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藤木久志『刀狩 武器を封印した民衆』概要と感想~「武器を失って平和化した民衆」は幻だった?常識を覆す刺激的な名著!

刀狩り
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藤木久志『刀狩 武器を封印した民衆』概要と感想~「武器を失って平和化した民衆」は幻だった?常識を覆す刺激的な名著!

今回ご紹介するのは2005年に岩波書店より発行された藤木久志著『刀狩 武器を封印した民衆』です。

早速この本について見ていきましょう。

秀吉の刀狩りによって民衆は武装解除されたという「常識」がつくられてきたが,それは本当だろうか.調べていくと,それに反する興味ぶかい史実が次々と浮かび上がってくる.秀吉からマッカーサーまで,刀狩りの実態を検証して,武装解除された「丸腰」の民衆像から,武器を封印する新たな日本民衆像への転換を提言する.

岩波書店商品紹介ページより

豊臣秀吉による刀狩は教科書にも掲載されている歴史上の超有名な出来事ですよね。

しかしその刀狩に関する認識が間違っていたとしたら?

本書の著者藤木久志氏の著作は以前当ブログでも『土一揆と城の戦国を行く』という名著をご紹介しましたがこの本も私達の常識を覆す作品です。

本書内でも語られますが日本では農民は公家や武家から支配されていたか弱き民衆であるという歴史観が主流を占めていましたが、それが虚像であったことを本書では知ることになります。

刀狩の本当の狙いは何だったのか。

農民たちにとって武器は何を意味していたのか。

刀狩によって本当に民衆は牙を抜かれてしまったのか。

などなど、私達が当たり前のように思っていた歴史に著者は鋭い疑問を投げかけます。

これまで当ブログでもこの室町戦国期の独特な時代背景を解説した清水克行著『室町は今日もハードボイルド』や山田康弘著『足利将軍たちの戦国乱世』などをご紹介してきましたが、やはり私達の常識が全く通用しないのがこの時代であります。

私達が当たり前のように考えてしまう思考の枠組みを一気に破壊してくれるのが室町戦国期です。

この本も刀狩という超有名な出来事を切り口に私達の先入観を覆してくれる実に刺激的な一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「藤木久志『刀狩 武器を封印した民衆』概要と感想~「武器を失って平和化した民衆」は幻だった?常識を覆す刺激的な名著!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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