ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』あらすじと感想~ドイツの大作曲家のおすすめ伝記!
ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』あらすじと感想~バッハ・ベートーヴェンと並ぶドイツの大作曲家のおすすめ伝記!
今回ご紹介するのは1985年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『ブラームス―「人はみな草のごとく」』です。私が読んだのは1999年第10刷版です。
この作品は「作曲家の物語シリーズ」の第7巻目にあたります。このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。
クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。
この「作曲家の物語シリーズ」については巻末に以下のように述べられています。
児童書では初めての音楽家による全巻現地取材
読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。
リブリオ出版、ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』 1999年第10刷版
一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。
ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。
そして今回ご紹介する『ブラームス―「人はみな草のごとく」』もやはり素晴らしかったです。
ブラームスといえば『ブラームスの子守歌』で有名ですよね。
また、ブラームスは数々の交響曲を残しています。
こうした活躍から偉大なる音楽家バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの頭文字「B」をとって「ドイツ三B」とも呼ばれています。
ブラームスはドイツのハンブルグ生まれの作曲家です。彼は若き日に有名な作曲家シューマンと出会い、その後終生シューマン一家との深いつながりを持つことになります。それは彼の人生を決定づけた出会いでした。この伝記はそんな運命の出会いからスタートし、波乱万丈の人生を見ていくことになります。
ブラームスの伝記もこれまたものすごく面白かったです。ひのまどかさんの語り口の素晴らしさにはただただ脱帽です。私はもうすっかりファンになっています。もう憧れの域です。それほどひのまどかさんの語りは圧倒的です。子供向けの本とありますが、間違いなくどんな人が読んでも心打たれる作品です。この「作曲家の物語シリーズ」は本当に驚くべき作品群です。
では、最後にあとがきの言葉を見ていきましょう。
日本でもブラームスの四つの交響曲はべートーヴェンのものと同じ位人気があるし、レコードの売り上げも同じくだ。
ブラームスの音楽が持つ多面的な魅力が、その要因だと思う。
一面では映画音楽に用いられるほどロマンティックであり、別の面からみると複雑でとらえどころがなく、音楽的には転調につぐ転調が「暗い情熱」を維持している。
これがブラームスの音楽の大きな魅力で、ひとたびこの事に気づくと他の作曲家のものが単純すぎて物足りなくなる恐れがある。
ここに至って、私はブラームスの音楽と人間との共通性を感じないわけにはゆかない。
とっつきが悪く、物ごとの解決に人の何倍もの労力と時間をかけ、真実のみを尊重し、心の奥底に永遠のロマンを秘めた人間。
この物語を書きながら、私の中で形作られていったのは、最も男性的な優しさを持つ人間像であり、その寡黙さや思慮深さにより、人からは頑固と誤解されつづけた人間だった。
周囲を見ると、稀にそうした人がいるものである。
さてブラームスの作品に関しては、私は「どうぞきいて下さい」とお願いすることは必要ないように思う。だれもが青春時代のどこかで彼の音楽に出会うという気が強くするし、その出会いはそのままつづく友情に変わるだろう。ブラームスの音楽の持つロマンが、若者の心をとらえて離さないに違いない。
願わくばこの本を、既刊ワーグナー物語『バイロイトの長い坂道』と読み合わせていただけたらと思う。十九世紀半ばのヨーロッパで展開されたロマン派の作曲家たちの華やかな交友関係がワーグナーの側からもご覧いただけて、音楽を二倍楽しめるのではないだろうか!
リブリオ出版、ひのまどか『ブラームス―「人はみな草のごとく」』 1999年第10刷版 P276-277
この伝記を読んで偉大な作曲シューマン、そしてその妻クララ・シューマンのことにもとても興味が湧きました。クララ・シューマンは世界初の女流ピアニストとして名を馳せた人物です。この人物とブラームスの関係は非常に興味深かったです。
また、上の引用にもありましたようにワーグナーとのつながりや超絶技巧でお馴染みのピアニスト、リストとの関係も面白かったです。
このシリーズは沼です。一度はまってしまったら抜け出せません。どんどんどんどん興味の幅が広がり、読みたい本が増えていきます。そして何より、クラシックを聴きたくなる!
今CDをどんどん借りて聴き込んでいます。こんなにクラシックっていいものだったのかと今さらながら驚いています。
そんな音楽の楽しさも知れる素晴らしい伝記です。非常におすすめです。
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