江村洋『ハプスブルク家』あらすじと感想~ヨーロッパを支配した王家の歴史を知るのにおすすめの入門書
江村洋『ハプスブルク家』概要と感想~ヨーロッパを支配した王家の歴史を知るのにおすすめの入門書
今回ご紹介するのは1990年に講談社より発行された江村洋著『ハプスブルク家』です。私が読んだのは2020年第52刷版です。
早速この本について見ていきましょう。
キリスト教が心なら、ハプスブルク家は背骨である。ヨーロッパの「宗家」ハプスブルク家の盛衰。王家の中の王家、超国家的な支配原理で陽の沈まない帝国を築いたハプスブルク家。カール5世、マリア・テレジア等の闘争と政略の700年を通しヨーロッパを考える。
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私がこの本を手に取ったのは以前「石鍋真澄『教皇たちのローマ』15~17世紀のローマ美術とバチカンの時代背景がつながる名著!1527年のローマ劫掠の衝撃!」の記事で紹介した「サッコ・ディ・ローマ(ローマ劫掠)」という事件がきっかけでした。
それは1527年に神聖ローマ帝国軍がローマに押し入り、聖地バチカンから暴力、略奪の限りを尽くしたという信じられない事件です。
この神聖ローマ帝国の当時の王があの有名なカール5世で、彼はスペイン王でもありました。
アメリカ大陸からもたらされた莫大な富をローマカトリックのために湯水のごとく費やしたと語られていたイメージがあった私にとって、そんなカール五世の軍がバチカンを破壊するというのは信じられない思いでした。
そこで私はカール五世やハプスブルク、神聖ローマ帝国に興味を持つようになり、まずはじめにこの本を手に取ったのでした。
この本はタイトル通り、長い歴史を持つハプスブルク家がいかにして始まり、どのように勢力を増していったのかということが非常にわかりやすく説かれています。
読んでいて「へぇ~!そうなんだ!」とびっくりすることが何度も何度もありました。これまで中世ヨーロッパまでなかなか手が回らなかったためその歴史はほとんど知りませんでしたが、当時のヨーロッパはこんな状況だったのかとまさに目から鱗でした。これは面白いです。
著者はこの本について「はじめに」で次のように述べています。
本書はハプスブルク家の代表的な君主たちに焦点をあてながら、ヨーロッパの指導的立場を常に失うことがなかったこの王朝の盛衰をたどってみようとするものである。その過程において、ハプスブルク史は必然的にヨーロッパ史ともなることが明らかとなるであろう。そしてそれと同時に、それは今日の東欧問題、とりわけハンガリーとチェコスロヴァキアの現代史を考察する際には、一つの基本的要素として重要な役割を果たしていることが理解されるであろう。
もし本書がヨーロッパとは何か、そして今日、社会主義に訣別して西欧圏に接近しつつあるように思われる東欧各旧の諸問題の源流はどこにあるかを探る上での一助となれば、筆者にとっては望外の幸せである。
講談社、江村洋『ハプスブルク家』2020年第52刷版P9-10
ハプスブルクを知ることはヨーロッパの歴史そのものを知ることであることがこの本を読めばよくわかります。
ヨーロッパの国際政治システムを知る上でも非常に興味深い内容が満載でした。
そして私が最も気になっていたカール五世についても手厚く語られていましたのでこれは非常にありがたかったです。
バチカンをめぐるヨーロッパの勢力争いの構図がすさまじいものであったことがよくわかりました。そして当のバチカン自体がその戦乱に奥深くまで関与しているというのですからもう目も当てられません。
中世ヨーロッパに興味のある方、繁栄を極めたハプスブルク家に興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。
とても読みやすく、わかりやすい1冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「江村洋『ハプスブルク家』~ヨーロッパを支配した王家の歴史を知るのにおすすめの入門書」でした。
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