『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』概要と感想~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!
『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』概要と感想~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!
今回ご紹介するのは2010年に佼成出版社より発行された末木文美士、松尾剛次、佐藤弘夫、林淳、大久保良峻編集の『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』です。
早速この本について見ていきましょう。
仏教の伝来は、思想のみならず寺院建築・仏教美術・仏教文学等さまざまな分野で日本文化を大きく開かせた。
Amazon商品紹介ページより
また盂蘭盆や彼岸などの仏教行事は、現在でも多くの宗派の年中行事として連綿と受け継がれている。
日本仏教の基礎を築いた仏教伝来から日本仏教が形作られる平安院政期までの仏教の展開を多角的に論じその深層を探る。
まず言わせてください。
本書『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はものすごく面白いです!
これまで当ブログでは『新アジア仏教史』シリーズの第一弾である『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』から何冊も紹介してきましたが、その全てが「え!?そうなの!?」という驚きが満載の参考書でした。
そしてその中でも今作『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』はトップクラスに刺激的で興味深い内容が語られていました。
私はかつて日本史の授業で日本の仏教伝来は538年あるいは552年と習いました。今でもその語呂合わせの「ゴミはここに」という言葉が強烈に残っています。当時は何の疑問もなく受け取っていましたが、いくら語呂合わせとはいえ仏教を「ゴミはここに」というのはなかなかなものだなと今では苦笑いですがこの552年について本書ではものすごく興味深い解説を聞くことになります。
仏教伝来が552年とされたのは『日本書紀』の記述がベースになっています。ですがこの『日本書紀』というのが厄介な代物で、単に歴史を編纂したのではなく、国家運営における神話生成という側面が非常に強い書物だったのでした。つまり、ここで語られるものは史実というより、国家神話とでも言うべき歴史なのでありました。
これ以上はここでお話しできませんが、私はこの552年仏教伝来説の裏側を知りまさしく仰天してしまいました。曽我氏、物部氏、聖徳太子、末法など、仏教や日本史に関心のある方には馴染み深い人物や思想が新たな装いで私達の前に現れてきます。これは衝撃です。特に末法思想を国家運営のメインストーリーに据えたというのは目が飛び出そうな衝撃でした。
また、他にも奈良時代、平安時代の仏教についても詳しく知れるのもありがたかったです。最澄や空海などのスーパースターについても学ぶことができます。
そして通俗的に語られがちな神仏習合の歴史が実際にはどのようなものだったのかというのも非常に興味深かったです。よく日本では仏教と神道は共存していたと言われますが、この言い方そのものが実は事実とは異なっているということを知ることになります。私達がイメージする神仏習合、本地垂迹などの説はどこから来てどのような背景から生まれてきたのかもこの本では知ることができます。いやはや、この本は驚くことがありすぎです。もうお腹いっぱいです。
この『新アジア仏教史』シリーズでは各分野の専門家が様々な視点から仏教を見ていきます。ですので私達も普段なかなか意識しない角度から仏教や時代背景、歴史を考えることになります。おすすめの参考書もずらりと掲載されていますので興味のあるジャンルをもっと深めるための案内書としても非常に便利です。私もこのシリーズを通して多くの参考書とつながることができました。
日本史や日本仏教の本はそれこそ無数にあります。これだけ無数に本があると、その中でまず何を読めばいいのかと途方に暮れてしまう方も多いのではないでしょうか。実は私もその一人です。インドやスリランカですとある程度本の数も限られてきますが、日本のこととなるとそうはいきません。しかも新発見などにより歴史や思想もどんどんアップデートされていきます。さらに難しいのは本そのものが信用できるものなのかという危険もあります。思想的に偏った本や何らかの意図を持って書かれた本がどうしても多くなってしまうのは避けられません。
このような、本を選ぶことすら難しい現状の中で本書は素晴らしい羅針盤となってくれます。日本仏教の基礎を学ぶ上でこの本は非常に素晴らしい一冊です。ぜひぜひおすすめしたい名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「『新アジア仏教史11 日本Ⅰ 日本仏教の礎』~日本の仏教受容や聖徳太子についての驚きの事実を知れるおすすめ参考書!」でした。
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