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カフカ『カフカ短編集』あらすじと感想~カフカの魅力が詰まった珠玉の短編集
今回ご紹介するのは1987年に岩波書店より発行されたフランツ・カフカ著、池内紀訳『カフカ短編集』です。
早速この本について見ていきましょう。
実存主義、ユダヤ教、精神分析、―カフカ(1883-1924)は様々な視点から論じられてきた。だが、意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう。難解とされるカフカの文学は何よりもまず、たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ。語りの面白さを十二分にひきだした訳文でおくる短篇集。20篇を収録。
Amazon商品紹介ページより
この作品は『変身』、『審判』、『城』などで有名なカフカの短編を収録した作品集です。
収録された作品の一覧はこちらです
掟の門
判決
田舎医者
雑種
流刑地にて
父の気がかり
狩人グラフス
火夫
夢
バケツの騎士
夜に
中年のひとり者ブルームフェルト
こま
橋
町の紋章
禿鷹
人魚の沈黙
プロメテウス
喩えについて
万里の長城
なんともカフカらしいタイトルの作品がずらりと並んでいますよね。
この中でも有名なのはやはり『掟の門』、『判決』、『田舎医者』、『流刑地にて』などが挙げられます。
そして私が読んで特に印象に残っているのは『流刑地にて』です。
この作品はカフカらしさ全開で、その不気味さは圧倒的です。
ある旅行家が流刑地に旅し、そこで死刑を執行する将校と、それに使われる異常な処刑機械がこの作品では語られます。
受刑者は自分が何をされるかわからぬまま、さらにはそもそも自分の罪状すらわからぬという、カフカ好みの人物です。この罪人は不条理にもこれから殺されようとしているのです。しかも、ひときわ不条理な方法で・・・
そして不気味なのはこの処刑機械だけではなく、それに心酔し、この機械について熱く語り続ける将校その人です。
機械のすばらしさを愛を込めて語り続け、機械がいかにして処刑を行っていくかを嬉々として語ります。そしてこの機械が存続できるように助けてくれと旅行家に懇願します。
処刑機械のおぞましさとこの将校の無邪気さのコントラストが不気味さを掻き立てます。
そしてこの作品は短編ながら、じりじりじりじりとなかなか展開が進まないのです。まるでこの処刑機械の殺し方のように・・・
これがまた恐ろしいのなんの・・・
「一体どうなってしまうんだこの物語は」と固唾を飲んでページをめくることになります。
この作品はカフカらしい不条理で不気味な雰囲気がものすごく出ていると思います。とてもおすすめです。
他にも『判決』も強烈なインパクトがありました。
不思議も不思議。最後に「え!?」となります。この作品の結末もなんとも言えない余韻が残ります。
そしてもう一作品、『橋』です。
ページ数にしてたったの2頁しかないこの短編が妙に記憶に残っています。
「私は橋だった」
という奇妙な書き出しから始まるこの作品は最後まで不思議な雰囲気のまま進んで行きます。そしてその終わり方も唐突で、「こんなのを思いついたカフカの頭はどうなっているんだ」と思ってしまいました。
カフカの異常な想像力を感じられる作品です。この作品は巻末の解説でも取り上げられているのでぜひ解説と合わせて読んで頂けたらなと思います。この本はカフカの短編そのものも魅力ですが巻末の解説もわかりやすいのでカフカを知るのにとてもおすすめです。
『カフカ短編集』はひとつひとつの作品がとてもコンパクトなので気軽に読むことができるのも嬉しいです。『審判』や『城』は長い上に難解な部分も多いので、正直読むのが大変です。ですがこの短編集はそのカフカの魅力をそのままに気軽に読むことができるのでとてもおすすめです。
また、同じくカフカの短編集として『カフカ寓話集』という本も出ています。こちらもカフカらしさ全開ですので『カフカ短編集』と合わせて読まれるのをおすすめします。
『カフカ寓話集』を読んでいるとその突飛な想像力に驚かされます。そんな『カフカ寓話集』を読んでいて感じたのは日本を代表するSF作家、星新一に似ているかもということでした。
私は星新一の不思議な世界観とアッと驚くような展開が大好きです。『カフカ寓話集』からはまさしくそんな雰囲気が感じられました。
もちろん、年代はかなり違います。ですが何か共通するようなものを感じたのでありました。
『カフカ短編集』、『カフカ寓話集』、ともにおすすめな作品となっています。
以上、「カフカ『カフカ短編集』カフカの魅力が詰まった珠玉の短編集」でした。
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