今堀太逸『浄土宗の展開と総本山知恩院』概要と感想~知恩院側から見た親鸞や浄土真宗を知るのにおすすめ

今堀太逸『浄土宗の展開と総本山知恩院』概要と感想~知恩院側から見た親鸞や浄土真宗を知るのにおすすめ
今回ご紹介するのは2018年に法藏館より発行された今堀太逸著『浄土宗の展開と総本山知恩院』です。
早速この本について見ていきましょう。
死が身近にあった前近代、僧侶の言葉には力があった。その教えを信じぬくことで、人々は老病死苦と向かい合い、安らかな死を迎えた。浄土宗と知恩院の歴史の考察を通して明らかにする、信仰者の目からみた“日本人の仏教史”。
Amazon商品紹介ページより

本書『浄土宗の展開と総本山知恩院』は書名通り、知恩院の歴史を知るのにおすすめの参考書です。
そして浄土真宗の僧侶である私にとってこの本は非常に興味深いものがありました。
と言いますのも、本書では知恩院側から見た親鸞聖人や浄土真宗について書かれていたからです。
「それの何が興味深いの?」と思われるかもしれませんが、私達真宗僧侶からするとこれが本当に貴重なのです。浄土真宗の僧侶は当然ながら真宗の勉強をする時には真宗側のテキストで学びます。そこであえて浄土宗さんのテキストを使うことはほとんどありません。私自身、浄土宗さんの教えにはずっと興味を持っていたのですが、なかなか学ぶ機会がありませんでした。
そんな中本書ではいくつもの章を使って親鸞について記述しています。これは貴重です。私にとってこれはありがたいものがありました。
そして興味深かったのが浄土真宗の本願寺の伝承よりも高田派専修寺の伝承を重んじている点でした。この本では基本的に専修寺の流れから親鸞を捉えています。そして「法然ー親鸞ー親鸞の直弟子」、つまり法然の念仏を継承している点を評価しているようです。本願寺と専修寺では同じ親鸞でも、その伝承がかなり異なります。知恩院さん側が専修寺系の伝承を採用しているというのは私にとっても興味深いことでありました。
また、本書では東大寺再建の立役者重源と法然の関係性についても説かれます。
このことについては以前当ブログでも紹介した五味文彦著『大仏再建 中世民衆の熱狂』でもお話ししました。

本書『浄土宗の展開と総本山知恩院』でもこの二人の関係性について多くのページを割いて語られるのですが、上の『大仏再建 中世民衆の熱狂』とは異なる見解が説かれています。あくまで「知恩院側の伝承として重源と法然をこう見ている」ということで私は受け止めようと思います。
いずれにせよ、本書では知恩院側から見た法然、親鸞、重源の姿や知恩院そのものの歴史を知ることができます。
私達真宗僧侶がなかなかアクセスできない視点で語られる内容は実に刺激的でした。浄土宗について知りたい真宗僧侶の方にもぜひぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「今堀太逸『浄土宗の展開と総本山知恩院』概要と感想~知恩院側から見た親鸞や浄土真宗を知るのにおすすめ」でした。
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