宮本直美『コンサートという舞台装置』あらすじと感想~オペラとクラシックコンサートの成り立ちを知れるおすすめの一冊!
オペラとクラシックコンサートの成り立ちを知れるおすすめの一冊!宮本直美『コンサートという舞台装置 交響曲とオペラのヨーロッパ時代』概要と感想
今回ご紹介するのは2016年に岩波書店より発行された宮本直美著『コンサートという舞台装置 交響曲とオペラのヨーロッパ時代』です。
早速この本について見ていきましょう。
現在の演奏会の姿はどのように形づくられたのか。従来の声楽優位に代わって交響曲を中心とする器楽演奏がクラシック・コンサートのメインとなったのはいつどのような理由によるのか。器楽優位を支える論理の発生やオペラ(歌劇)の変容、演奏者や聴衆(消費者)の変化など、近代の文化装置としてのコンサートとそれを取り巻く諸要素を、ヨーロッパ全域にわたり歴史的に分析する。
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クラシック音楽のコンサートといえば、バッハやモーツァルト、ベートーヴェンなどの大作曲家の交響曲を聴衆が黙って聴き、演奏が終われば大拍手で終えるというのが私たちのイメージだと思います。
しかし、そもそもこうしたクラシックコンサートが定着したのは割と最近の話であることを著者は指摘します。
この本ではクラシック音楽のコンサートはそもそもどのようにして始まったのか、また「交響曲を聴くという行為」に込められた意味がどのようにして変遷していったかということを解説していきます。
この本は私達が「当たり前のように」聴いたり、足を運ぶクラシック音楽の「そもそも音楽とは何なのか」という点を明らかにしてくれる快著です。目から鱗の事実がどんどん出てきます。
今となってはクラシック音楽は芸術として確固たる地位を占めていますが、かつてはオペラが大人気であり、交響曲だけでは人も集められないような状況でした。そのため、交響曲は人気のオペラ曲の添え物として演奏プログラムに組み込まれていたそうです。
交響曲は最初から確固たる人気があったわけでもなく、今のように「真面目に」聴かれるようなものでもありませんでした。
それよりも人々は気楽に楽しめるオペラに熱中し、興行的にも圧倒的にそちらが中心となっていた事実。
なぜかつての音楽家たちが必死にオペラを作曲しようとしていたのか、それは明らかに収入がよかったことと、人々の中で最も人気がある音楽分野だったからです。
そんな中で交響曲がじわじわと存在感を増していったのはなぜなのでしょうか。芸術として優れていたことが人々にも伝わるようになったからでしょうか。たしかにそういう面もあったでしょうが、実は単に音楽的な理由だけによるものではなかったのです。そこには当時の時代背景が強烈に関わっていたのでありました。
そうしたヨーロッパの時代背景と音楽のつながりを見ていくこの作品は非常に刺激的でした。音楽がどのように時代精神、思想、文化と繋がっていくのかを知れてものすごく面白かったです。
クラシック音楽とはそもそも何なのか。コンサートという仕組みはそもそもどういう成り立ちで生まれてきたのか、またそこに込められた意味合いはどういうものなのか。社会の歴史、文化、思想とどのようなつながりがあるのか。こうしたことを広い視野で見ていけるこの作品はとても面白い1冊でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
以上、「宮本直美『コンサートという舞台装置 交響曲とオペラのヨーロッパ時代』オペラとクラシックコンサートの成り立ちを知れるおすすめの一冊!」でした。
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コンサートという文化装置――交響曲とオペラのヨーロッパ近代 (岩波現代全書 85)
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