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東野治之『鑑真』概要と感想~日本に戒律を伝えた唐の高僧の生涯と日本への影響を知るのにおすすめの参考書

鑑真
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東野治之『鑑真』概要と感想~日本に律を伝えた唐の高僧の生涯と日本への影響を知るのにおすすめの参考書

今回ご紹介するのは2009年に岩波書店より発行された東野治之著『鑑真』です。

早速この本について見ていきましょう。

五度の難破の末にようやく来日を果たした苦心談で知られる鑑真.しかしそれ以外のことはほとんど知られていない.彼はどんな思想の持ち主だったか.日本に何を夢見,日本仏教に何を残したのか.当時の日唐における仏教思想の潮流や,「戒律」の持った意味にも目配りしつつ,徹底した史料批判のうちに,その志を読み解く

岩波書店商品紹介ページより
唐招提寺に安置されている国宝「鑑真和尚像」Wikipediaより

鑑真といえば私達日本人にとっても馴染み深い存在ですよね。戒律を伝えるために6度目の航海でやっと日本に到着し、その困難な旅によって視力を失ったというあの高僧です。

688年生まれの鑑真が日本にやって来たのは753年。鑑真は65歳という高齢でありながら我が国へと命をかけて渡って下さったのでした。

その鑑真ゆかりのお寺として有名なのがやはり唐招提寺と東大寺戒壇院になります。

唐招提寺 Wikipediaより
東大寺戒壇院 Wikipediaより

私もこの両寺が大好きで奈良に行く時はよく訪れています。特に東大寺戒壇院には有名な四天王像が安置されており私もその仏像の大ファンであります。

東大寺HPのスクリーンショット https://www.todaiji.or.jp/information/kaidando/

奈良の東大寺といえば大仏というイメージが強いかもしれませんが、この戒壇院の仏像のすばらしさがぜひ世に広まることを願っています。

さて、話は少しそれましたが本書ではそんな日本に戒律をもたらした唐の高僧鑑真の生涯を学ぶことができます。本書について著者は冒頭で次のように述べています。

これまで色々な形で語られてきた鑑真の生涯ですが、そのほとんどは鑑真の渡日苦心談に紙数が費やされ、鑑真が日本で何をしようとしたのかは、あまり踏みこんで書かれることがなかったと思います。ただ、鑑真が重大な決心をして来日した背後には。鑑真なりの大きな見取図が用意されていたに違いありません。その中には、日本人に受け入れられたものがある反面、遂に根付かなかったものもあるはずです。それらを全体として振り返り、鑑真の目指したものを検証してみなければ、鑑真の本当の偉大さも見えてこないのではないでしょうか。そういう思いを込めて、私はあの銘文をまとめました。

本書は、鑑真が抱いたその目論見を明らかにしようという試みです。そのため本書では、来日に当たっての苦労話よりも、来日前の鑑真が何を身につけていたのか、また来日後にどのような活動をしたのかを、丁寧に探りました。本書の特色はそこにあると思います。

岩波書店、東野治之『鑑真』Pⅶーⅷ

ここで述べられているように、本書では鑑真の苦難の旅よりも来日前の鑑真はどのような活動をしていたのか、そして来日後どのように過ごしていたかをじっくり見ていくことになります。「鑑真=失明するほどの困難な来日」というイメージが強い中で、これは意外な盲点ですよね。

ただ単に「困難な航海を経て日本に戒律をもたらした」という言葉だけでは伝えきれない鑑真の生涯というものがあります。

本書を読めば当時の日本仏教の実情やなぜ鑑真を日本は強く求めたのかという時代背景も知ることもできます。鑑真を通して8世紀の日本仏教の姿を知ることができる本書はとても刺激的です。

著者の語りも丁寧でわかりやすく、とても読みやすいのもありがたいです。

後の日本仏教にも大きな影響を与えた鑑真の生涯を学べるおすすめ入門書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「東野治之『鑑真』概要と感想~日本に戒律を伝えた唐の高僧の生涯と日本への影響を知るのにおすすめの参考書」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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