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『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』概要と感想~中国への仏教伝来について幅広く学ぶのにおすすめ!

新アジア仏教史06
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『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』概要と感想~中国への仏教伝来について幅広く学ぶのにおすすめ!

今回ご紹介するのは2010年に佼成出版社より発行された沖本克己、菅野博史編集『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』です。

早速この本について見ていきましょう。

中国では、インド伝来の仏教思想を「漢訳」(サンスクリット語から漢語に翻訳する)という形で受容しました。
そのことが、日本をはじめ東アジア全域への仏教伝播を可能にしたと言えます。その一方、目まぐるしく交替する歴代王朝においては、皇帝権力と仏法の摩擦、儒教・道教・仏教の三教にまつわる優劣論争が激化しました。
伝来から漢訳事業、三教論争の経緯を通じて、中国初期仏教の真実の姿を追います。

出版社からのコメント

本シリーズ中国編の幕開けに位置する1冊。ユーラシア大陸の交易路を盛んに往来した人びとの熱気がひしひしと伝わってきます。インド伝来の思想が徐々に中国的に変容してゆく様子や、仏教にまつわる数々の国家的大事件も詳しく解説。第1章では中国仏教のプロフィールとも言うべき“通史”を掲載。初歩から中国仏教を知りたい方にオススメです。 【目次】 【第1章】 中国の仏教  【第2章】 仏教伝来  【第3章】 東晋・南北朝の仏教の思想と実践  【第4章】 三教の衝突と融合  【第5章】 仏典漢訳史要略  【第6章】 経録と疑経  【第7章】 王法と仏法

Amazon商品紹介ページより

敦煌の莫高窟 Wikipediaより

前回の記事で紹介した『新アジア仏教史05 中央アジア 文明・文化の交差点』では、インドから中国へ仏教が伝わる過程にあった中央アジアを学ぶことになりましたが、本作『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』ではいよいよ中国における仏教へと突入していきます。

前回の記事でも出てきましたが、「仏教はインドで梱包されて中国に送り届けられたわけではない」という言葉の通り、仏教もその地その地の影響を受けながらインドから中国へと伝えられていきました。

そしてそれは中国に入ってからも同じです。中国に入った仏教は中国人からすると全く異質な存在です。その異質な存在をどう受容するかというのは非常に大きな問題です。

また、インドで生まれた仏教は当然中国語で書かれたものではありません。インドの言葉で書かれた仏教経典をどう中国人が訳したのかというのも非常に興味深いです。本書では安世高や鳩摩羅什、玄奘などの有名な訳経僧のエピソードやいかにして中国に仏教が受容されていったかを知ることができます。

元々あった中国思想がどのようにして仏教と混ざり合い、相互に影響を与え合ったかは非常に興味深いお話でした。

日本仏教を知る上でもこの中国における仏教伝来は非常に大きな意味を持ちます。『新アジア仏教史』シリーズはこれまで見てきたように幅広く仏教史を学べる作品です。今作も中国における仏教伝来を幅広く見ていきますので、中国仏教入門にとてもおすすめです。参考文献も豊富に掲載されていますので今後の学びにも非常に役立ちます。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『新アジア仏教史06 中国Ⅰ 南北朝 仏教の東伝と受容』~中国への仏教伝来について幅広く学ぶのにおすすめ!」でした。

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新アジア仏教史06 中国 I 南北朝 仏教の東伝と受容

新アジア仏教史06 中国 I 南北朝 仏教の東伝と受容

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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