目次
陽気な音楽が流れるキューバの首都ハバナと旧き良き時代 僧侶上田隆弘の世界一周記―キューバ編⑨
サンタクララでの観光を終えた後ぼくはバラデロへとまた3時間の道を引き返し、その翌日には再びキューバの首都ハバナへと向かった。
ぼくが滞在することにしたのはハバナの中でもオールドハバナと呼ばれる旧市街。
ここは世界遺産にも登録された街で、今でも旧き良きキューバの雰囲気を感じることができる。
今日は現地ガイドさんと共にゆっくりとハバナ旧市街を散策する。
キューバと言えば音楽。
街中いたるところでミュージシャンが演奏している。
ぶらぶら街歩きをしているとキューバらしいサウンドがどこからともなく聞こえてくる。
ここはキューバなんだと感じさせてくれる瞬間だ。
キューバミュージックと言えば世界中を席捲したBuena Vista Social Clubが有名だ。
この公式映像では旧き良きキューバを感じられるのでキューバの雰囲気を感じるにはこれが1番だと思う。
そしてこちらが旧市街のメインストリート、オビスポ通り。
ここは朝も昼も夜も、いつでもたくさんの人で賑わっている。
そしてハバナの旧市街は観光地でありながらもそのほとんどのエリアが未だに住宅地としてあり続けているのが特徴的。
オビスポ通りから一本路地に入ればすぐにこのような路地が続く。
建物は社会主義国家にありがちな老朽化したものだが、ここには現地の方が実際に住んでいる。
観光の中心地に住宅が立ち並び、今でも現地人がたくさん暮らしているというのはなかなかあるようなものではない。
言うならば京都の四条河原町の繁華街が住宅地になっているようなものだ。
ハバナの街が面白いのは現地住民の生活を見ることができること。
現地住民の生活の場がまさしくハバナ旧市街なのだ。
オビスポ通りも観光客ももちろん多いが実は半分以上が現地住民なのではないかというくらい地元の人で賑わっている。
オビスポ通りは現地住民にとっても重要な生活圏なのだ。
この旧市街には『誰がために鐘が鳴る』や『老人と海』などで有名なヘミングウェイが好んで宿泊していたホテル・アンボス・ムンドスだったり、
スペイン統治時代から作られたいくつもの大きな教会など見どころはたくさんある。
だがハバナの街歩きの醍醐味はやはり街歩きそのものだろう。
どこからともなく聞こえてくるラテンのリズム、陽気なキューバ人、ほてった体を冷やすモヒート。(お酒を飲めない人のためのノンアルコールのモヒートもあるというありがたいおもてなしだ)
ご機嫌な街、ハバナ。
この街はあてどなくぶらぶらするには最適な街だろう。
ぼくはハバナ滞在中、カサと呼ばれる民泊に宿泊していた。
カサとは一定の基準に達した民家が政府から許可をもらい、その家の部屋を観光客に貸し出すというシステム。
というのもキューバのホテルは国営で、設備の割にものすごく宿泊料金も高い。
そこで一般住民が部屋を貸すことで安く泊まりたい観光客のニーズに応えるという方法を取っている。
これまで述べてきたようにキューバは社会主義の国だ。そのため給料は国から支給される。
しかしその給料はかなり安く、満足に生活することも難しい。
そこでこのシステムは住民たちの大きな収入源として重宝されているのだそう。
ぼくの泊まったカサの入り口。まさに家。
もちろん、そこに住んでいる家族と共同生活のような形になる。
とても陽気で親切な二人。
ぼくはここで半分ホームステイのように過ごし、キューバの人たちの考え方や陽気な性格にカルチャーショックを起こすほどだった。
キューバ人の気質については本で知っていたことではあったが、いざ目の前にするとその衝撃たるやものすごいものだった。
次の記事ではガイドさんから聞いたキューバ人の驚くべき気質とぼくのカルチャーショックについてお話ししていきたい。
続く
次の記事はこちら
あわせて読みたい
ブエナビスタ・ソシアル・クラブのライブ体験とガイドさんに聞くキューバ人の陽気さ キューバ編⑩
キューバといえば陽気なラテンの人々。
これまでお話ししてきましたようにキューバ革命の指導者カストロも底抜けの楽観主義者だったそうです。
キューバ人はとにかく陽気で、歌い、踊り、生きることを楽しむ。様々な本でキューバ人の気質はそのように述べられていました。
しかし、私は正直心の中でこう思いました。
「本当にそうなのだろうか?さすがにみんながみんなそうではあるまいさ。それは外国人が作った誇張されたイメージなのでは?」
と、いうわけでハバナ散策の際に同行して下さった現地ガイドのダニエルさんに思い切ってそのことを質問してみたのでした。
前の記事はこちら
あわせて読みたい
サンタクララ市街地と装甲列車襲撃記念碑~チェ・ゲバラゆかりの地、サンタクララ⑵ キューバ編⑧
チェ・ゲバラの霊廟でお参りをした後、次に私が向かったのはサンタクララ中心部。
サンタクララ市街地に到着すると、年季が入ったカラフルな建物にキューバらしさを感じます。
街の中をぶらぶらしながら近くにある装甲列車襲撃記念碑に歩いて向かいます。キューバ革命においてここサンタクララでの勝利が革命軍の勝利を決定的なものにしました。そのきっかけとなった戦闘がまさにここで行われたということで私はここにやって来たのでした。
関連記事
あわせて読みたい
キューバ人の陽気さに付いていけず寝込む。私は陽気で愉快な人間にはなれそうもないことを確信した日。...
