ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』あらすじと感想~アイーダの作曲者ヴェルディのおすすめ伝記!
ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』あらすじと感想~アイーダの作曲者ヴェルディのおすすめ伝記!
今回ご紹介するのは1989年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『ヴェルディ―「太陽のアリア」』です。私が読んだのは1999年第4刷版です。
この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。
クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。
この作曲の物語シリーズについては巻末に以下のように述べられています。
児童書では初めての音楽家による全巻現地取材
読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。
リブリオ出版、ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』1999年第4刷版
一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。
ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。
さて、今回ご紹介するヴェルディといえば何と言っても『アイーダ』です。
ヴェルディはイタリアを代表する世界最高峰のオペラ作曲家です。
この伝記を読んで驚いたのはヴェルディの堅実な生き方や、生き様、死に様でした。
これまで様々な作曲家の人生をこの伝記シリーズで見てきたのですが、ほとんどどのお方も尋常ではない波乱万丈ぶりでした。しかも天才らしい破天荒、狂気の方達ばかりでした。
そんな中でも穏やかな生活を愛し、倹約しうまく資産を蓄え、最後には慈善事業のためにそのお金を使おうとするヴェルディ。
ほとんどの作曲家が悲惨な晩年や苦しい人生を過ごしていた中で、ヴェルディは驚くほど充実した人生を生きた人だったということに私は驚きました。
もちろん、ヴェルディにも苦しいことはあります。
ですが他の天才たちと比べると彼の人生は全く違った趣があるのです。
この伝記シリーズを読んできて私も感覚が狂ってきたのでしょうか、順風満帆に事が進んで行くと逆に不安になってくるのです。ヴェルディのこの伝記を読んでいると、「大丈夫かなヴェルディ・・・このあと何かとんでもないことが起きてしまうんじゃないかな」とひやひやしながら読み進めてしまうのでした。
ですが、そういうこともなく彼は最晩年まで音楽を愛し、創作熱意も衰えることもなく作曲に打ち込むのでした。そして慈善活動にも勤しみ、世界中の人から敬愛されその生涯を終えていくのでありました。
大音楽家の多くは理不尽な目に遭ったり、自分の破天荒さから生活を壊してしまったりして生前はなかなか報われない人生が多いというのはこれまで見てきたとおりです。そして死後しばらく経ってからどんどん評価が上がっていく、これまでそんなパターンを見てきた私にとってこのヴェルディは驚きの存在でした。
「こういう形もあるんだな」と新たな発見をすることができた伝記でした。
最後に、この作品の中でヴェルディの特徴について著者がわかりやすくまとめてくれている箇所を紹介していきましょう。
「ヴェルディのオぺラにあった声とは、どういう声ですか?」
「暗く、深く、そして光沢をもったブロンズのような声です。ヴェルディのオぺラは人間の苦悩をテーマにしたものが多く、ですから美しく大きい声だけではだめです。もちろん彼のオーケストラは編成も響きも大きいので、それをこえるパワーは絶対に必要ですが。」
「そのヴェルディのオペラの魅力や特徴は、どのようなものでしよう。」
「私にとってのヴェルディは、いつも新しい。たとえば、《アイーダ》のラダメスをもうなん百回となくうたっていますが、つねに新しい発見があります。それと同時にオーケストラの最初の音が鳴った瞬間から、ヴェルディの世界にとびこめます。これは、きく人にとっても同じ。ヴェルディの音楽ほど、親しみやすく、おぼえやすく、人をひきこんでしまうものはありません。これが、ヴェルディの最大の魅力でしよう。」(中略)
インタビューののち、私はヴェルディ広場のかどのバールでブッセートの風に吹かれながら、ヴェルディの旅をふりかえった。
取材する作曲家がしあわせな生涯を送った場合、その足跡をたどる私自身も幸福感に満たされる。
ましてやヴェルディのように、音楽にも、私生活にも、社会的な活動にも、やり残したことがないと思えるほど充実した人生を送った作曲家は、のちの人にあたえる印象も非常にさわやかだ。
イタリアにくると彼がどれほど愛され、尊敬されているかがわかる。彼はまさしくイタリアの象徴なのだ。その象徴はちょっぴり単純でけんかっぱやくはあったけれど、それゆえ「聖人」の型におしこめられることなく、後世の人々に親しまれている。
ヴェルディ広場中央のヴェルディの座像は、ヴェルディ歌劇場をバックに遠く天をみつめていた。
「私のようにどうどうと太陽の下を歩め」、と語るかのように。
リブリオ出版、ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』1999年第4刷版 P266-269
波乱万丈で狂気に満ちた大天才たちの苦難の人生。
しかしこのヴェルディは一味違った個性の持ち主であり、その生涯でした。
この伝記もいいですね。上の引用にもありましたように読み終えた後は爽やかな読後感に満たされることになります。いやあ面白い本でした。ぜひぜひこの作品もおすすめしたいです。
以上、「ひのまどか『ヴェルディ―「太陽のアリア」』アイーダの作曲者ヴェルディのおすすめ伝記!」でした。
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