目次
長谷川公茂『円空 微笑みの謎』概要と感想~なぜか心惹かれる不思議な魅力!こんな仏像があったのか!!
今回ご紹介するのは2012年に新人物往来社より発行された『ビジュアル選書 円空 微笑みの謎』です。
早速この本について見ていきましょう。
「円空仏の微笑は人々に生きる喜びを与える微笑である」―哲学者梅原猛 生涯で十二万体の仏像を彫ることを志し、諸国を行脚しながら仏像を造り続けた仏師・円空。 彼の彫る独特の微笑みをたたえた仏像は円空仏と呼ばれ、現在五千体以上が確認されている。 近年、発見された『円空歌集』や『大般若経』添絵などの貴重な資料から、謎につつまれた円空の生涯が明らかになってきた。 本書は、円空研究第一人者である円空学会理事長の長谷川公茂氏が長年かけて追い続けた円空仏の貴重なカラー写真を多数掲載。 北は北海道から西は関西まで二百体超の円空仏を紹介している。さらに哲学者・梅原猛氏による特別寄稿も収録しており、まさに円空研究の決定版ともいえる一冊である。
Amazon商品ページより
円空(1632-1695)Wikipediaより
円空は1632年生まれの僧侶・彫刻家です。1632年といえばあのフェルメールと同い年になります。
あわせて読みたい
(17)フェルメールの故郷を訪ねて~デルフトの眺望のモデルはここ!顕微鏡で有名なレーウェンフックと...
フェルメールは生涯のほとんどをこの町で暮らし、数々の名画を生み出しました。そんなデルフトには今も残るゆかりの地がいくつもあります。
また、フェルメールと全く同じ1632年にこの町で生まれたもう一人の天才レーウェンフックについてもこの記事でお話しします。顕微鏡で微生物を発見したことで有名な彼とフェルメールはご近所さんでした。レンズを通して「見えない世界」を探究した二人の偉人の存在には驚くしかありません。
フェルメールは私も大好きな画家でしたので円空が1632年生まれということを知り、嬉しい驚きがありました。
さて、この円空ですが、彼が有名になったきっかけは何と言ってもその仏像にあります。
Amazon商品ページより
この本の表紙にありますように、何とも味わい深い微笑みが円空仏の特徴です。
Amazon商品ページより
Amazon商品ページより
この本を読んで私もその魅力にすっかり引き込まれてしまいました。その表情だけでなくおよそ仏像に向かないような木の切れ端が見事な仏像に変身する神秘にも驚かされました。「こんな仏像が日本にあったのか!」この一言に尽きます。
私は最近日本の仏教美術を学ぶ中で、特に運慶の仏像に心が惹かれていました。
興福寺HPのスクリーンショット
信仰心の表れと写実性の極みと言える運慶の作品に私は強く惹かれるものがあったのですが、今回円空の作品を見てハッとさせられるものがありました。「写実性だけが仏像なのではない」ということを円空仏から教わったように思えます。
写実性からほど遠い円空の仏像ですが、そこから感じられる宗教性、精神性は驚くべきものがあります。もはや言葉では表せない何かがそこにあります。写真を見ただけでこうなのですから実物を見たらどうなるのでしょうか。私はそんな思いでいっぱいになりました。
本書ではそんな円空の生涯と作風の特徴がわかりやすく解説されています。写真も豊富で円空の素晴らしい仏像をたくさん見ることができます。また、著者の思いもこの本には多く書かれていますので、読み物としても非常に興味深く読むことができました。
仏像とは何かということを考える上でも本書はとても刺激的な作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「長谷川公茂『円空 微笑みの謎』概要と感想~なぜか心惹かれる不思議な魅力!こんな仏像があったのか!!」でした。
Amazon商品ページはこちら
円空 微笑みの謎
次の記事はこちら
あわせて読みたい
多川俊映『蘇る天平の夢 興福寺中金堂再建まで。25年の歩み』あらすじと感想~興福寺参拝におすすめの解...
本書は日本を代表する古寺興福寺の苦難の歴史とその復活を学べるおすすめ参考書です。
興福寺といえば阿修羅像などの仏像が有名ですが、本書は興福寺そのものの復活の歴史を知れるおすすめ作品です。
前の記事はこちら
あわせて読みたい
金子啓明『もっと知りたい興福寺の仏たち』概要と感想~お寺巡りにおすすめのガイドブックシリーズ!
東京美術さんのこのシリーズは内容が濃いながらコンパクトに絵画を学んでいけるのでとてもおすすめです。
本書でも興福寺の歴史やその仏像の由来や特徴、魅力がわかりやすく解説されます。写真も実に素晴らしいです。
関連記事
あわせて読みたい
佐々木香輔『快慶作品集』概要と感想~快慶仏像のおすすめ写真集!美の極致!光の芸術についての解説も...
この本では快慶の仏像を様々な角度から楽しむことができます。正面からの全体写真はもちろん、写真家佐々木香輔氏のこだわりのアングルで快慶仏像を見ていくことができます。
後半のページでは比較もしやすいように快慶の作品が見開きで並べられていて快慶仏像の資料集としてもとても便利です。
あわせて読みたい
根立研介『もっと知りたい 慶派の仏たち』概要と感想~運慶快慶の仏像のおすすめガイドブック!
運慶仏像の写真集で何かいいものはないかと私は様々な本や写真集を手にしたのですが、結果的にこの本が私にとってはベストです。快慶に関しては後の記事でも紹介する『快慶作品集』という素晴らしい写真集があったのですが、運慶に関してはこの本が私のお気に入りです。
あわせて読みたい
金子啓明『運慶のまなざし 宗教彫刻のかたちと霊性』あらすじと感想~衝撃の名著!運慶にあのベルニーニ...
最高です。この本には参りました。まさに脳内スパーク。この本は仏教美術の本の中で最も感銘を受けた作品と言っても過言ではありません。
単に仏教美術だけの話ではなく、時代背景や運慶の人間性にも深く切り込む本書は素晴らしい名著です。
あわせて読みたい
杉本一樹『正倉院宝物 181点鑑賞ガイド』概要と感想~正倉院展のおすすめガイドブック!聖武天皇の繊細...
本書は奈良時代の至宝たる正倉院宝物を学ぶのにうってつけのガイドブックです。
この本では正倉院の所蔵の様々な物品をフルカラーで見ていくことができます。毎年10月下旬から11月上旬頃にかけて開かれる正倉院展のガイドブックとしても非常に役立つ一冊となっています。
あわせて読みたい
木本好信『奈良時代』概要と感想~奈良時代の政治の流れを知るのにおすすめの参考書
知っているようで知らない奈良時代の歴史を新たに学べる素晴らしい一冊です。参考図書も多数掲載されていますのでもっと奈良時代について学びたいという方にも有用です。