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薩摩秀登『プラハの異端者たち』概要と感想~15世紀プラハのヤン・フスによる宗教改革とは
今回ご紹介するのは1998年に現代書館より発行された薩摩秀登著『プラハの異端者―中世チェコのフス派にみる宗教改革―』です。
早速この本について見ていきましょう。
宗教改革の先駆であり、一国のあらゆる階層の人々を動員した中世の一大事件・フス派運動。ローマの権威に挑み、十字軍を迎撃したプラハ市民の胸に去来したものは何か。中世を生き抜いたフス派の歴史を詳述する。
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ヤン・フスについては2019年に私がプラハを訪れた時の記事「プラハの偉人ヤン・フス~宗教改革の先駆けと免罪符 チェコ編⑧」でもお話ししました。
ヤン・フスは1517年のルターの宗教改革に先立つことおよそ100年前にプラハで宗教改革を始めた人物です。
フスについては上の記事でお話ししていますのでこの記事では詳しくはお話ししませんが、薩摩秀登著『プラハの異端者―中世チェコのフス派にみる宗教改革―』ではかなり詳しくフスの宗教改革について知ることができます。
この本ではチェコの成り立ちから、どのようにしてこの国が治められていたのかという点から解説が始まっていきます。
そしてフスが何に対し批判を述べ宗教改革が始まっていったのか、さらにはチェコの宗教事情がそこからどのように変遷していったかも解説されます。
私はこの本を読んで感じたことがありました。
それはやはり、「宗教は宗教だけにあらず」ということです。
たしかにフスは腐敗した教会のあり方に対して異を唱え、正しい信仰を求め運動を始めました。
しかしそこには国内外の政治問題、経済や文化、民族、歴史の問題などなど、あらゆるものがそれと関係しています。特にフスが異端として処刑された後にフス派として抵抗を続けていったチェコ人のグループはかなり政治的な問題をはらんでいたことがこの本では述べられます。
たしかにフス自身は純粋に信仰的な面から民衆に語りかけていたかもしれませんが、それが大きなうねりとなって広がっていったというのはやはり宗教のみならず様々な側面が混じり合ってできた反応だったからということができるかもしれません。
この本ではチェコの歴史を知る上で非常に興味深い事実をたくさん学ぶことができます。
ヤン・フスの宗教改革に興味のある方、チェコの宗教や文化、メンタリティーに関心のある方にもぜひおすすめしたい1冊です。
以上、「薩摩秀登『プラハの異端者たち』~15世紀プラハのヤン・フスによる宗教改革とは」でした。
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プラハの異端者たち: 中世チェコのフス派にみる宗教改革 (叢書歴史学への招待)
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