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E・ヴォルフルム『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』あらすじと感想~ベルリンの壁の歴史を学ぶのにおすすめな一冊!

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エドガー・ヴォルフルム『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』概要と感想~冷戦時代の東西ドイツやベルリンの壁の歴史を学ぶのに最適な1冊!

今回ご紹介するのは2012年に洛北出版より発行されたエドガー・ヴォルフルム著、飯田収治・木村明夫・村上亮訳の『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』です。

早速この本について見ていきましょう。

壁が倒れたとき、あなたは何歳でした?

なぜ人びとは壁に慣れてしまったのか?
その壁がどうして、1989年に倒れたのか?
建設から倒壊までの、冷戦期の壁の歴史を、壁のことをよく知らない若い人にむけて、簡潔かつ明瞭に解き明かす。
写真を多数掲載。

Amazon商品紹介ページより
東ドイツ当局により建設中のベルリンの壁。(1961年11月20日)Wikipediaより

この本紹介にありますようにこの本はベルリンの壁を知らない人にもわかりやすくその歴史が伝わるように書かれた本です。

訳者あとがきに興味深いことが書かれていましたので少し長くなりますがこちらも引用します。

今の日本には、「ベルリンの壁」と聞いてピンとくる人はどれほどいるだろうか。「冷戦」の記憶がまだ残る四〇歳以上の人たちなら、「べルリンの壁」は、「冷戦」にまつわる印象的な出来事を思い出し、それなりの感慨にふけるきっかけになるかもしれない。だが三〇歳代半ばまでの若い人たちはそうはゆくまい。「冷戦」時代の体験を実感しにくい世代である。

二〇一二年現在から数えて、「べルリンの壁」建設は五一年前の、その壁の倒壊は二三年前の話である。「べルリンの壁」はすでに、ひと昔も、ふた昔も前の「過去」に属する。その知識はあっても、そこからさまざまなことを連想する、喚起力をもった事柄ではもはやないであろう。しかも「べルリンの壁」に関する知識といっても、多くはあやふやなもので、それは中・高年世代にも共通する。実は本国のドイツでも、近年その点が問題になっている。

最近、ドイツの五千人余りの学校生徒を対象にして、東西ドイツの分断時代に関する知識と見解を問うアンケートが実施され、その結果に何よりも歴史家たちが衝撃を受けたという。

たとえば「ベルリンの壁」が築かれた年の正解率は五〇%に届かない。とくに旧西ドイツ最大のノルトライン・ヴェストファーレン州では、七一%の生徒が一九六一年と正しく答えられなかった。本書にもたびたび登場するアデナウアーやウルブリヒトなどが、東西どちらの政治家であったかを取り違えている回答が意外と多いのにも驚かされる。さらに「ドイツ民主共和国」(旧東独)をテーマとする授業を、三分の二以上の生徒がきちんと受けていない実態も判明した。そのために旧東独のブランデンブルク州や東べルリンの青少年の六〇%強は、「民主共和国」政府が民主的選挙で選ばれたと誤解している、途方もない結果が出ている。

「冷戦」時代の現代史は、ドイツ本国でも青少年世代に必ずしも正確には伝わっていないらしい。これは歴史授業だけが原因ではなかろう。東ドイツの青少年のあいだに広がっている「民主共和国」像は、ロマン主義的な夢想世界のイメージと変わらない、と本書でも指摘されている。そこでは史実とはかけ離れ、ひどくパターン化された歴史像が思い描かれる。おそらく著者エトガー・ヴォルフルム氏はこれを、旧東独時代を懐かしむ今はやりの危険な潮流の現れと見なし、その危機感が本書『べルリンの壁』執筆の一因にもなっていると思われる。

洛北出版、エドガー・ヴォルフルム著、飯田収治・木村明夫・村上亮訳『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』P273-274

私自身1990年生まれで、冷戦当時のこともベルリンの壁が崩壊したこともリアルタイムで経験していません。

物心ついた頃にはすでに2000年代も近く、冷戦は過去の「歴史」の範疇にあるように感じられました。

そしてこのあとがきにもありますように私もベルリンの壁がいつできたかということを最近まで知りませんでした。私はてっきり戦争が終結してすぐの1940年代後半あたりかなと思っていたのですがまさかの1961年。キューバ危機のたった1年前ということを知って本当に驚きました。

そしてさらに驚きなのはドイツ人ですらもはやその記憶があやふやになってしまっているという点です。

今のドイツの学生の50%以上がベルリンの壁の建築年を正解できていない。そして東西ドイツの歴史をほとんどわかっていないという事実。

かつて自国でどのような出来事があり、悲惨な分断が繰り広げられていたかという記憶がもはや継承されていないのです。

これは日本も他人事ではありません。

かつての悲惨な歴史の記憶を継承できていないということは、その歴史をまた繰り返す可能性が高まるということです。

そうした危惧が著者をこの本の執筆に向かわせた一因であると訳者は述べています。

この本はベルリンの壁や東西冷戦をまったく知らない人にもわかりやすく書かれた本です。

ですが入門書とあなどるなかれ。この本は私たちをより深いところまで連れて行ってくれます。単に歴史の流れをたどるだけでなく、なぜそうなったのか、そして今現在世界中で何が起こっているのかということまで考えさせてくれます。

最初に引用した本紹介の後半にもありましたように、この本ではパレスチナの分離壁についても言及していきます。

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パレスチナの分離壁は2019年に私も訪れ、現地のパレスチナ人ガイドさんからその歴史を教えて頂きました。ベルリンの壁とこのパレスチナの分離壁も他者を分断するというところで繋がっているんだとこの本で改めて感じさせられました。

この本はベルリンの壁の歴史を学ぶには非常におすすめです。図や写真も豊富で当時の様子もイメージしやすく、とても読みやすい本となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「『ベルリンの壁 ドイツ分断の歴史』ベルリンの壁の歴史を学ぶのにおすすめな一冊!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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