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小栗浩『人間ゲーテ』あらすじと感想~ゲーテ入門に最適!ゲーテとはいかなる存在か、その魅力を解説する1冊!

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小栗浩『人間ゲーテ』概要と感想~ゲーテ入門に最適!ゲーテとはいかなる存在か、その魅力を解説する1冊!

ゲーテ(1749-1832)Wikipediaより

今回ご紹介するのは1978年に岩波書店より発行された小栗浩著『人間ゲーテ』です。

早速この本について見ていきましょう。

文芸芸術全般・自然科学・政治にまで広くかかわった“万能の天才”,ゲーテ.恋愛を通して彼の人間形成を探求,ヴァイマルでの人と時代とのかかわり,さらに詩人としての側面を『ファウスト』中心に考究し,彼の全貌を伝える

内容(「MARC」データベースより)

ゲーテはルネサンスの生んだ巨人たちの精神を受けつぎ、文芸芸術全般・自然科学・政治にまで広く関わった”万能の天才”であった。本書は恋愛を主題として彼の人間形成を探究するところからはじめ、人間ゲーテの全貌を伝える。

Amazon商品紹介ページより

この本は偉大な文学者ゲーテを「人間ゲーテ」として見直していくという観点で語られていきます。「序」では著者は次のように述べています。

この小さな本は、ゲーテの生涯の伝記的な叙述を志すものではない。ゲーテの伝記ならもう幾種類もすぐれたものが書かれているし、無数の翻訳書に付せられた略伝や年譜のたぐいによってもその生涯のあらましを知ることができる。

本書はまた、ゲーテの個々の作品の解釈、あるいは筋書きのごときものを述べようとするのでもない。そういうものなら、すでに世に出ているくわしい文学史や解説書などで容易にこれを求めることができる。

私がここで書こうと思うのは、人間としてゲーテが私にとってどういう存在であるかということである。もう四〇年近くもゲーテを読み、この巨大な人間について考えてきた一読者としての私が、自分の感想をできるだけ率直に語り、それが大方の人たちに、なにほどかゲーテをを知り、さらには人生を考える上で参考になるならば、というのが、この本を書くにあたっての私の最大の願いである。

私はいわゆるゲーテ信奉者ではない。彼の書いたものならなんでもありがたく思われるほどゲーテを崇めている者ではない。彼の数多い作品―小説、戯曲、詩、評論―のなかで、つまらないと思ったり、反感をさえ覚えたりするものも少なくない。また彼のさまざまな行動で、腑に落ちぬと思ったり、時には憤懣を覚えたりすることもないではない。
※一部改行しました

岩波書店、小栗浩著『人間ゲーテ』P2

著者がどのような立場でこの本を書いているかがわかりやすい文章ですよね。「私はいわゆるゲーテ信奉者ではない」とはっきりと述べている点も逆に信用できます。序の最後ではこう述べています。

時には私をはねつけもするが、しかしまた私を励まし、喜ばせ、うむをいわせず引きつけもするゲーテとはいったいどういう人間であったのか、それを私はこの本でとくに語りたいと思う。それゆえ、本書の主題は私の見た人間ゲーテであり、そのゲーテが、一八世紀という時代のなかで育まれ、戦い、そして時には妥協もしながら、いかに生きるべきかに工夫をこらしていった姿を、私なりに彫り出してみたいと思うのである。

岩波書店、小栗浩著『人間ゲーテ』P8

「人間ゲーテ」を描きだすこの1冊は非常に興味深いものとなっています。

そしてまたありがたいのが読みやすく、わかりやすいという点です。

ゲーテというと「難しい」イメージがありますがこの本は時代背景やゲーテの生涯を中心に、入門者でも理解できるように書かれています。

やはり当時の時代背景がわからないとその人物がなぜすごいのかということはわかりにくいです。

逆に言えばそこをしっかり押さえればその人物の魅力も浮き上がってくることになります。

ゲーテはなぜ世界史上最高峰の人物として称えられているのか。また、彼の代表作『ファウスト』がどれだけすごいものなのかということがこの本を読むことで見えてきます。

そして「序」でも語られているように「人間ゲーテ」の人となりが見えてくることでゲーテへの親近感が湧いてきます。ゲーテに対する好意が生まれてきます。こういう気持ちがあるからこそその人の作品を読みたい、もっと楽しみたいという気持ちも生まれてきます。この本を読むとゲーテ作品を読みたくなりうずうずしてきます。それほどこの本はゲーテの魅力を絶妙に伝えてくれます。

実は私はこれまでゲーテが苦手でした。かつて何度も何度も『ファウスト』を読んだのですがどうしてもその面白さがわからなかったのです。

しかし、この本を読んだことでそんな『ファウスト』に対する見方も変わり、実際にこの後読んでみると、なんと!「面白い!」と感じることができるようになったのです!これは本当に嬉しかったです。

ゲーテ参考書として非常におすすめな1冊です。私はこの本にとても助けられました。ぜひおすすめしたいです。

以上、「小栗浩『人間ゲーテ』ゲーテ入門に最適!ゲーテとはいかなる存在か、その魅力を解説する1冊!」でした。

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人間ゲーテ (1978年) (岩波新書)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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