『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』概要と感想~平安末期から鎌倉時代への流れを深く学ぶのにおすすめ!

『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』概要と感想~平安末期から鎌倉時代への流れを深く学ぶのにおすすめ!
今回ご紹介するのは2022年に吉川弘文館より発行された元木泰雄、佐伯智広、横内裕人著『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』です。
早速この本について見ていきましょう。
貴族政権の内紛で勃発した保元・平治の乱を鎮めた平清盛は、後白河院を幽閉し平氏政権を樹立する。それが平氏と他勢力との分断を生み、源平争乱を惹き起す。荘園制の成立や仏教の展開にも触れ、空前の混乱期に迫る。
Amazon商品紹介ページより
本書『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』はそのタイトル通り、京都にスポットライトを当てて歴史の通史を見ていくシリーズの第二巻となっています。
本書の特徴について「刊行のことば」では次のように説かれています。
『京都の中世史』という新たな通史を刊行することとなった。
このタイトルには二つの意味が込められている。一つは、いうまでもなく、中世において京都という都市がたどった歴史である。
対象とする時代は、摂関政治の全盛期から始まり、院政と荘園領主権門の勃興、公武政権の併存、南北朝動乱と室町幕府、そして天下人の時代に至る、およそ六百年間の歴史である。その間、京都は政治・経済・文化の中心として繁栄したが、一方で源平争乱、南北朝の動乱、そして応仁の乱と再三の戦乱を経験し、放火、略奪の惨禍を蒙ってきた。
為政者の変化と連動した都市構造の変容、文化の受容と発展、そして戦禍を乗り越え脱皮してゆく京都の姿を描いてゆく。また、中世考古学の成果を導入することが本シリーズの大きな特徴となる。これによって、斬新な中世都市京都の姿を明らかにするとともに、現代への影響にも言及することにしたい。
もう一つの意味は、中世日本の首都としての京都の歴史である。京都は中世を通して、つねに全国に対し政治・経済・文化の諸分野で大きな影響を与え、同時に地方の動きも京都に波及していた。京都と各地域の歴史とは、密接に連動するのである。
中世における京都の役割、地方との関係を検証することで、ややもすれば東国偏重、あるいは地域完結的な見方に陥りがちであった、従来の中世史研究を乗り越えたい。そして、日本全体を俯瞰する視点を確立することで、新たな日本中世史像の構築を目指している。
以上のように、このシリーズは、最新の成果に基づいて京都の歴史を描くとともに、京都を中心として、日本中世史を捉え直すことを企図するものである。
吉川弘文館、元木泰雄、佐伯智広、横内裕人著『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』P3-4
著者が「中世における京都の役割、地方との関係を検証することで、ややもすれば東国偏重、あるいは地域完結的な見方に陥りがちであった、従来の中世史研究を乗り越えたい。」と述べるように、本書では従来の関東偏重の京都観とは異なる目線で歴史を追っていきます。
本書がカバーする平安末期から鎌倉時代までは次々と政権を担う権力者が入れ替わります。特に保元の乱、平時の乱では藤原氏だけでもかなり多くの人物が出てきますし、平氏源氏も同じ一族内で分かれて戦うことになりました。この複雑な歴史の流れを本書ではわかりやすく学ぶことができます。
以前当ブログでも紹介した元木泰雄著『平清盛と後白河院』もこの時代を扱った素晴らしい参考書でしたが、合わせて本書も読まれることでさらに多角的にこの時代を見ていくことができます。
また、本書では比叡山の僧兵による強訴と京都の関係も詳しく見ていくことになります。親鸞聖人がおられた時代の比叡山事情に関心があった私にとってこれは実にありがたい情報でした。これも京都にスポットを当てた本書らしい記述となっています。
ぜひ元木泰雄著『平清盛と後白河院』とセットでおすすめしたい作品です。
以上、「『京都の中世史2 平氏政権と源平争乱』概要と感想~平安末期から鎌倉時代への流れを深く学ぶのにおすすめ!」でした。
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