MENU

福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』あらすじと感想~超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記

目次

福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』概要と感想~超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記

今回ご紹介するのは2005年に音楽之友社より発行された福田弥著『作曲家◎人と作品 リスト』です。

早速この本について見ていきましょう。

超絶的な技巧と華麗な楽曲は人間の本質に迫るための手段にすぎなかった―大ヴィルトゥオーソとして近代ピアニズムをうち立て、音楽の宗教性と未来を志向した作曲家の生涯をたどる。


Amazon商品紹介ページより

これまで当ブログではリブリオ出版より出版されている「作曲家の物語シリーズ」を主に紹介してきました。

スメタナやワーグナーなどの伝記にも度々出てきたリスト。そのリストの伝記がこのシリーズになかったので、今回はこちらの伝記シリーズを手に取ってみたのですがこれも素晴らしい伝記でした。

フランツ・リスト(1811-1886)Wikipediaより

フランツ・リストはハンガリー王国で生まれ、ドイツやオーストリアをはじめ、ヨーロッパ中で活躍したピアニスト、作曲家です。

YouTubeに辻井伸行さんがリストの曲を演奏している映像がありました。

リストは「超絶技巧」のピアニストとして有名です。

この伝記ではそんなリストの生涯と作品についてじっくりと見ていくことになります。

あとがきではこの本について次のように書かれています。

本書では、フランツ・リストの宗教観、音楽観、そして社会に対する彼の使命感を切り口として、最新の研究成果をふまえながら、彼の生涯と音楽活動にせまったつもりである。リストのピアニスト時代は比較的よく知られているものの、ヴァイマルの宮廷楽長時代以降の詳細は、一般にはあまり知られていないだろう。とくに宗教音楽に傾倒したローマ時代(一八六〇年代)以降は軽視されがちであるが、本書では、むしろ彼の宗教観・音楽観がよく表れている時代と位置づけ、この時代にもかなりのページを割いた。

リストの音楽活動の根底には、十代から続くキリスト教信仰があり、さらに彼はサン=シモン主義者やラムネーとの接触を通じて、芸術家は社会に貢献すべきであるという信念をもつに至った。彼の優れた交響詩、オラトリオ、宗教的作品はすべて、そうした彼の使命感をもとに理解されるべきである。彼の教育活動もまた同様である。同時代を生きたほとんどの音楽家たちと接触をもち、同世代・次世代の音楽家に対してリストは惜しみない援助をおくった。また多くのプレスが、生涯にわたってリストの動向をつねに注目し続けていたし、彼はさまざまなニュースを提供した。フランス、ドイツ、イタリア、ハンガリーなど、広範囲に及ぶ多様な活動―ピアニスト、指揮者、作曲家、教育者、著述家など―は、十九世紀の西洋音楽史のさまざまな問題と結びついており、「リストは十九世紀の音楽生活の縮図である」と言われるのも決して誇張ではないのである。


音楽之友社、福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』P235

この伝記では天才リストの精神的な苦悩についてもかなり語られます。

私生活の問題、家庭内の問題もそうですが、そこに宗教的な問題もリストが抱えていたというのは驚きでした。聖職者になろうとするまで信仰問題について思い詰めていたというのは意外でした。

この本はそんな彼の伝記に加えて、巻末には作品解説まで収録されています。リストの曲の特徴までじっくり学べるのでこの伝記はおすすめです。

以上、「『作曲家◎人と作品 リスト』超絶技巧で有名なピアニストの生涯を知るのにおすすめの伝記」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

リスト (作曲家・人と作品シリーズ)

リスト (作曲家・人と作品シリーズ)

前の記事はこちら

あわせて読みたい
矢羽々崇『「歓喜に寄せて」の物語〔改訂版〕』あらすじと感想~年末恒例のベートーヴェンの『第九』の... ベートーヴェンがこの曲を生み出した背景には何があったのか。そして同時代人たちはその時何を思い、どんなことをしていたのか。 これは私にとって非常に興味深いものがありました。また、これほどシラーについて詳しく書かれている本はかなり貴重です。 私も生でベートーヴェンの『第九』を聴きたくなりました。

関連記事

あわせて読みたい
ひのまどか「作曲家の物語シリーズ」20作品一覧~クラシック入門のおすすめ本!時代背景と文化も学べ... こんなに面白い伝記作品たちに出会えて私は幸せです! 歴史に残る大音楽家たちの人生を当時の時代背景と共に学べる最高の伝記です。 著者のひのまどかさんの圧倒的な語りにはただただ脱帽です。衝撃の面白さです! クラシック音楽に縁のなかった人こそぜひ読んでみて下さい!私もこの作品を通してはじめてクラシックとつながることができました!
あわせて読みたい
ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』あらすじと感想~ナチスに抹殺された天才ユダヤ... これまで作曲家の物語シリーズをひたすら読んできたわけですが、正直、一番好きになったとも言える人物がこのメンデルスゾーンでした この伝記はあまりにドラマチックなメンデルスゾーンの生涯をひのまどかさん流の最高の語り口で堪能することができます。もうこれは読んで下さい!絶対に後悔しません!最高の読書体験になること請け合いです!
あわせて読みたい
ひのまどか『ショパン―わが心のポーランド』あらすじと感想~天才ピアノストの生涯を知るのにおすすめの... ショパンがポーランドの有名なピアニストということは知っていましたがいざこの方がどんな生涯を送ったのかということは正直ほとんど知りませんでした。 この伝記はそんなショパンの生涯や人となりを知る上で最高の1冊です。読んでいて驚くような事実がたくさん出てきます。特にフランスの女流作家ジョルジュ・サンドとの関係は衝撃でした
あわせて読みたい
ひのまどか『スメタナ―音楽はチェコ人の命!』あらすじと感想~『モルダウ』で有名なチェコ音楽家のおす... この伝記は非常におすすめです。本紹介に「全6曲の『わが祖国』をはじめ、耳の病に苦しみつつも大きな成功を得たスメタナの前向きな生きる姿を感動的に描く」とありますように実際私もうるっと来てしまいました。これは素晴らしい伝記です。ぜひぜひ読んで頂きたい逸品です!この本に出会えて本当によかった!!最高です!!
あわせて読みたい
ひのまどか『ワーグナー―バイロイトの長い坂道』あらすじと感想~ワーグナーの生涯を知るのにおすすめの... ワーグナーの参考書は以前当ブログでも「樋口裕一『ヴァーグナー 西洋近代の黄昏』ワーグナーの特徴を知るためのおすすめ参考書!」の記事で紹介しましたが、『ヴァーグナー 西洋近代の黄昏』は彼の思想的な面がメインとなっていますので生涯を学ぶとなれば今回ご紹介するひのまどか著の『ワーグナー―バイロイトの長い坂道』がおすすめです。
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次