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『漫画 人物科学の歴史04 パスカル/ニュートン』あらすじと感想~ロバート・フックとニュートンの不仲についても知れるおすすめ伝記

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『漫画 人物科学の歴史04 パスカル/ニュートン』あらすじと感想~ロバート・フックとニュートンの不仲についても知れるおすすめ伝記

今回ご紹介するのは1990年にほるぷ出版より発行された山崎正勝、木本忠昭監修指導、佐々木ケン漫画担当の『漫画 人物科学の歴史04 パスカル/ニュートン 近代科学への離陸』です。

この作品は17世紀を代表する科学者パスカルとニュートンを中心に描かれた伝記になります。

著者は「はじめに」でこの伝記について次のように述べています。

私たちは、科学技術の成果によって、世界でその日にどんな出来事があったかを、家庭のテレビで居ながらにして見聞きすることができる。また、宇宙に打ち上げられた探査機が送ってきた、地球から遠くはなれた惑星の映像を眺めることさえできる。しかし、こうしたことは、ついこの間まで人類にとって長年の夢でしかなかった。今日ほど、人々の生活に科学と技術が深い影響を与えている時代はないだろう。

この『漫画人物科学の歴史』は、科学の誕生から今日まで人々が追い求めた夢を、どのように実現してきたのかを、科学者や技術者の活動のドラマを通して描いたものである。そこには、たくさんの意外で面白いエピソードがある。また、科学の研究や技術の発明が、当時の社会と深く結び付いていたことも語られる。

先人たちの努力と失敗は、私たちに将来の科学と技術の望ましい在り方を考えさせてくれる。

ほるぷ出版、山崎正勝、木本忠昭監修指導、佐々木ケン漫画担当『漫画 人物科学の歴史04 パスカル/ニュートン 近代科学への離陸』P4

この本ではここで述べられるように、科学を牽引した偉人たちの面白いエピソードやその時代背景をわかりやすく見ていくことができます。

私がこの本を読もうと思ったのは、何と言ってもニュートンについて知りたかったからでした。

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前回の記事でロバート・フックについてお話ししましたが、この人物の肖像画は奇妙なことに現存していません。顕微鏡でコルクを観察し、世界で初めて細胞を発見したこの大人物の肖像画がないというのはあまりに不自然です。

ではなぜ肖像画が失われてしまったのでしょうか、それがなんと、ニュートンの存在だったと言われています。

ロバート・フックとニュートンは不仲であったことで有名です。

そのエピソードは以前当ブログでも紹介したローラ・J・スナイダー著『フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光と視覚」の革命』という本でも語られていました。

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ただ、この本では二人の生涯についてはあまり詳しくは書かれていませんでしたので、なぜこの2人がこんなに険悪な仲になってしまったのかというのが私の中で気になるばかりでした。

ですが正直、私は根っからの文系人間です。高校の時から数学も科学もとにかく苦手で、今から専門書のような堅い本でニュートンのことを学び直すのはどうしても気が進みません。時間もないし、このことはあきらめて次に進むしかないなぁと私は思い始めていました。

ですがまさにそんな時に見つけたのがこの本だったというわけです。

この本は漫画で描かれています。ですので視覚的に学ぶことができます。これは大きいです。というのも、もし実験器具や難しい理論や数式の羅列ばかりの本だったら私はすぐにギブアップしてしまったことでしょう。この本ではそんな私でも楽しく学ぶことができました。

正直、この本を読んでも理論の細かい所まで理解できたかと言われれば「ごめんなさい」としか言いようがないのですが、当時の人がこんな形で実験をしていたのかということをイメージできたのはとてもありがたかったです。科学が苦手でそこから逃げていた私のような人間からすれば、実験の様子を見るということだけでも大きなことでした。

そしてこの伝記漫画の素晴らしいところは登場人物たちの人間臭さにあります。偉人だからといって理想化するのではなく、非常に人間味あふれる個性豊かな人物として描かれています。

ニュートンってこんな人だったのかとかなり驚いてしまいました。そして私が最も知りたかったロバート・フックとニュートンの確執についてもかなり詳しく描かれています。

ニュートンの執念深さにも驚きますが、フックはフックでやはり嫌われるようなことを散々やってしまっているのですよね。これは仲が悪くなって当然だなと思ってしまいました。ただ、肖像画は残してくれてもよかったのではないですかニュートン先生・・・

そしてこの伝記はそんなニュートンだけでなく、パスカルやデカルト、ライプニッツも出てきます。

デカルトは先ほどもお話ししましたローラ・J・スナイダー著『フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光と視覚」の革命』でも重要な役柄として出てきていましたし、ライプニッツに関してはこの後改めて紹介する予定です。

フェルメールのことをやっていたはずがいつの間にか科学や哲学の重鎮たちのことまで調べることになってしまいました。私自身この予想外の展開に驚いています。ただ、フェルメールを知ろうとすれば、どうしてもそこと繋がってしまうのです。それだけフェルメールという人物が底知れぬ大人物であり、特徴的な時代背景を生きていたのだなと感じさせられます。

これはいい作品でした。この伝記シリーズは違う機会にまた紹介することになると思います。

以上、「『漫画 人物科学の歴史04 パスカル/ニュートン』ロバート・フックとニュートンの不仲についても知れるおすすめ伝記」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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