福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』あらすじと感想~超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記
福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』概要と感想~超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記
今回ご紹介するのは2005年に音楽之友社より発行された福田弥著『作曲家◎人と作品 リスト』です。
早速この本について見ていきましょう。
超絶的な技巧と華麗な楽曲は人間の本質に迫るための手段にすぎなかった―大ヴィルトゥオーソとして近代ピアニズムをうち立て、音楽の宗教性と未来を志向した作曲家の生涯をたどる。
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これまで当ブログではリブリオ出版より出版されている「作曲家の物語シリーズ」を主に紹介してきました。
スメタナやワーグナーなどの伝記にも度々出てきたリスト。そのリストの伝記がこのシリーズになかったので、今回はこちらの伝記シリーズを手に取ってみたのですがこれも素晴らしい伝記でした。
フランツ・リストはハンガリー王国で生まれ、ドイツやオーストリアをはじめ、ヨーロッパ中で活躍したピアニスト、作曲家です。
YouTubeに辻井伸行さんがリストの曲を演奏している映像がありました。
リストは「超絶技巧」のピアニストとして有名です。
この伝記ではそんなリストの生涯と作品についてじっくりと見ていくことになります。
あとがきではこの本について次のように書かれています。
本書では、フランツ・リストの宗教観、音楽観、そして社会に対する彼の使命感を切り口として、最新の研究成果をふまえながら、彼の生涯と音楽活動にせまったつもりである。リストのピアニスト時代は比較的よく知られているものの、ヴァイマルの宮廷楽長時代以降の詳細は、一般にはあまり知られていないだろう。とくに宗教音楽に傾倒したローマ時代(一八六〇年代)以降は軽視されがちであるが、本書では、むしろ彼の宗教観・音楽観がよく表れている時代と位置づけ、この時代にもかなりのページを割いた。
リストの音楽活動の根底には、十代から続くキリスト教信仰があり、さらに彼はサン=シモン主義者やラムネーとの接触を通じて、芸術家は社会に貢献すべきであるという信念をもつに至った。彼の優れた交響詩、オラトリオ、宗教的作品はすべて、そうした彼の使命感をもとに理解されるべきである。彼の教育活動もまた同様である。同時代を生きたほとんどの音楽家たちと接触をもち、同世代・次世代の音楽家に対してリストは惜しみない援助をおくった。また多くのプレスが、生涯にわたってリストの動向をつねに注目し続けていたし、彼はさまざまなニュースを提供した。フランス、ドイツ、イタリア、ハンガリーなど、広範囲に及ぶ多様な活動―ピアニスト、指揮者、作曲家、教育者、著述家など―は、十九世紀の西洋音楽史のさまざまな問題と結びついており、「リストは十九世紀の音楽生活の縮図である」と言われるのも決して誇張ではないのである。
音楽之友社、福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』P235
この伝記では天才リストの精神的な苦悩についてもかなり語られます。
私生活の問題、家庭内の問題もそうですが、そこに宗教的な問題もリストが抱えていたというのは驚きでした。聖職者になろうとするまで信仰問題について思い詰めていたというのは意外でした。
この本はそんな彼の伝記に加えて、巻末には作品解説まで収録されています。リストの曲の特徴までじっくり学べるのでこの伝記はおすすめです。
以上、「『作曲家◎人と作品 リスト』超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記」でした。
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