吉川真司『飛鳥の都』概要と感想~7世紀日本の流れや国際関係も知れるおすすめ入門書
吉川真司『飛鳥の都』概要と感想~7世紀日本の流れや国際関係も知れるおすすめ入門書
今回ご紹介するのは2011年に岩波書店より発行された吉川真司著『飛鳥の都 シリーズ日本古代史③』です
早速この本について見ていきましょう。
舞台はいよいよ飛鳥へ。歴代王宮がこの地に営まれた7世紀、中国大陸・朝鮮半島の動乱に翻弄されつつも、倭国はいくつもの改革を断行し、中央集権国家「日本」へと変貌を遂げていった。推古天皇即位の背景から大化の改新、白村江の戦い、壬申の乱、そして大宝律令成立前夜まで、激動の時代の実像を最新の知見で描く。
Amazon商品紹介ページより
本書『飛鳥の都 シリーズ日本古代史③』は7世紀の日本を知る上でおすすめの参考書です。
7世紀日本といえば聖徳太子や推古天皇の政治や蘇我蝦夷、入鹿父子を討った乙巳の変、大化の改新など、日本史において非常に重要な出来事が満載の時期です。教科書でも習う印象的な歴史でもありますよね。
本書ではそんな7世紀の日本について様々な知見を学ぶことができます。中学高校で習った飛鳥時代の出来事の背景に実はこんなことがあったのかときっと驚くと思います。
そしてこの本のポイントは7世紀の日本の政治事情を中国(隋唐)や朝鮮(高句麗、百済、新羅)との密接な関係から読み取っていく点にあります。
前回、前々回の記事で紹介した河内春人『倭の五王』や高田貫太『海の向こうから見た倭国』と同じように、本書でもグローバルな日本史を見ていくことになります。
私たちは大化の改新や天智・天武天皇の政治改革を日本の枠組みの中だけでイメージしてしまいがちですが、実はこれらの大改革も中国が実際に侵攻してくるという極めて現実的な脅威から行われたという背景があります。特に663年の白村江の戦いの後はそれが顕著になります。「このままの日本では本当に国が亡びる」という危機感が中央集権化、つまり律令制の強化につながったというのは非常に興味深い流れでした。
また、本書は歴史の流れに沿って解説されますので、読むのにも大きなストレスを感じることはありません。歴史の本と言いますと歴史用語や固有名詞の羅列で読むのも大変なこともありますが、本書は物語のように読み進めることができます。
飛鳥時代といえば聖徳太子がクローズアップされがちですが、その存在の背後にはグローバルな時代背景が広がっていました。そして奈良時代に向けて倭国がどのように変貌していったかという過度期の内実を知れる本書は実に刺激的です。
また、日本で最初の寺院となった蘇我氏の氏寺飛鳥寺についても本書では詳しく知ることができます。倭の先進文化興隆センターともなっていたこのお寺についての歴史も興味深かったです。
これは面白い一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「吉川真司『飛鳥の都』概要と感想~7世紀日本の流れや国際関係も知れるおすすめ入門書」でした。
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飛鳥の都 シリーズ 日本古代史 3 (岩波新書 新赤版1273)
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