずしてきた。私もこの山に登りたくなってきたのである。この山からの景色はさぞ素晴らしいに違いない。ブッダ達も高いところを好んでいた。霊鷲山はまさにその典型だ。
というわけで私はついに我慢できずにガイドさんに聞いてみた。
「ちょっと車を降りてそこの山に登りたいのですが・・・」
ガイドさんは最初耳を疑ったらしい。何を言っているのか意味が分からなかったようだ。それはそうだ。いきなり車を降りて山に登りたいなんて言われるなんて初めてのことだろう。だが、私は本気なのである。
さて、車を降りて登山開始だ。写真で見ると小高い丘くらいにしか見えないが、肉眼で見てみるとなかなかの急坂である。
正直、私が望んでいたのはもっとごつごつした岩がたくさんある山であったが贅沢も言ってられない。そんな山はもう通り過ぎてしまった。草も生えていて登るには難儀しそうな山である。だが幸いなことに草は乾燥しているし虫などもいない。熱帯のようなねっとりした植物相とは違うのである。
草をかき分け登りやすそうなルートを探しつつ進んだ。ずいぶん私もタフになったものである。
行けるところまで行きそこから景色を眺めてみた。これは素晴らしい。やはり高い所はいいものだ。シンプルに気持ちが良い。ブッダ達が見晴らしの良い所で瞑想をしていたのもよくわかる気がする。
インドではどこまでも続くような平原が広がっている。遮るものがない。地平線まで見えるような気がする。それに対し日本では圧倒的に山が多い。「あの山を越えると何が違う世界があるのかも」という世界である。無限に続くかのような広大な大地と、山々に区切られた小さな閉鎖空間の連続。この地理的条件の差は人々の精神や文化にも大きな影響を与えていることだろう。
ちなみに、この動画の前半部分は私の登山時の目線映像、47秒付近からはガイドさんが下で私の登山の様子を撮ってくれたものだ。この突然の登山劇の雰囲気が伝われば何よりだ。
さて、これから向かうは前正覚山というブッダが修行していたという伝説が残る洞窟寺院である。悟りの地であるブッダガヤを紹介する前にまずはこちらから紹介したい。
さて、前正覚山の麓にやってきた。例のごとく岩山である。
寺院までは坂道が続く。小さな売店もあった。最近は東南アジアからの団体客もここに来るようになったため商売をする人も増えたそう。
寺院に近づいてきた。仏旗がはためくその下を歩いていく。なかなかの急坂である。
間もなく寺院に到着。
境内は団体客でごった返していた。もう馴染みの光景である。2月の乾季は巡礼シーズン。世界中から巡礼ツアーが組まれる時期なのだ。
こちらが前正覚山の洞窟と寺院である。左手の岩山の奥に白く塗られている部分が洞窟の入り口だ。
ここでも巡礼者が聖地を金ぴかにしている。霊鷲山でも見た金箔シールである。
洞窟内部は6畳くらいの空間であった。その奥には金色の苦行仏像が安置されていた。そしてその背後の壁にも金ぴかシールが貼られていた。洞窟ということでもっと暗いかと思っていたが、ライトの光が眩しいくらいであった。
ここは現在チベット仏教教団が管理しているとのこと。私がこの洞窟に入った時にはスマホをしている僧侶がいた。ここの管理を担当しているらしい。
この前正覚山は経典においては出てこないが玄奘三蔵がこの山についての伝承を書いたことで知られるようになったとのこと。そのため史実的な確証もなく、さらには近年整備されたということで私には何とも言えない場所ではある。
こちらはブッダガヤ方面を眺めた写真。この写真の真ん中ほどに細い茶色の線が横切っているのが見えると思う。これがブッダがスジャータと出会ったネーランジャラー川である。ブッダはこの辺りの山で苦行し、その川へ下りていったが力尽きてしまった。そして偶然そこに居合わせたスジャータのミルク粥によって体力を回復し悟りへと突き進んでいく。
その伝説的な物語の舞台をこうして一望しているのだ。
次の記事ではそのスジャータゆかりの地をご紹介していく。
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※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
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