塚本善隆『世界の歴史4 唐とインド』あらすじと感想~切れ味抜群の語り口で楽しめる壮大な歴史物語!
塚本善隆『世界の歴史4 唐とインド』概要と感想~切れ味抜群の語り口で楽しめる壮大な歴史物語!
今回ご紹介するのは1974年に中央公論社より発行された塚本善隆編『世界の歴史4 唐とインド』です。
早速この本について見ていきましょう。
孔明の苦衷、竹林の七賢、シヴァ神と愛欲、李白と杜甫、玄宗と楊貴妃など、三国の戦乱から隋唐世界国家の成立まで、中国とインドにわたる七百年の壮大な歴史劇。
中央公論社、塚本善隆編集『世界の歴史4 唐とインド』裏表紙より
私がこの本を手に取ったのは中国、特に隋唐の歴史を知りたかったからなのですが、本書を読んで驚きました。上の本紹介にもありますように、この本では中国のみならずインドの歴史まで語られるのです。中国だけでもとてつもないスケールの歴史がありますがそこにあのインドまでやってくるのですからもうお腹いっぱいです。これはすごい本です。
そして何より、著者の語り口も切れ味抜群でものすごく面白いです。文庫本で450ページ超というなかなかの大ボリュームですが、すいすい読むことができました。
その中でも特に印象に残っている一節があります。それがこちらです。
幾億の人間がすむ大シナ、そこは聖人の古典、インドの仏典までむずかしい漢字でつまった聖典が無数にある。その文字、その古典を自在に駆使して美しい詩文が楽しまれる。それが世界にほこる高い中華の文化である。しかしそれをわが物とする人々は、幾億のなかのきわめて少数である。そしてその少数者は独裁君主に忠誠を誓って俸をうける官僚、天子の思召しにそむいては首があぶない連中である。そして人民の大部分、幾億の人民大衆は、勤勉柔順の美徳のなかに、無学のままで、詩文も古典もみずからのものとはせずに、ただただ苛敏のないよい天子様をと神仏の力にすがって生きている。こんな大きな中世のシナ社会を想像せられよ。そこには現代人では考えられないような異常事が横行していたのである。
中央公論社、塚本善隆編集『世界の歴史4 唐とインド』P364
「こんな大きな中世のシナ社会を想像せられよ。そこには現代人では考えられないような異常事が横行していたのである」
この言葉は私にグサリと刺さりました。
この言葉が語られるのは364ページのことです。つまり、それまでに三国時代から唐の成立までの中国の歴史を知った上でこの言葉と出会うことになります。
先ほども申しましたように、著者の語りは率直で切れ味抜群です。中国史の血なまぐさい歴史をこれでもかと見た後にこの言葉がやってくるのです。そう、まさに「現代人には考えられない異常事」!それをこの著者の言葉でハッとさせられることになります。なんと見事な語りだろうと私は震える思いでした。
また、この本を読んでさらに唐の歴史に興味を持つようになりました。高宗や玄宗など唐の皇帝だけでなく、則天武后や楊貴妃のことについてももっと知りたくなりました。この本は知的好奇心を刺激してくれる素晴らしい作品です。
ぜひぜひおすすめしたい名著です。これはいい本と出会いました。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「塚本善隆『世界の歴史4 唐とインド』~切れ味抜群の語り口で楽しめる壮大な歴史物語!」でした。
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