ヨガの聖地リシケシへ~ビートルズの滞在で一躍有名になったガンジス上流の聖地を訪ねて
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(7)ヨガの聖地リシケシへ~ビートルズの滞在で一躍有名になったガンジス上流の聖地を訪ねて
3日間のハリドワール滞在を終えた私は次なる目的地リシケシへと向かった。
リシケシはハリドワールから北に40キロほどの位置にある。車で1時間半ほどあれば着ける距離だ。
ここはハリドワールよりもさらにガンジスの上流にあたり、古くからヨガの行者が集まることで知られている。そして何より、あのビートルズがここに滞在し楽曲を制作したことでも有名だ。
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順調にいけば1時間半で着くはずだったがそこはインド。やって来ました大渋滞。
何が原因かわからないが何の変哲もない道路から突然渋滞が始まる。つまり、先が見えないはるか彼方から渋滞が続いているのだ。
しかもその渋滞ぶりもカオスそのもの。本来この道はせいぜい片側2車線がいいところの幅だ。しかしどうだろう。我々の側だけでもほぼ4車線ほどになっているではないか!
それぞれが我先にと頭を突っ込んでくるので車線などあったものではない。隙間があれば突っ込む!そうやってすり抜けて行くのがインドの当たり前なのである。このギリギリをすり抜けて行くインド人の運転技術には舌を巻かざるを得ない。こっちがヒヤッとするほどの近さを平然と進んでいくのである。まさにほんの1インチの攻防である。車をぶつけるのが怖くないのかと思ってしまうがなんてことはない。すでに皆ぼこぼこの傷だらけの車に乗っているのである。
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なんとか渋滞を抜けたがもはや1時間半では着けそうもない。ハリドワールで疲労困憊であった私にとってこの遅延がどれだけ苦しいことだったか・・・。この時点ですでに私はかなり追い詰められていたのである。
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リシケシ近郊に到着。
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街の中心部に向かう道ですら片側一車線。これは渋滞になったらかなり厳しいだろう。現に反対車線はずっとこの通りであった。
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リシケシ中心部で車を降り、いよいよガンジスへ向かう。
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川沿いまでやって来た。ハリドワールと同じように雨季のガンジスはかなりの水量だ。乾季には透き通るような美しさだというが、それは望むべくもない状況である。
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ラーム・ジューラー橋を渡り対岸へ。
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対岸はより巡礼地の参道といった雰囲気になり、道に沿ってお土産や食べ物屋が軒を連ねていた。そしてこの濁流でもハリドワールと同じく沐浴がなされていた。
そしてここでも狭い路地を人に構わずバイクが突っ込んでくる。油断の隙もない。もはや私の中でこのバイクはインド名物になりつつある。
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リシケシはガンジス川とつながりが深いシヴァ神を拝する街でもある。そしてシヴァ神はヨガの神でもある。
私はこの後いくつかのお寺を回ったのだが、残念ながらあまり印象に残るものはなかった。これまで見てきたハリドワールがあまりに強烈すぎたのだ。ここリシケシが薄味に感じる。あるいはもうシンプルにこうしたインド的な光景に見慣れつつあったのかもしれない。
だが、一番の理由は疲労にあると思われる。もはや、新鮮な喜びを感じられるほどの体力気力が私には残っていなかったのだ。早く宿に帰りたいという思いしかもはや頭にはないのである。
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しかしこれで帰るわけにもいかない。私はさらに上流のラクシュマン・ジューラー橋のあるエリアに向かった。しかしここは道行く人もほとんどなく、寂れた雰囲気であった。なぜこのような閑散とした様子になっているかというと、実は理由がある。
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ここリシケシは2021年の大洪水で壊滅的なダメージを受けた。その時にラクシュマン・ジューラー橋も崩落してしまったのである。
その洪水の影響でこの近辺は未だにゴーストタウンのようになっている。ここはかつて欧米人も多く集まる活気ある場所だったそうだ。今現在橋は修復中であるが、観光客が戻って来るまでにはかなりの時間がかかりそうである。
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そして私は今日も夜のプージャを見学することになっている。三夜連続のプージャである。さて、ハリドワールと比べてどのような違いがあるのだろうか。
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寺院の目の前の川には瞑想するシヴァ神の像。この像を前にプージャが行われる。
今日の会場はハリドワールと違って寺院内で行われるので私も靴を預けて裸足で歩いた。しかしこの日も雨が降っていたので水浸しの中歩くことになってしまった。冷たい水が徐々に体温と体力を奪いつつあるのを感じた。
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しかしありがたいことに、ガイドさんが特別に特等席を用意してくれた。堂内の屋根がある場所に私を連れて行ってくれたのである。これは実にありがたいことだった。これで雨に当たらなくて済む。
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しかもここはプージャを取り仕切るバラモンたちのすぐ後ろの位置に当たり、その様子をつぶさに観ることができたのだ。
ハリドワールではスピーカーで大音量の音楽が流れていたが、こちらは全て生演奏であった。また、女性ボーカルの声が印象的なハリドワールのキャッチーなメロディーに対し、こちらはより古典的なインド音楽のように感じた。
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こちらが音楽隊とその機材である。
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そして儀式も佳境に入ると、さらに火が焚かれ始める。そしてその火をさらにお盆の上に分け周囲の巡礼者に渡し始めた。すると皆は一斉に川の方に進み、シヴァ神に向かって火を掲げたのである。そして順繰り手渡しで回し、その場にいる人皆がこうして祈りを捧げたのであった。
ハリドワールに比べると、実に穏やか。あの修羅場のような殺到ぶりはここにはない。
だが、これは私のいるこの場所が特等席であるということに理由があるのではないかと思う。ここに座れるのは招待客や特別なコネクションのある人だけだ。誰もが自由にここで観れるわけではない。ここだけを見てリシケシのプージャはこうだったと言いきるのは難しいように思う。ただ、間違いなく言えるのはここで観ることができた私は幸運だということだろう。
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帰る頃にはすっかり夜。さすがに限界だ。頭が痛い。もう動けない・・・。
宿に着いた私は倒れ込むように横になった。今日は早く寝よう。最後の力を振り絞り私は寝る準備を済ませ就寝した。
ここまでよく頑張った・・・ゆっくり休もう・・・。
だが、インドはそんな私をあざ笑うかのように襲い掛かって来た。
そう。ついに、あれがやって来たのである。
インドは甘くなかった。私はこれからインドの洗礼を浴びることになるのである。
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