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シェイクスピア『空騒ぎ』あらすじと感想~素直じゃない二人を恋仲に?こてこてながらも気楽に楽しめる喜劇
今回ご紹介するのは1598年から1600年頃にシェイクスピアによって書かれた『空騒ぎ』です。私が読んだのはKindle版の新潮社、福田恆存訳です。
早速この本について見ていきましょう。
美人だが、手におえないじゃじゃ馬むすめカタリーナが、男らしいペトルーキオーの機知と勇気にかかって、ついに可愛い世話女房に変身──。陽気な恋のかけひきを展開する『じゃじゃ馬ならし』。青年貴族クローディオーと知事の娘ヒーローのめでたい婚礼の前夜、彼女に横恋慕するドン・ジョンの奸計(かんけい)から大騒動がまきおこる『空騒ぎ』。明るい情熱と機知の横溢する喜劇の傑作2編を収録。
Amazon商品紹介ページより
今作の『空騒ぎ』は前回の記事でご紹介した『じゃじゃ馬ならし』と一緒に収録されています。この二作品を一緒に収録した新潮社さんはさすがのチョイスだなと感じました。
と言いますのもこの二作品はどちらもじゃじゃ馬女性の恋を描いたものだからです。ですがそれぞれの主人公は違ったタイプのじゃじゃ馬であり、その相手となる男性もまったく違った性格をしています。
という訳で、似たような恋の話でありながら全く違うストーリーをこの1冊で楽しむことができるということなのです。これはお見事。私もこの二作品を続けて読んでふむふむと頷きながら楽しませて頂きました。
さて、今作『空騒ぎ』の大きな筋としては、美しいながらも口が達者すぎるじゃじゃ馬ベアトリスと、これまた口達者の洒落た男ベネディックがいかにしてくっつくのかという恋物語になります。
ベアトリスは口が達者で普通の男はそれに恐れをなしてしまうほどの才気煥発ぶり。ですが『じゃじゃ馬ならし』のカタリーナとは違って意地悪なところはありません。とにかく頓智が効いて頭の回転が速すぎるのです。そしてそれを口に出してしまう。今の時代でしたらこれはそんなに問題にはなりませんが、当時の社会では女性は慎み深くあれという風潮です。そうなると彼女が敬遠されてしまうのは無理もないでしょう。そして彼女自身も男なんていらないと豪語していたのでした。
次に、そのお相手になる人物、ベネディック。彼は見た目もよくてモテる要素ばっちりの男です。しかも彼も口が達者。ですが『じゃじゃ馬ならし』の伊達男ペトルーキオーと違うのは、そもそも彼は「女には興味がない。結婚なんてまっぴらだ」と吹聴している点にありました。彼は結婚に縛られるより独身男としてもっともっと楽しみたいと公言していたのでした。ここに『じゃじゃ馬ならし』との大きな違いがあります。
さて、そんな二人は互いに言葉巧みな舌戦を繰り広げるのですが、互いに憎まれ口を叩いてそこで終了。恋の兆しなんてちっとも現れません。
ですが二人の周囲である目論見が企まれます。そして二人を恋仲にしてしまおうとのあの手この手が繰り広げられることになったのです。
あんなにも恋の兆しがなかった二人ははたして本当に恋仲になるのか。
これがまたなんとあっさり恋仲になるものだから面白い。しかもそのアプローチがものすごくシンプル。ですがものすごく説得力があります。これをされたらたしかに意識しないではいられないかもしれません。さすがシェイクスピア。人間の機微を鬼のように掴み切った男のなせる技かもしれません。
そしてこの二人が恋仲になってめでたしめでたしかと思いきや、大きな事件が起こります。
正直、この事件やもうひとつの恋の物語の方が分量的には多いです。ですが正直私にはこれらが蛇足のように思えてしまったのでした。たしかにベアトリス、ベネディックの恋だけでは分量的にかなり少なくなってしまうので舞台としてはあっさり終わりすぎという問題が出てしまうかもしれません。ただ、本として読んでいる分には幾分、事件の起こり方やその筋が力技すぎるのではないかという思いも浮かんでしまいました。
というわけで作品の完成度としては『じゃじゃ馬ならし』に軍配を上げたくなるというのが正直なところです。(そもそもどっちが上かという話ではありませんが)
タイトルの『空騒ぎ』はまさにこの事件を指しているのかもしれませんが、私個人としてはベアトリス、ベネディックの恋の話がこの物語では一番面白かったです。
『じゃじゃ馬ならし』とセットで読むと違いが見えて面白い作品です。ベアトリス、ベネディックがいかにして恋に落ちたかはあえて書きませんでしたのでぜひ読んで頂けたらなと思います。シンプルながら説得力があるという私の言葉の意味もきっとわかると思います。正直、拍子抜けするくらいこてこてです(笑)
ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「シェイクスピア『空騒ぎ』あらすじと感想~素直じゃない二人を恋仲に?こてこてながらも気楽に楽しめる喜劇」でした。
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