楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議』あらすじと感想~彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!
楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議―誰が・いつ・何のために』概要と感想~彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!
今回ご紹介するのは2004年に法藏館より発行された楠元香代子著『スリランカ巨大仏の不思議―誰が・いつ・何のために』です。
早速この本について見ていきましょう。
古都で出会った巨大石仏の謎の表情に魅せられてスリランカの遺跡を訪ね歩く―。名も知らぬ石工の思いに立ち返って、造像の秘密に迫り寂れた寺院の野ざらしの仏像に、かつての栄華の歴史を辿る女流彫刻家ならではの視線が生きるスリランカ遺跡めぐりの旅。
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仏教国スリランカには多くの巨大仏像が残っています。
これまでも当ブログではスリランカの仏教美術について森祖道『スリランカの大乗仏教 仏教・碑文・美術による解明』や伊東照司『スリランカ仏教美術入門』をご紹介してきました。
そして本作『スリランカ巨大仏の不思議―誰が・いつ・何のために』はそれらの本ととは一味違った視点からスリランカ美術を見ていくことになります。
このことについて著者はあとがきで次のように述べています。
さて、私は縁あってスリランカの仏像を見つめる機会をいただいたが、本来は彫刻を制作する立場にいる。つまり仏像研究についてはまったくの門外漢であることをここで告白しなければならない。それなのになぜ本まで書く?と叱られそうだが、スリランカの地に立って巨大な石仏をながめていると、仏像を生出した石工たちの姿や声を肌で感じ、知らず知らず仏像制作の追体験をしていたように思う。
文中にしばしば入れた「木陰の夢」もそうした思いが昂じて自然に出てきたものだった。はじめはこんなフィクションを勝手に入れては困ると、咎められるのではないかとヒヤヒヤしながら書いたが、できるだけ真に迫った内容にしようと文献も読み、自分自身をできるだけリアルな現場に追い込んだ。しかし少々楽しみが過ぎたと反省している。
スリランカは本当に魅力に富んだ国だ。スリランカのおかげで、仏像彫刻の面白さ、奥深さを身にしみて感じることができたし、自然や歴史に触れ、現地の人々と交流するなかで、いつしか穏やかで心地よい世界に誘われていた。
そしてこれからも謎解きの旅は続く。私をなによりもスリランカに惹きつけたガル・ヴィハーラの穏やかな波長が、世界中に広がっていくことを願いながら。
法藏館、楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議―誰が・いつ・何のために』P212
この記事のタイトルにも書きましたが、本書の著者は仏教の専門家ではなく彫刻家です。
彫刻を彫る側の人がスリランカの仏教美術を見たらどのようなことを思うのかというのは私にとってもものすごく刺激的でした。
私たちは仏像そのものの美しさやその歴史には目を向けることができますが、それがひとつの岩からどのように彫り出されたのかというところまではなかなか思いが至りません。仏像も最初からそこにあったわけではなく、最初はただの岩や木であったわけです。そこから彫刻家の手によって私たちが目にする完成品が出来上がってきます。完成品ばかりを目にする私たちには見えない世界をきっと彫刻家の方々は見ているのでしょう。実際に彫る人の目から見た仏像とはどのような存在なのかということを知れる本書はとても新鮮でした。
スリランカの有名な仏像やマニアックな仏像まで数多くの素晴らしい美術を本書では紹介しています。写真や地図なども豊富に掲載されていますのでスリランカを訪れる際のガイドブックとしても優秀です。
これは面白い本でした。新たな視点でスリランカ仏像を見れる刺激的な一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「楠元香代子『スリランカ巨大仏の不思議』~彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!」でした。
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