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川尻秋生『平安京遷都』概要と感想~平安時代前半の流れを知るのにおすすめの参考書!

平安京遷都
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川尻秋生『平安京遷都』概要と感想~平安時代前半の流れを知るのにおすすめの参考書!

今回ご紹介するのは2011年に岩波書店より発行された川尻秋生著『平安京遷都 シリーズ 日本古代史⑤』です。

早速この本について見ていきましょう。

権力争いの結果として予期せず皇位についた桓武は、王統の革新を強調すべく二度の遷都を行った。天皇を中心とした統治システムがしだいに安定するにつれ〈イエ〉意識が誕生し、いっぽう宗教や文学など背景となる時代精神も変化してゆく。長らく〈国風文化〉の源とされてきた平安朝の実像はいかなるものだったか。

Amazon商品紹介ページより
平安京の復元模型(平安京創生館の展示物)Wikipediaより

本書『平安京遷都』は、平安京の始まりから道長らの摂関政治全盛時代が始まるまでの平安時代前期の歴史を学ぶのにおすすめの参考書です。

平安京と言えば「鳴くよウグイス平安京」という語呂で暗記した794年という年号がやはり記憶に残っています。

この平安京遷都から始まった平安時代ですが、本書ではまずこの遷都の経緯や桓武期の政治、最澄、空海をはじめとした仏教との関係を見ていくことになります。

桓武天皇といえば最澄とのつながりから仏教を重んじたというイメージがあったのですが実はそう単純な話ではなかったことを本書で知ることになりました。

そしてここから登場人物もどんどん増えてくるのですが、皇位継承に絡む問題や摂関政治の萌芽ともなる幼帝清和天皇の即位は重要なポイントとなっています。この清和天皇の即位が858年。平安京遷都からおよそ60年でした。藤原道長が摂政になったのが1016年です。私は本書を読んでいて改めて平安時代の長さを感じずにはいられませんでした。鎌倉幕府が開かれるのが1185年ということ考えると平安時代は400年近くも続いていたことになります。なんと、江戸時代よりもはるかに長いのです。

これは平安時代に覚えるべき人名や出来事が多いのも納得です。受験時代から15年以上も経ちましたが、改めて平安時代の巨大さを感じました。

しかも平安時代前期は摂関政治期や平安末期の源平争乱と比べるとどうしても影が薄いというのも事実です。正直、私も800年代、900年代の平安時代に何があったか忘れてしまっていました。どの天皇が活躍してどんな出来事があったかがなかなか出てこないのです。改めて本を読み返せば「あ、こんなことあったな」と思い出せるのですが、まっさらな状態ではもはや800~900年代は空白になってしまっていました。894年の菅原道真による遣唐使の廃止や、935年の平将門の乱、939年の藤原純友の乱が記憶に残っているくらいです。

本書を読んでそんな空白がどんどん埋まっていく楽しさがありました。この本は一般読者向けに書かれた入門書でもありますのでとても読みやすいです。長い長い平安時代の始まりと助走期間とも言うべきこの時代をわかりやすく学べる本書は実におすすめです。

また、本書『平安京遷都 シリーズ 日本古代史⑤』の続編の古瀬奈津子『摂関政治 シリーズ 日本古代史⑥』もセットでおすすめしたい参考書です。

摂関政治 シリーズ日本古代史6 (岩波新書)

摂関政治 シリーズ日本古代史6 (岩波新書)

あの藤原道長の摂関政治はどのようにして生まれてきたのか、そしてその内実はいかなるものだったかをこの本で学ぶことができます。奈良・平安時代になってくると人物名が多くなり学ぶのも大変になってきますが、この「シリーズ 日本古代史」はわかりやすくその流れや全体像を掴むことができます。

ぜひ合わせて手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「川尻秋生『平安京遷都』概要と感想~平安時代前半の流れを知るのにおすすめの参考書!」でした。

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平安京遷都 シリーズ日本古代史5 (岩波新書)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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