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伊東照司『スリランカ仏教美術入門』概要と感想~写真多数!スリランカ仏教遺跡巡りに役立つガイドブック!
今回ご紹介するのは1993年に雄山閣より出版された伊東照司著『スリランカ仏教美術入門』です。
早速この本について見ていきましょう。
この本では、スリランカ仏教の歴史にそって、時代順に、古いところから新しいところに向けて、主要な仏教遺跡と、そこにともなう代表的な美術作品を紹介します。そのためには、単に先の主要な古都や遺跡のみならず、地方の大乗仏教の遺跡や美術もふくめることになります。
Amazon商品紹介ページより
この本はスリランカの仏教遺跡の入門書としておすすめの作品です。
著者は本書について序で次のように述べています。
かつて「セイロン」と呼ばれたスリランカは、インドより仏教が伝えられて、今やおよそ二千二百年後になります。上座部仏教の原点というべきこの国には、その長い歴史を通じて、多くのすぐれた仏塔、仏寺、それに仏像や仏画がのこっています。
その歴史をたどれば、アヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディといった三つの主要な都の跡があげられます。そのほかに、きわめてユニークな遺跡として、仏教初伝の地、聖山ミヒンタレーをはじめとして、岩山シーギリヤや同じく岩山の洞窟寺院ダンブラが注目されます。
この本では、スリランカ仏教の歴史にそって、時代順に、古いところから新しいところに向けて、主要な仏教遺跡と、そこにともなう代表的な美術作品を紹介いたします。そのためには、単に先の主要な古都や遺跡のみならず、地方の大乗仏教の遺跡や美術もふくめることになります。
これまでに撮影してきた写真をかかげて、過去の古典的なスリランカ美術と、それらを生みだした背後の教えや物語を語ることにいたします。そして、このスリランカ仏教美術の偉大性に、多くの方々が親しみ、今日以上に愛してくだされることを念じてやみません。
近年、スリランカへの仏跡巡礼が、日本からもさかんにおこなわれるようになりました。実際に見て接し感銘した仏塔、仏寺、仏像、仏画をそのままお見せいたしました。このつたない本が少しでもスリランカ文化、芸術―美術理解の一助となることができますれば、幸いでございます。
雄山閣、伊東照司『スリランカ仏教美術入門』P1-2
ここで述べられるように、本書ではアヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディなど主要な仏跡や、その他特徴的な仏教遺跡を見ていくことになります。
本書はとにかく写真が多数掲載されており、現地の状況をイメージしやすいです。さらに解説も初学者にもわかりやすく書かれており、入門書として非常にありがたい作品です。
私としてはその中でも特にシーギリアについての解説が印象に残っています。
シーギリヤ・ロック Wikipediaより
シーギリヤ・レディ Wikipediaより
スリランカで最も有名な観光地の一つとなっているこのシーギリヤですが、意外とこの地における歴史や美術について解説されたものは多くありません。そんな中この本ではこの岩山の歴史やそこに描かれたシーギリヤ・レディのこともわかりやすく解説されていますので、これは現地を訪れようとしている私にとってはとてもありがたいものがありました。
スリランカに行かれる方、スリランカ仏教に興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。観光する際のガイドブックにもなる一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「伊東照司『スリランカ仏教美術入門』~写真多数!スリランカ仏教遺跡巡りに役立つガイドブック!」でした。
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スリランカ仏教美術入門
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彫刻を彫る側の人がスリランカの仏教美術を見たらどのようなことを思うのかというのは私にとってもものすごく刺激的でした。
スリランカの有名な仏像やマニアックな仏像まで数多くの素晴らしい美術を本書では紹介しています。写真や地図なども豊富に掲載されていますのでスリランカを訪れる際のガイドブックとしても優秀です。
これは面白い本でした。新たな視点でスリランカ仏像を見れる刺激的な一冊です。
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特に両遺跡にある彫刻や絵の解説はものすごく興味深かったです。ジャータカという仏教説話の解説は特にぐっと来るものがありました。単に遺跡や芸術の解説をするのではなく、そこから時代背景や思想のもっと奥深くまで語ってくれるのでぐいぐい引き込まれてしまいます。
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