クラクフ聖マリア教会の高層建築と鳴り響くラッパの音 ポーランド編③
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クラクフ旧市街のシンボル、聖マリア教会②~高層建築と鳴り響くラッパの音 僧侶上田隆弘の世界一周記―ポーランド編③
前回の記事に引き続き、クラクフ旧市街の聖マリア教会について、もう少し考えていこう。
改めて紹介するが、この教会は1222年に建てられ、塔の高さは82mにもなる堂々たる建築だ。
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「まずは街に入ったら一番高い建物を探しなさい。
その建物が街で一番大切にされている価値観を表します。」
そんなことをどこかで聞いたことがある。
旧市街で最も高い建物はこの聖マリア教会。
そしてこの教会を中心にして広場は作られ、それを囲むようにこの街は作られている。
中世のクラクフにおいては、この聖マリア教会こそが最も大切にされていた「価値観」を提供するものだったのだろう。
つまり、「キリスト教の教え」ということだ。
では、現代の日本ではどんな建物が一番高いのか。
考えてみると、テレビ塔だったりビジネスビルといったところだろうか。
となると、「経済」がぼく達の住む現代日本では最も大切な価値観ということになりそうだ。
ちなみにかつての日本では大きなお寺や仏塔が一番背の高い建物だった。
奈良の東大寺や京都の東寺五重塔など、ぼく達にも馴染みの深い建造物だ。
それがいつしか天守閣を具えたお城に変わり、現代ではビジネスビルに様変わりしていくのだ。
背の高い建物を見るだけで世の中の力の流れを知ることができる。
お寺は仏教、お城は武力、ビジネスビルは経済。
大雑把な見方ではあるが、「建物」という視点から歴史を見ていくのも興味深い。
さて、82mもあるこの聖マリア教会の塔、前もって予約すればそこに上ることができる。
というわけでぼくも4時間後に空きがあったので、その時間に合わせてまた戻ってくることにした。
塔の下の小さな入り口からひたすら階段を上っていく。
他の参加者も息が上がっている。ぼくも足がぱんぱんだ。
すると、外の景色が見渡せるスペースにようやくたどり着く。
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そこからは旧市街の広場を一望することができた。
かつてはここから敵の襲来を監視し、敵襲に備えていたということらしい。
それに伴って、クラクフ名物のラッパの物語がある。
かつてモンゴル軍がこのクラクフまで押し寄せてきた時に、敵襲を告げるラッパの音をここから吹き鳴らした。
しかし、モンゴル兵がこの哀れなラッパ吹きを弓矢で射抜いてしまい、彼はそのまま息を引き取ることになる。
その出来事を悼んで、今でも1時間ごとにこの塔からラッパの音を吹き鳴らすというのが伝統になっている。
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実際にその時間に塔の前で待ち構えてみると、たしかにラッパの音が聞こえてくるではないか。
どこからかと探してみると、塔の上部の窓が開いていて、そこからラッパが見える。
これがクラクフ名物のラッパの音色である。
ラッパの物語もさることながら、ぼくからすればモンゴル軍がこんな東欧の地まで押し寄せていたというのも驚きだった。
塔の上のスペースではおそらく今現在ラッパを吹くことを任されている方々の写真が飾られていた。
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きっとものすごく名誉な任務なのだろうと思う。
クラクフにお越しの際はぜひ、このラッパの音色に耳を傾けてみてはいかがだろうか。
続く
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