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モンセラットとサンタ・コバの巡礼~ガウディにインスピレーションを与えた山を散策  スペイン編⑳

モンセラット
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モンセラットとサンタ・コバの巡礼~黒のマリア発見の庵 僧侶上田隆弘の世界一周記―スペイン編⑳

モンセラット修道院で最も大切にされている存在。

それが黒のマリア像。

現在は聖堂内に安置され、毎日多くの参詣者が列をなしている。

その黒のマリアが発見された洞窟がサンタ・コバだ。

その洞窟には現在礼拝堂が建てられており、心を静め祈りを捧げる瞑想の場として大切にされている。

通常は修道院のすぐそばのケーブルカーでその洞窟の近くまで行けるのだが、残念ながら現在(2019年5月時点)は運休中。

そのため修道院から歩いて向かうことにした。

ガイドブックによると40分ほどで到着できるとのことだった。

まだ日も登りきらない午前中に出発。

岩山に沿って階段を下っていく。

道の途中、いくつものオブジェと出くわした。

サンタ・コバの道はこうしたオブジェや著名な芸術家の彫刻を楽しむことができるようになっている。

道のりそのものが起伏もあり厳しいのでちょっとした休憩がてら作品を見れるのはありがたい。

そしてこれから向かうサンタ・コバは写真の赤い矢印の先にある赤茶色の建物だ。

こうして見てみると本当にとんでもない所に立っている。

よくもまあこんな所に建てれたものだ。ほとんど岩山にへばりついているかのようではないか。

これから岩山沿いにぐるっと迂回して正面の岩山へと向かっていく。

オレンジ色の矢印はその道を指している。よく見てみるとそこが道になっているのがわかると思う。

かなり下ってきた。

本来はこのケーブルカーで修道院駅から下りてくることができる。

右上の建物の辺りから一気に下ってくるのだ。

これがあるなしでは帰りのしんどさが全然違う。

帰りは覚悟して帰ろう。

まだまだ崖沿いを下っていく。

ふと岩山の方から小石が落ちてくるような音がした。

何事かと振り返ってじっくりと眺めてみる。

すると驚いたことに、シカのような動物が崖にいるではないか。

信じられない。

ここから見たらほぼ垂直な断崖絶壁にシカがいる・・・

落ちないかとハラハラしながら見守る。

下にいる方のシカがどうやら少しどんくさいようで、上に上るのに難儀していた。

何度か上るのに失敗して落ちかける。

その度にこちらの心臓はきゅっと締め付けられるようだった。

10分ほどして彼らは崖の上の方に姿を消していった。

やれやれ、見ているこっちのほうが緊張してしまった。

さて、先に進もう。

すでに目の前は絶景。

先程の写真のオレンジの矢印の辺りまでやってきた。

今度は登り坂。

炎天下の中これは堪える。

十字架とイエスのオブジェ。

それにしても空がきれいだ。青い空とモンセラットの奇岩山との色のコントラストが美しさを際立たせる。

そして道の先にはガウディ作の像があった。

ガウディはこのモンセラットの山々からもインスピレーションを受けていたそうだ。

たしかにそう言われてみればサグラダ・ファミリアもここの奇岩山とも少し似ているような気もしてきた。

ようやくサンタ・コバの礼拝堂に到着。

ぱっと見てみると岩山にめり込んでいるようにも見える。

洞窟と一体化する形でこの礼拝堂は作られているようだ。

この建物自体は1705年に初めて建てられ、その後何度も修復がされたもの。

伝説では、ここにある洞窟で西暦880年に黒のマリアが発見されたとされ、以後この地は信仰深い巡礼者が祈りを捧げる地となっていったそうだ。

現在はぼくのような一般の参拝者が来ることができるような場所になったが、かつてここはひっそりと修道士が隠遁してひたすら瞑想に励む修行地のような場所であったそうだ。

礼拝堂内部。

正面が洞窟部分。

やはりこの建物は完全に岩山と洞窟と一体化している造りであった。

現在はここに聖母像のレプリカが安置されている。

本物は前の記事で紹介したようにモンセラット修道院の聖堂内に安置されている。

しかしいざ実際にここに来てみると、こうしてマリア像が安置され、何千何万、いやもっともっと多くの巡礼者がここを尋ねてきたのだということを考えずにはいられなかった。

人々が紡いできた信仰の歴史。

日本でも奈良や平安時代の仏像を見る時もそう感じるのだが、これらの聖なる像は1000年以上も前から人間の祈りの対象になってきた。

そこには計り知れないほどの人々が祈りを捧げ続けてきた歴史がある。

1000年以上も昔の人もぼくたちと同じようにこの像に向かって祈りを捧げていたと思うと何とも不思議な気持ちになる。

ぼくはこの静かな礼拝堂で1時間ほどゆっくりと心を落ち着けて過ごしたのであった。

帰りも絶景を楽しみながら歩く。

しかし行きよりも帰りの方がきつい。

行きが下りが多かった分、帰りは登りが多い。

ケーブルカーがあるのとないのでは大違いだ。

まあ、その分きれいな景色を休み休みのんびりと眺められたのだからそれはそれで楽しい時間だった。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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