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ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』あらすじと感想~ウィーンのワルツ王のおすすめ伝記!

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ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』あらすじと感想~ウィーンのワルツ王のおすすめ伝記!

今回ご紹介するのは1998年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』です。

この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。

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クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。

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この作曲の物語シリーズについては巻末に以下のように述べられています。

児童書では初めての音楽家による全巻現地取材

読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。

リブリオ出版、ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」喜びと悲しみ』

一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。

ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。

さて、今作の主人公はウィーンのワルツ王ヨハン・シュトラウスです。

ヨハン・シュトラウス(1825-1899)Wikipediaより

ヨハン・シュトラウスは上の動画にありますように『美しく青きドナウ』で有名ですね。

そしていつもお世話になっているこの動画ですが、やはり面白い!ヨハン・シュトラウスの生涯や代表曲がこの動画でわかりやすく紹介されていますのでぜひご覧ください。

そしてこの伝記を読んで驚いたのはウィーンのワルツ熱でした。

ウィーンの人々は毎晩ダンス会場に出かけワルツを明け方まで踊っていたそうです。

しかもこの伝記によると当時のワルツは私達がイメージするようなお上品で優雅なダンスではなくかなり激しいものだったそうです。もはやスポーツレベルとのこと。かなりの速度で回転しながら踊っていたそうです。

一体どんな雰囲気で踊っていたのか、私も気になりYoutubeで探してみたところ興味深い動画を見つけました。それがこちらです。

これはなかなかの衝撃です。思わず少し笑ってしまいました。かなり激しいです。きっと当時もこんな感じか、あるいはもっと激しく踊っていたのでしょう。しかもそれを毎晩明け方まで!恐るべき体力です!

そしてそれの伴奏を毎日し続けていたヨハン・シュトラウスをはじめとした楽団たちの過酷な労働実態。それもこの伝記を読んで非常に興味深く感じたものでした。

こういう文化があったからこそあの有名な「会議は踊る、されど進まず」という名言が生まれてきたのだなとつくづく感じました。1814年にナポレオン戦争が終結し、その講和会議であるウィーン会議を揶揄したこの言葉ですが、これは思わず「う~ん、なんとうまいこと言ったものか」と唸ってしまいました。

そしてヨハン・シュトラウスとロシアの深い関係もドストエフスキーを学んでいる私からするととても興味をそそられるものでした。ロシア人もこうした明るいダンス音楽を好んでいたということも知れてよかったです。こうした音楽についてドストエフスキーはどう感じていたのだろうかということも気になってきました。いずれ調べてみたいと思います。

さて、最後に著者のひのまどか氏のあとがきを見ていきたいと思います。

昔私はワルツのスッチャッチャを弾かされるのが嫌でたまらなかった。言うまでもなく三拍子の伴奏パートのことだが、ヨハン・シュトラウスの作品のコンサートでセカンド・ヴァイオリンに座ると、ほとんどこのリズムばかり担当することになる。しかしウィンナ・ワルツの本当の味は、このスッチャッチャで決まると言ってもいい。指揮者の方々はこれをウィーン風にするコツを「二拍目を心持ち急いて、三拍目を心持ち遅れて」などと説明していたが、それだけでは到底ウィンナ・ワルツになっていたとは思えない。もともと三拍子はヨーロッパの騎馬民族の生活から生まれたリズムであり、それが枠に享楽的になったのがワルツなのだから、われわれの日常の感覚からかなり離れたところにある訳だ。

さらに日本人がヨハン・シュトラウスを演奏する際に欠けていると思うのは、ジェスチャーである。いかに美しく正確に弾いても何か足りなくて聴く人に楽しさが伝わらない。

演奏しながら笑いつづけろというのではないが、やはり演奏者が心から楽しみ踊り出したい位の気持でいないと、きき手も楽しまないだろう。このあたりの雰囲気作りは、さすがにウイーンの演奏家たちは堂に入っている。たとえば名門ウィーン・フィルの奏者たちも、べートーヴェンやブラームスを演奏する時とワルツ、ポルカを演奏する時では表情から一変して、心底リラックスし、楽しんでいるのが視覚からも伝わってくる。音楽は日頃の生活習慣を反映していると痛感するのはこういう時で、その意味でヨハン・シュトラウスの演奏はわれわれの思う以上に日本人にとって難しいのではないだろうか。

ところで、ウィーンに行って意外に思ったことがある。これだけヨハン・シュトラウスの音楽が街中に溢れているというのに、彼に関する資料が非常に少ないのだ。楽譜や音楽書をそろえていることで有名な音楽店ドブリンガーに行っても「ワルツ王」の本はほんの数冊だった。ほかの大作曲家の伝記・研究書の量とは比較にもならない。作品、生涯両面でもっと研究対象になっていいと思えるのだが、やはり娯楽性の高い音楽を書いていたということで音楽学者たちから軽し扱われているのだろうか。私個人の意見としては、ヨハン・シュトラウスは親子・兄弟・社会との葛藤を乗り越えて人間的にも音楽的にも常に向上しつづけた「努力の人」だと思う。音楽で人を楽しませ、喜ばせ、笑わせるというのは、その逆よりも数倍困難なものだ。

ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカについては、何の解説も必要としないだろう。タイトルを知っただけで、文句なしに楽しめる。オぺレッタについては、上質の大人の笑いが盛り込まれていると強調したい。こうした成熟した大人の文化も、日本にはなかなか育たない。大人の遊び方やその作法をヨハン・シュトラウスのオぺレッタは教えてくれているのだが……。

リブリオ出版、ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』P233-235

演奏家ならではの視点から語られるワルツの話で面白いですよね。

この伝記はそんなワルツ王ヨハン・シュトラウスの波乱万丈の生涯を楽しく学べる素晴らしい伝記です。当時のウィーンの様子が目の前に現れてくるようでとても読みやすいです。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「ひのまどか『ヨハン・シュトラウス―「ワルツ王」の喜びと悲しみ』ウィーンのワルツ王のおすすめ伝記!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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