『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』あらすじと感想~電話を発明した偉大な科学者のおすすめ伝記!
『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』概要と感想~電話を発明した偉大な科学者のおすすめ伝記!
今回ご紹介するのは2011年に大月書店より発行されたナオミ・パサコフ著、近藤隆文訳の『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』です。
早速この本について見ていきましょう。
1922年、電話の発明者ベルを追悼して合衆国の全電話サービスが1分間停止され、エジソンが「亡き友の世界的に有名な発明は、時間と空間を消滅させ、人類がより緊密に連絡できるようにした」と語った。自らは聴覚障害者と耳の聞こえる人たちとの交流を阻む壁を破ることを目標にかかげていたベルの業績と生涯。
Amazon商品紹介ページより
グラハム・ベルは1876年の電話機の発明で有名な発明家です。
なんと、ベルは1847年生まれということで、あのトーマス・エジソンと同い年です。
エジソンについては前回の記事「『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』アメリカの天才発明家エジソンのおすすめ伝記!読書家エジソンの一面も」で紹介しましたがまさかこの2人の大発明家が同い年だったというのは驚きでした。
しかも二人は電信機の開発をめぐってバチバチのライバル関係でもありました。同い年の二人がアメリカでしのぎを削っていたのかと思うと歴史の面白さを感じました。
また、前回の記事ではエジソンが若い頃猛烈な読書家だったということをお話ししましたが、やはりこのベルもそうでした。
アレクサンダー・グラハム・べルはのちにこう書いた。「祖父とすごしたあの一年が、わたしを無知でうっかり者の少年から勉強家の青年に変えてくれた」。
それまで兄弟やいろいろな友だちと遊びまわってばかりだった一〇代の少年にすれば、寂しい一年ではあった。ただ、仲間がいないことで、アレックの「教育面の不足を個人学習で」補うことへの関心はかえって強まることとなった。祖父べルは孫に時間の割り振り方を教えた。シェイクスピアの傑作の独白を暗記させた。生徒たちに言語障害の矯正法を教えるあいだに同席することも認めた。さらに書斎を自由に使わせ、そこでアレックは音声についての本を読みはじめる。
大月書店、ナオミ・パサコフ著、近藤隆文訳『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』P15
ベルもシェイクスピアを暗記するまで読み、そこからたくさんの本を読み漁ることになります。
エジソンもシェイクスピアを読んでいましたが、やはり欧米人にとってシェイクスピアがいかに巨大な存在だったかということを感じさせられます。
そしてこの伝記を読んで一番驚いたのはベルと聴覚障害者との関わりでした。ベルといえば電話機の発明者のイメージしかありませんでしたが、実は彼のライフワークはそれとはまた別のところにもあったのです。
アレクサンダー・グラハム・べルは長い生涯のあいだに興味のあることを数多く追求したが、青年時代から変わらず意欲をかき立てられる関心事がひとつあった。職業を訊かれると、彼は「聴覚障害者の教師」と答えたものだ。べルの基礎科学に対する最大の貢献は電話の発明ではなく、聴覚障害への取り組みだと考える人は少なくない。べルは聴覚障害について重要な研究をおこなって聴覚障害者の利益を最大限にしようと努めただけでなく、その人生のあいだに約五〇万ドルを聴覚障害者のために投じたのだった。
ベルの考えでは、聴覚障害という問題で何より目につくのは、その障害者が社会から孤立していることだった。そこで彼は、聴覚障害者と耳の聞こえる人たちとの交流を阻む壁を破ることを個人的な目標にかかげた。
大月書店、ナオミ・パサコフ著、近藤隆文訳『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』P117
ベルの父は聴覚障害者のための対話法「視話法」を開発した人物で、ベルの母も、そして妻も聴覚障害者でした。
耳が聴こえなくても一般社会と障害なく繋がることができる社会を目指してベル父子は働き続けていたのです。
こうしたベルの活動を知れるのもこの伝記の魅力です。
「オックスフォード 科学の肖像」シリーズはこれまでも当ブログで紹介してきましたが、このシリーズは本当に名著揃いです。
巻末にこのような紹介ページがありましたが、まさにその通り。
コンパクトな内容ながら、偉人たちの生涯と特徴、そして時代背景がわかりやすく説かれます。ぜひぜひおすすめしたい作品となっています。
以上、「『オックスフォード 科学の肖像 グラハム・ベル』電話を発明した偉大な科学者のおすすめ伝記!」でした。
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グラハム・ベル: 声をつなぐ世界を結ぶ (オックスフォード科学の肖像)
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