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貝塚茂樹『孟子』概要と感想~性善説、仁政によるユートピア国家を唱えた儒家の賢人の思想を学ぶのにおすすめ
今回ご紹介するのは2004年に講談社より発行された貝塚茂樹著『孟子』です。
早速この本について見ていきましょう。
聖人の孔子と並ぶ賢者として孔孟と呼ばれ、その著述は『論語』と同様に四書のひとつとされる孟子。魏、燕、斉などの七強国が覇を争った戦国時代に、小国鄒(すう)に生まれ、諸国をめぐって説いた仁政とは何か。人材登用の要諦などあるべき君子像の提言や井田制など理想国家の構想から、人間の本性を考察したうえの修身の心得まで、賢者の教えを碩学が解説する。
Amazon商品紹介ページより
今回ご紹介するのは孔子と並ぶ儒家の賢人孟子です。孟子と言えば性善説や浩然の気という言葉で有名ですよね。私もかつて高校の倫理の授業で習った記憶があります。
ですが実際その単語は知っていてもその深い所の意味や、孟子の人生、その思想が語られた時代背景についてはほとんど知りませんでした。
本書『孟子』はそんな彼の生涯や思想、時代背景をじっくり見ていける作品になります。
この本を読めば時代背景がいかに重要かがよくわかります。孟子が単に理想主義的に性善説を述べたのではなく、当時の世相において説得力のある理論として述べていたかが明らかにされます。彼は自説の性善説を「国を統治するための策」として王に売り込んでいます。孔子も老子もそうですが、中国思想はそのどれもが国の政治方針と関わってくる点が興味深いです。
ただ、孟子の性善説をベースにした国家観はやはりユートピア的なものであり、実際に実行に移すには難点もありました。とは言え彼の王道政治は全くのお花畑ではなかったのです。このことについて著者は次のように述べています。
孟子は九国のうちのひとつにしかすぎない斉国が、軍事力だけで中国を統一することが困難であることを説いて、真の王者の道つまり王道によって、人民の生活を安定させ、その善政を聞き伝えて、外国の人民・学者・商人などが斉国に移住して来れば、国力が増加し、自然に敵国にたいして優位に立ち、天下を統一することができると述べた。
この王道政治は、対話の表面だけを読んでいると、まったく空想的なようにみえるかもしれない。しかし当時は、学者・商人のみならず農民も、後世よりはずっと移動性をもち、善政の施されるという噂を聞くと、集団的にかなり遠い外国に移住することが多かった。この国境を越えた人民の集団的移住の自由さの上に立って、王道政治の理想が形成されたので、いちがいに空想として退けられない。
講談社、貝塚茂樹『孟子』P98-99
なるほど、たしかにこう言われてみると孟子の説もあながち全くの空想ではないということがわかる気がします。やはり時代背景は大事ですよね。こうした人々の生活実態があったからこその王道政治だったのでした。
他にも有名な「五十歩百歩」のお話や孟子の興味深い性格など、この本では刺激的な内容がどんどん出てきます。ただ単に「性善説」や「浩然の気」などの単語レベルで終わるにはあまりにはもったいない孟子の面白さがここにあります。ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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