「キューバ人は陽気な人々で音楽と踊りが大好き」
そんなイメージが皆さんにもおありだと思います。私もそんなイメージを持っていたのですがそれを身をもって体感することになりました。まさしくカルチャーショック。私はそのあまりの陽気さに衝撃を受けダウンしてしまいました。
その決め手となったのが急遽決まったサルサの個人レッスン。陽気なことが苦手な私の一念発起の挑戦でしたがまさかこれがあんなことになろうとは・・・
あわせて読みたい
「インバウンド頼みのキューバの現状と格差、教育問題」日本も他人事ではない! キューバ編⑫
「キューバにはいいところも悪い所もあります。いいところは教育と医療システムのすばらしさです。私もハバナ大学を6年、日本留学も1年しました。すべてタダです。誰にでも学ぶチャンスがあることはすばらしいことです。ですが現在のキューバには深刻な問題があります。経済と観光の問題です。」
現地ガイドはこう切り出し、私にキューバの厳しい現状を語ってくれました。観光業によって経済を成り立たせようとするあまり国の基盤が崩れかかっている恐ろしい現実をこの記事ではお話ししていきます。そしてこれは日本も全く他人事でありません。私はガイドの話を聞き戦慄を覚えたのでありました。
あわせて読みたい
ヘミングウェイ『老人と海』あらすじ解説と感想~ノーベル文学賞を受賞した名作!キューバといえばこの作品
『老人と海』はヘミングウェイがピューリッツァー賞やノーベル文学賞を受賞することになった代表作で、キューバを愛したヘミングウェイの最高傑作として知られています。
この記事では新版の高見浩訳を中心にお話ししていきますが、解説の充実度、読みやすさ、表紙デザインなどの総合力で見るなら高見浩訳、シェイクスピアファンであるならば旧版の福田恆存訳をおすすめしたいです。
あわせて読みたい
三好徹『チェ・ゲバラ伝』あらすじと感想~キューバ革命を代表する革命家の生涯と思想を知るのにおすす...
私が『ドン・キホーテ』を読もうと思ったのはゲバラのおかげです。「ゲバラほどの男が愛していた『ドン・キホーテ』は一体どんなにすごい本なのだろう」、そう思ったからこそ私は『ドン・キホーテ』に初めて手を伸ばしたのです。
今では『ドン・キホーテ』は私のライフワークのようなものになっています。この作品は一生読み続けていくことでしょう。
私にとってチェ・ゲバラという存在は私とドン・キホーテを繋いでくれた大恩人なのでありました。
その大恩人のことを知れる素晴らしい伝記が本作『チェ・ゲバラ伝』になります。
あわせて読みたい
伊藤千尋『キューバ 超大国を屈服させたラテンの魂』あらすじと感想~キューバの歴史を知るのにおすすめ...
この本を読んでいると驚くことばかりでした。普段キューバという国についてほとんど情報が入ってくることがない私たちです。せいぜい野球が強いというイメージくらいでしょうか。そこにキューバ危機や独裁者カストロというイメージしかない私たちにとってこの本で語られることはそれこそ仰天ものです。イメージと全く逆の世界がここにあります。
この本を読めばアメリカに対する思いもきっと変化すると思います。
アメリカ側からだけの情報ではなく、キューバ人にとってアメリカはどういう国だったのかということを知ることができるのもこの本の素晴らしい点だと思います。
あわせて読みたい
キューバ旅行記おすすめ記事一覧~クラシックカーが走る陽気な社会主義国家を訪ねて【僧侶上田隆弘の世...
私の世界一周の最後の国、キューバ。
色んな意味でこの国は規格外。自分とはまったく違う世界があるということを実感した国でした。
おそらく私が行った国の中で最もカルチャーショックを受けたのがこのキューバでした。あまりに違い過ぎて混乱しましたが、それも楽しい体験でした。
コメント