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『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』概要と感想~道綽・善導についての興味深い事実を知れるおすすめ作品

新アジア仏教史07
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『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』概要と感想~道綽・善導についての興味深い事実を知れるおすすめ作品

今回ご紹介するのは2010年に佼成出版社より発行された沖本克己、菅野博史編集『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』です。

早速この本について見ていきましょう。

中国の隋唐時代は、シルクロードを経て伝来したインド仏教が中国的変容を遂げ、空前の発展を見せた転換期。
禅・浄土・天台・華厳・密教など、今日の私たちが知る“宗派”というものの姿も示されました。
皇帝中心の統一国家と仏教の関係、中国独自の教学、民衆に広まった信仰の姿を通じて、中華大帝国の歴史に刻まれた仏教興隆の様子を明らかにします。

出版社からのコメント

東アジア各地に広がる仏教思想・文化のほとんどが中国仏教を源流としています。その歴史の中でもとくに華やかな隋唐時代は、日本の遣唐使が往来し、空海や最澄など著名な僧侶が競って留学した時代でもありました。一方、皇帝を中心とする巨大帝国にあって、仏教は常に国家権力との緊張関係を強いられました。ある者は街路で命がけで布教に励み、ある者は山奥に隠れて禅の修行を究める――隋唐時代の仏教を知るほどに、日本仏教をはじめとする東アジアの仏教を、より深く知ることができます。 ・高僧・偉人の伝記から教理解説、民間に伝わる説話まで豊富な話題を図版入りで紹介。 ・仏教に興味のある人、世界史に興味のある人、どちらのニーズにも応える内容構成。 ・日本をはじめ東アジア全土に広まった仏教の姿が、この一冊から見えてくる。 【目次】 【第1章】 隋唐仏教とは何か 【第2章】 インド仏教の中国的変容 【第3章】 教学仏教の様相 【第4章】 民衆仏教の系譜 【第5章】 禅宗の生成と発展 【第6章】 密教の伝播と浸透 【第7章】 士大夫の仏教受容

Amazon商品紹介ページより
敦煌の莫高窟 Wikipediaより

前回の記事で紹介した『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』で仏教が中国に伝来していくその流れを見ていきましたが、本作『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』では仏教が中国に根付き、独自の発展を見せ始める時代を見ていくことになります。

私たち日本に伝わった仏教もまさにこの時代の中国仏教あってこそです。そういう意味で今作で語られる内容は日本仏教のベースとも言うこともできるのではないでしょうか。

また、前作もそうでありましたが今作も単に思想や教義面だけではなく時代背景、特に国家との関係性が重視されます。このことについて本書の「序」では次のように述べられています。

構成に関しては宗派史等の特定のテーマを、長期的スパンでその変遷史をまとめて描写していく方法も考えられたが、好むと好まざるとにかかわらず、常に国家体制と深くかかわりながら展開したのが中国仏教の特徴の一つであるからには、王朝や体制の変化は常に重要な要素となり続ける。それぞれの時代のエートスが教団や教理、さらにはそれをとりまく民衆やその文化に深く影を落としている事実を無視することはできない。仏教史は決して教理の変遷史に限定されるものではないのである。

佼成出版社、沖本克己、菅野博史編集『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』P3

宗教は宗教だけにあらず。当時の時代背景、政治経済、あらゆる要因が絡んで宗教は変化生成されていきます。

中国は特に国家との関係性が強かったという事情があります。では翻って日本はどうでしょうか。

こうしたことを考える上でも本書は非常に良い思考実験になります。

そして本書を読んで一番興味深かったのは中国浄土教の流れが解説されていた箇所でした。特に道綽と善導という浄土真宗でも七高僧として崇められている二人の高僧についてのお話には刺激を受けました。

この道綽、善導の生涯や人柄についてはなかなか知る機会がないのでこの本で語られる内容はとにかく驚きでした。この二人について端的に述べられている箇所が以下になります。

やはり学僧というよりはむしろ大衆の中に身をおき、声(美声)・弁(弁舌)・才(才知)・博(博識)が要求される唱導僧(説法師)、または講経師としての実像が浮かびあがってくるのである。

佼成出版社、沖本克己、菅野博史編集『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』P220

真宗僧侶である私にとって七高僧という存在は遥か彼方の偉大な高僧というイメージが強烈にありましたが、この本を読み道綽、善導がいかに民衆の近くにいたのかということに驚きました。深遠な哲学体系よりも一般の人々に響く教えに力を傾けていた姿をこの本で知ることになります。

これはぜひ真宗僧侶の方におすすめしたいです。ものすごく刺激的な一冊です。

他にも浄土教だけでなく各宗派の源流もこの本では語られますのでそれぞれの宗派に関心のある方にもきっと響くものがあると思います。私達の日本仏教とも強い繋がりがある中国仏教を幅広く学べるおすすめの参考書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『新アジア仏教史07 中国Ⅱ 隋唐 興隆・発展する仏教』~道綽・善導についての興味深い事実を知れるおすすめ作品」でした。

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新アジア仏教史07 中国 II 隋唐 興隆・発展する仏教

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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