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今井雅晴『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』概要と感想~関東での親鸞に対する先入観を破壊する刺激的な一冊!

親鸞の伝承と史実
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今井雅晴『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』概要と感想~関東での親鸞に対する先入観を破壊する刺激的な一冊!

今回ご紹介するのは2014年に法藏館より発行された今井雅晴著『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』です。

早速この本について見ていきましょう。

様々な伝承の中に、正しい親鸞理解からは荒唐無稽としか思えない内容のものがあるのはなぜか? 伝承の内容と特色、それを生んだ環境・歴史から、当時の人々の願いと救いを見ていく

Amazon商品紹介ページより

今作の著者今井雅晴氏は東国から見た親鸞聖人の歴史研究を行っていることで著名な研究者です。従来の親鸞研究では東西両本願寺の『御伝鈔』がベースとなっていましたが、それだけではなく他の宗派や地域の伝承や親鸞が流罪後長期にわたって滞在した関東(坂東)の地域事情に目を向けることを今井氏は提唱しています。

特に本書ではこのことについて次のように述べられています。少し長くなりますが今井氏の視点を知る上で非常に重要なポイントですのでじっくり読んでいきます。

親鸞が関東にいたのは六十歳のころまででした。その間、常陸国を中心にして念仏布教に努めました。そこに住む人々には環境に対応したさまざまな信仰があったはずです。また、その背景となるさまざまな生活と歴史もあったはずです。関東は、かつて浄土真宗の歴史で説かれていたような荒野でもなければ、念仏も知らない無知な人々が住む所でもありませんでした。その中で、親鸞は多くの信頼できる門弟たちを得ることができ、やがて京都へ帰って九十年の一生をまっとうしたことはよく知られているとおりです。

その後七百数十年、関東では親鸞に関するさまざまな伝承が生まれました。正しい親鸞理解からは荒唐無稽としか思えないような内容もあります。しかしそれらの伝承は、関東に住む人々が親鸞に求めた日常生活面の救いであったり、願いであったりした内容なのです。あえていえば、人々にとって必要なのは、正しい親鸞理解だけではなくともかくも生活を助ける親鸞だったのです。いわゆる他力とは異なりますが、万能の救い主を期待していたということでしょう。理論ではなく、情緒に訴える親鸞像を求めたのです。人々の心を大切にする親鸞像です。

第二次大戦後、情緒に訴える親鸞像は否定されました。それは古い社会から脱却して新しい社会を作ろうという風潮と結びついていました。経済的発展がもっとも大切にされました。そしてそれは達成されましたけれども、心の貧しさが広く日本社会を覆うようになリました。現在、その解決のために社会全体としていろいろな工夫がなされています。浄土真宗の世界でも、情緒に訴える親鸞像を否定しすぎた、という反省が生まれつつあります。すなわち、親鸞に関する伝承をもう一度掘り起こし、そこに親鸞の教えを維持してきた人たちの心を再確認しようという動きです。それが今日の心の貧困を解決する方向に結びつくのではないか、ということです。

本書執筆の目的は、第一に、親鸞が多くの人々と積極的に交際したに違いない関東で、どのような伝承が生まれたのかを明らかにすることです。その伝承の特色も明らかにしたいと思います。

しかしながら、では関東とはどのような所だったのか。どのような歴史と環境があったのか。従来の浄土真宗史の研究では、それらは必ずしも明らかではありませんでした。というより、ほとんど無視されていたといってもよいでしょう。「荒野」「無知な人々」という先入観念で済ませていたからです。でも、そうではありません。私は今まで機会あるごとに関東の実態を説いてきました。加えて本書では古代からの関東の歴史と環境を明らかにしました。その中での親鸞伝承の発生と維持ということだからです。歴史と環境を無視しては伝承の意味は語れません。

法藏館、今井雅晴『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』Pⅱーⅲ

ここで語られますように、親鸞が滞在した関東は田舎でも無知な人々がいる地域ではありませんでした。私もこの本を読んで驚きました。私も戦後真宗学の流れをそのまま受け取り、関東を田舎だと思い込んでいたことに痛烈な反省を感じました。この本を読めばわかりますが関東はむしろ京都と変わらぬ文化水準を要した人々が数多く存在し、強力な経済力を持った一大文化圏でもあったのです。

今井氏はこうした関東の実態を明らかにし、その上で親鸞の人物像や生涯に迫っていきます。

私もこの本を参考に最近関東の親鸞ゆかりの地を巡ってきました。

親鸞が滞在した稲田草庵があったとされる西念寺
板敷山山中、山伏の弁円の護摩壇跡
鹿島神宮

この本を読めば今まで想像もしていなかった親鸞像が見えてきます。そして関東に対する認識が確実に変わります。

私はこの本をきっかけに関東や坂東武者に関する認識ががらっと変わりました。

そしてその後関東や鎌倉武士に関する本を読んでいくにあたりそれは確信に変わりました。以前当ブログでも紹介した野口実著『北条時政』や桃崎有一郎著『武士の起源を解きあかす』はまさにドンピシャな参考書でした。これらの本も私達のイメージしがちな素朴で荒々しい坂東の世界とはまるで違う現実を見せてくれました。

本書『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』もとにかく刺激的な一冊です。浄土真宗関係者の方は特に度肝を抜かれることになると思います。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「今井雅晴『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』概要と感想~関東での親鸞に対する先入観を破壊する刺激的な一冊!」でした。

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親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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