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板野博行『眠れないほどおもしろい平家物語』あらすじと感想~『平家物語』の入門書としておすすめ!

平家物語
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板野博行『眠れないほどおもしろい平家物語』あらすじと感想~『平家物語』の入門書としておすすめ!

今回ご紹介するのは2021年に三笠書房より発行された板野博行著『眠れないほどおもしろい平家物語』です。

早速この本について見ていきましょう。

古典ロマンシリーズ30万部突破!
平家の栄華、そして没落までを鮮やかに描く
超ド級・栄枯盛衰エンタメ物語!

ラフカディオ・ハーンの『怪談』に登場する、
あの盲目の琵琶法師「耳なし芳一」が案内役!
面白く、わかりやすく紹介していきます!

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
この超有名な一文から始まる「平家物語」。
そこには、熾烈な権力闘争あり、渦巻く権謀術数あり。
哀しい恋の物語も、イケメン貴公子のBLネタも……。
運命のままに滅びゆく人々の壮絶な「生きざま」「死にざま」が
ここに詰まっているのです。
板野博行

Amazon商品紹介ページより
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本書『眠れないほどおもしろい平家物語』は『平家物語』を読む前の入門書として最高におすすめな一冊です。

そして著者の板野博行氏は私にとってもご縁のあるお方であります。そのご縁は何と言ってもこちらです。

古文単語ゴロ565 増補改訂版 CDなし

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板野先生は有名な塾講師であり、私も受験生の時に先生の参考書には大変お世話になっていました。特にこのゴロ565(ゴロゴロゴ)はもう擦り切れるほど読み返して暗記したものです。

そんな古文指導のスペシャリストたる板野先生による『平家物語』なのですから、これはもう面白くてわかりやすいに決まっている!そう思い私はこの本を手に取ったのでありました。

そしてその予想は大当たり。本書は『平家物語』入門として実にわかりやすい解説書となっています。

読んでみてすぐに感じたのがその読みやすさです。古典というと苦手意識を持たれている方も多いかもしれませんが、板野先生はそんな方でも親しみやすく読めるように工夫して解説して下さります。上の商品紹介画像にもありますように、私達にも親しみやすい切り口で『平家物語』を語ってくれます。

登場人物ごとにわかりやすい解説もなされていくので、すっきり流れを学んでいくこともできます。この流れをうまく掴めるかどうかが古典の生命線です。それをここまでわかりやすくサポートしてくれるのはもうさすがとしか言いようがありません。やはりカリスマ塾講師というのはそれだけ凄まじいお方なのだなと改めて実感しました。

最後に、本書のあとがきで『平家物語』に対する板野先生の思いが語られていましたのでぜひここに紹介したいと思います。なぜ私達は『平家物語』を読むべきなのか、そのことについて考えさせられる素晴らしい文章です。少し長くなりますがじっくり読んでいきましょう。

この本を書き終わった今、つくづく思うことがあります。

『平家物語』は、今こそ読まれるべき古典、今この時代だからこそ読んでほしい本であると。

どう生きるべきかについて確固たる指針をなくし、心の拠り所を失ってしまった今の世の中は、不思議なことに『平家物語』の世界観とシンクロするところがあります。

『平家物語』の舞台は平安時代末期、末法の到来を恐れる中で、貴族社会から武家社会へと移り変わろうとしていた、時代の変革期にあたります。天災や飢饉が続き、民衆が不安に駆られて厭世的になっていた当時、颯爽と現われた平清盛と平家一門は、絵に描いたような栄枯盛衰の物語を紡ぎます。

『平家物語』は「軍記物語」に分類されるので、血なまぐさい戦いの場面の描写が多いのは事実ですが、描かれている中心は「人間」です。個性あふれる平家一門の姿を通して、「どう生き、どう死ぬか」という人間の普遍的テーマをわかりやすくドラマ化し、見事な文体で描いているのが『平家物語』なのです。

前半の主人公にあたる平清盛が六十四歳、その嫡男重盛は四十二歳で亡くなっています。この二人は病死ですが、平家一門の多くは源平合戦の中、戦死したリ、刑死したり、自ら命を絶ったりしています。

宗盛三十九歳、知盛三十四歳、重衡二十九歳、維盛二十六歳、資盛二十五歳・・・。みなまだまだこれからという年齢です。

時代の波に翻弄され、命を絶たざるをえない運命を粛々と受け入れていく若き平家一門の姿を読み進むにつれ、胸がかきむしられるような悲しみに襲われます。

しかし同時に、生きている間に命を完全燃焼させることが、どれほど大切なのかを痛感させられるーこれが『平家物語』の神髄であり、だからこそ七百年以上もの間、読み継がれ、語リ継がれ、聞き継がれてきた傑作中の傑作だと納得させられるのです。

『平家物語』の主題である「無常」は、ただ滅びゆく者に対する哀惜や詠嘆ではなく、精一杯生きた人間としての証です。

常無きことは、ただの虚しさとは違う。か弱く儚い生き物である人間が、この常無き世にどう爪痕を残すのか、そのもだえ苦しむ姿を描いたのが『平家物語』であり、善悪や勝敗を超えた世界がそこにある。だからこそ読む者、聞く者を感動させるのです。

この本が、混沌とする今の世を生きるための一助となることを、心から願ってやみません。

三笠書房、板野博行『眠れないほどおもしろい平家物語』kindle版、「おわりに」より

いかがでしょうか。『平家物語』が読みたくなってきますよね。

私もこの後早速『平家物語』を読みましたが、この入門書を読んだおかげでかなり助けられました。せっかくなので現代語訳版ではなく原文のままで読み進めたのですが、さすがにこれを解説書なしで乗り切るのは厳しかったと思います。

それにしても、改めて『平家物語』を読んでなんと見事な作品かと驚かざるをえませんでした。そしてこの作品を貫く「諸行無常」の響き・・・。これは私が僧侶だからかもしれませんが、『平家物語』には仏教の香りがかなり濃く漂っています。そしてこの物語が日本人に愛され続けてきたというのは、やはり日本人の心に仏教の教えが染み込んでいたのではないかと思わざるをえませんでした。

武士だけでなく日本人の死生観を考える上でもこの『平家物語』は非常に大きな意味を持つことを再確認することになりました。

板野先生のこの入門書と出会えたことで『平家物語』をより深く楽しめたことは間違いありません。「『平家物語』を通読するのはちょっと・・・」という方でも、まずは平家物語の大まかな流れを知るだけでも十分だと思います。まずはその入り口を覗いてみることが大切です。そして本書はそんな初学者の方でも大いに楽しめる解説書となっています。まずは怖がらずに気楽に手に取ってみることをおすすめします。日本文化を考える上でも実に刺激的な一冊となっています。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「板野博行『眠れないほどおもしろい平家物語』あらすじと感想~『平家物語』の入門書としておすすめ!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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