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菅田祐凖『西山證空上人とその思想』概要と感想~法然門下筆頭の弟子で西山派の祖。親鸞との接点は?

西山證空上人
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菅田祐凖『西山證空上人とその思想』概要と感想~法然門下筆頭の弟子で西山派の祖。親鸞との接点は?

今回ご紹介するのは2022年に思文閣出版より発行された菅田祐凖著『西山證空上人とその思想』です。

早速この本について見ていきましょう。

ひとは宿因のなかに生をうけ、苦悩のはてにいかに心の安寧を得、生きる力を見出していけばいいのか。
鎌倉期、乱世の時代、公家の一門に生を受けながら、自ら発心し、十四歳で法然上人の門に身を投じ出家した少年。その内心に何があったのか。名利を捨て、死後の往生はともかく、現身、ただ今の往生、「生き甲斐の念佛」を提唱した念佛者。その思想は、昏迷を極める現代に指針の光を灯すものと言えよう。
浄土西山流〈西山派〉の祖、證空上人。その生涯と上人像、宇宙的とも言えるひろやかな思想を、根本史料に基づき、著者の永年の研究と思索によって説き明かす。

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証空(1177-1247)Wikipediaより

證空上人(1177-1247)は法然門下の中でも筆頭格の弟子で西山三派の祖とされる人物です。

本書を読んで驚いたのですが、證空聖人は村上源氏の源親季の長男ということでかなりの貴種です。しかも後になんとあの久我道親の猶子になったとのこと。久我道親といえば九条兼実と政治抗争をした大物貴族で、あの道元もこの道親の猶子となっています。つまり證空上人と道元はかなり近い血筋ということができます。

證空上人は幼き頃から記憶力抜群で14歳で法然上人のもとに弟子入りし、めきめき頭角を現します。そして1198年に法然上人が『選択本願念仏集』を執筆する際に、若くして勘文という経典照らし合わせの重要な役柄を任されるほどの信頼を得ていたのでありました。

また、法然上人没後も比叡山天台座主慈円との深い繋がりによって庵を譲られ、これが浄土宗西山派を開くきっかけともなりました。彼は法然教団内だけでなく、外部の有力僧侶からも一目置かれる存在だったのです。

そして證空上人は親鸞聖人の4歳年下でありますが法然門下の兄弟子になります。そして重要なのが、この證空上人が以前当ブログで紹介した宇都宮頼綱の師匠であり、その宇都宮氏の招きによって證空聖人が何度も関東に赴いているという点にあります。これはちょうど親鸞聖人が関東に居られる時です。残念ながら本書では親鸞との接点は語られませんでしたが、直接的な接点はなくとももしかすると何らかの影響があったのではないかと想像してしまいます。

浄土真宗の枠内にいるとなかなか他宗派さんの教えや祖師達の生涯に触れる機会が限られてしまいますが、こうして證空上人の生涯や教えに触れることができて私としても非常に刺激的な読書になりました。ぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「菅田祐凖『西山證空上人とその思想』概要と感想~法然門下筆頭の弟子で西山派の祖。親鸞との接点は?」でした。

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西山證空上人とその思想 (Shibunkaku Works)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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