杉谷義純『比叡山と天台のこころ』概要と感想~天台宗と比叡山の歴史を学べるおすすめ入門書

杉谷義純『比叡山と天台のこころ』概要と感想~天台宗と比叡山の歴史を学べるおすすめ入門書
今回ご紹介するのは2020年に春秋社より発行された杉谷義純著『比叡山と天台のこころ』です。
早速この本について見ていきましょう。
最澄が開き今もなお多くの仏教者が活躍する比叡山延暦寺。その日本人の聖地で,各時代に誰もが仏になれる教えを実践した人物をたどり,天台の魅力の源泉を探る。 〈新装版〉
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本書『比叡山と天台のこころ』は天台宗と比叡山の歴史を学ぶのにおすすめの入門書です。
本書について著者は冒頭で次のように述べています。
大方の日本人は「私はクリスチャンです」などと言われると、なんとなく「あっ、そうですか」と納得してしまいます。ところが「私は仏教徒です」と言われると、なんだかピンときません。そして「何宗ですか」と聞く人が多いのです。
そこで、天台宗とか浄土真宗ですなどと答えると、最澄や親鸞などの宗祖の名をあげて、やっと分かったような顔をします。日本の仏教が宗派仏教とか祖師仏教といわれるゆえんです。
一方では、宗派仏教だけしか見ないせいか、釈尊はじめ、仏教全体に対する視野が著しく欠けている場合が少なくありません。他方、宗派仏教にあきたらない人は、インド仏教などに知識を求め、日本仏教は正しい仏教ではないなどと批判する人もいます。
そもそも、仏教は釈尊以来、二千五百年の悠久の歴史の中で、インド、中国、アジアの各地に伝播してきましたが、それらの国々には、すでに多種多様な民族、言語、文化があったことを知らねばなりません。
したがって、仏教がそれぞれの文化圏に受容されていくということは、必ずその地域の文化、伝統、慣習の影響を受けざるをえないのです。第一に、仏教がその地域の言葉で語られているのですから、当然のことでありましょう。とくに仏教は寛容な宗教といわれ、土着の文化を排除するよりも、むしろそれを吸収していくかたちで、広がっていきました。とくにインドでのヒンドゥー教、中国の道教や儒教の影響は少なくなく、また日本に伝わると、神道の影響なども受けました。
そんなわけで、仏教の全体像を把むとなると、容易なことではないのです。しかしながら、天台仏教に触れることは、その足がかりとなるでしょう。中国天台はインドから中国へ伝えられた仏教を集大成する形で成立し、さらに日本天台では、中国天台成立以降の密教などを吸収して、さらに総合的な仏教として展開していくからです。そこで本書では、日本の天台仏教に焦点をあてて、「比叡山と天台のこころ」を描くことにつとめました。
春秋社、杉谷義純『比叡山と天台のこころ』P3-4
この箇所を読んで頂ければわかりますように、著者は広い視野で仏教を見ています。そして何より、その語り口も穏やかでとても読みやすいです。
本書ではこうした著者の語りの下、比叡山の歴史を順を追って見ていくことになります。
比叡山延暦寺や最澄は誰もが知る存在ですが、いざその詳しい歴史はどうだったかということになると意外とあまり知られていないというのが実際のところだと思います。
私自身、こうして日本仏教を学び直していく中でたくさんの発見がありました。浄土真宗の開祖親鸞聖人が修行された比叡山延暦寺とはいかなる場所だったのかということをわかりやすく学ぶことができました。
本書は比叡山や天台宗の教えを学ぶのにおすすめの入門書です。比叡山や天台宗に興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「杉谷義純『比叡山と天台のこころ』概要と感想~天台宗と比叡山の歴史を学べるおすすめ入門書」でした。
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