MENU

大田由紀夫『銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀』概要と感想~貨幣経済が社会に及ぼすインパクトを知るのにおすすめの一冊!

銭躍る東シナ海
目次

大田由紀夫『銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀』概要と感想~貨幣経済が社会に及ぼすインパクトを知るのにおすすめの一冊!

今回ご紹介するのは2021年に講談社より発行された大田由紀夫著『銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀』です。

早速この本について見ていきましょう。

〈共進化する東アジア史を、貨幣という視点から捉える!〉

「ちかごろ北京城の内外で人々は贅沢を好み、貴賤を問わず、みな金襴や宝石を身に着け、服装がみずからの分限を甚だしく越え、どの宴席でもいつも盛りだくさんの料理や菓子などが並べられ……」
15世紀後半、明の都・北京では人びとが競って贅沢にふけるようになった。奢侈の風潮は、さらに朝鮮半島、そして日本列島にも伝播し、絹製品や陶磁器・金銀・珠玉などの「唐物」が東シナ海を盛んに行き交うこととなる。

大陸・半島・列島にわたる「贅沢の連鎖」はなぜ起こったのか?
それは単なる偶然ではなく、また各地域内の単一事象だけでも決して説明がつかない、世界史的事件であった!

Amazon商品紹介ページより

本書は15~16世紀日本の経済状況を東アジアにおける貨幣の流れから見ていく作品です。

鎌倉時代や室町・戦国時代は武士の時代というイメージが私達にはありますが、やはり経済も社会を回すには不可欠です。

浄土真宗開祖の親鸞聖人が活躍できたのも、本願寺教団の急成長もこうした経済面での変化と切り離すことはできません。

2500年前に仏教がインドで生まれた際も経済が急発展し新興商人が生まれた時代でした。中村元著『古代インド』ではそんな宗教と経済の関係が描かれています。新たな宗教や教団が急成長する時は宗教そのものだけに要因があるのではなく、政治経済などの外部要因が大きな要因となっていることが多々あります。本書では直接的には親鸞聖人や本願寺教団との関係性は説かれませんが、その時代背景を探るという意味では多くの示唆を受けることができる作品です。

15~16世紀は本願寺教団が急成長する時代です。そしてそれは本願寺教団だけでなく、日蓮宗教団も同じでした。この二つの教団の共通点としては急激に力を付け始めた新興商人階級が有力な支援者となっていた点です。これはまさに本書で語られる貨幣経済の転換点とも大いにつながってきます。

そうした意味でも本書を読むことは日本仏教史を考える上でも大きな意味があるのではないかと私は考えます。

中世の経済システムについては普段なかなか触れることのない話題ですので読んでいて「ほお、そういうことになっていたのか」という発見が満載の一冊でした。ぜひ皆さんも手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「大田由紀夫『銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀』概要と感想~貨幣経済が社会に及ぼすインパクトを知るのにおすすめの一冊!」でした。

Amazon商品紹介ページはこちら

銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀 (講談社選書メチエ 754)

銭躍る東シナ海 貨幣と贅沢の一五~一六世紀 (講談社選書メチエ 754)

前の記事はこちら

あわせて読みたい
村上隆『金・銀・銅の日本史』概要と感想~古代日本の金属加工の歴史や驚異の技術力を知るのにおすすめ! 本書は普段なかなか考えることのない貴金属の歴史を知れてとても刺激的な読書になりました。また「金属と仏教」という新たな視点を得られたことも私にとって実にありがたかったです。ぜひおすすめしたい一冊です。

関連記事

あわせて読みたい
下坂守『京を支配する山法師たち』概要と感想~比叡山と経済界の繋がりを知れる刺激的な一冊! 本書では比叡山延暦寺の権力基盤、経済基盤がどこにあったのかを詳しく見ていきます。特に嗷訴とはいかなるものだったのかという解説は非常に興味深いです。なぜ朝廷や幕府は嗷訴をここまで恐れなければならなかったのかというのは非常に重要な問題です。実は単に神罰が恐ろしいからという迷信的な理由だけではなかったのです。
あわせて読みたい
今谷明『天文法華の乱』概要と感想~1530年代京都で起きた宗教戦乱の実態に迫るおすすめ参考書 本書は私達の常識を覆す衝撃的な1冊です。 室町、戦国期はとにかく複雑です。なぜ京都で日蓮宗が急拡大し、1536年に京都を焼き尽くす大事件が起きるほどになってしまったかということには多種多様な背景が絡んできます。まさに宗教は宗教だけにあらず。本書ではそんな複雑怪奇な政治経済、時代背景を時系列に沿って読み解いていきます。
あわせて読みたい
神田千里『宗教で読む戦国時代』概要と感想~戦国時代の人々が共有していた「天道」とは何か。私達の常... 戦国時代における宗教とはどのようなものだったのかを学ぶのにこの本は必読と言ってよいほど素晴らしい参考書でした。 しかもこの本でも私達の常識を覆す驚きの説が語られます。特に「天道」という当時の日本人が広く受け入れていた考え方についての考察はあまりに衝撃的でした。
あわせて読みたい
今谷明『戦国期の室町幕府』概要と感想~臨済宗五山派と幕府の関係性について知るのにおすすめ!実務官... 本書はとてつもない名著です。私もこの本には参りました。「え!?」という事実が次から次に出てきます。完全に常識が覆されました。それほどこの本は衝撃的です。
あわせて読みたい
清水克行『室町は今日もハードボイルド』概要と感想~私達の常識を覆す衝撃の1冊!面白すぎです! この本は私達が驚くような内容が次々と語られる一冊です。 室町時代がいかにアナーキーで暴力的でハードボイルドだったか。エンタメ感の強いタイトルや表紙とは裏腹に著者は資料に基づいた学術的な内容を楽しく解説していきます。 著者の語るエピソードもくすっとしてしまうユーモアもたっぷりで非常に読みやすいです。
銭躍る東シナ海

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

目次