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黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』あらすじと感想~チェコの大作曲家の生涯を知るのにおすすめ!

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黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』あらすじと感想~チェコの大作曲家の生涯を知るのにおすすめ!

今回ご紹介するのは1982年にリブリオ出版より発行された黒沼ユリ子著の『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』です。私が読んだのは1999年第14刷版です。

この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。

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クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。

この作曲の物語シリーズについては他の巻の巻末に以下のように述べられています。

児童書では初めての音楽家による全巻現地取材

読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。


リブリオ出版、ひのまどか『シューベルト―「孤独な放浪者」』第11刷版

一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。

ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。

さて、今回の主人公はチェコの偉大な作曲家ドヴォルジャークです。

アントニーン・ドボルジャーク(1841-1904)Wikipediaより

チェコの大作曲家といえばスメタナとこのドヴォルジャークが浮かんできます。

ですがスメタナの『モルダウ』はすぐに思い出せるのに、ドボルジャークの曲は正直なかなかイメージできませんでした。

そんな私にとってこの伝記はドヴォルジャークの生涯を楽しみながら詳しく知ることができる非常にありがたいものでした。

この解説動画はいつもお世話になっているのですが、ドヴォルジャークの特徴やその代表曲も知ることができるのでおすすめです。恥ずかしながら、この動画の14分あたりの『新世界』の音楽を聴いたときに「あっ、これが『新世界』なのか!」と驚きました。

著者はこの本についてあとがきで次のように述べています。

貧しい田舎の子だくさんの家庭の長男として生まれた少年が、「音楽家になりたい」という大志を抱いて都に出てゆき、どんな逆境にあっても、その初志をつらぬきとおし、ついには世界的に有名な大作曲家になる。そして彼の死後およそ八〇年もたつ今日でさえ、日びこの地球上のどこかに、必ず彼の音楽をコンサートやラジオやレコードなどでたのしんでいる人びとがいるという事実。しかも往おうにして他の多くの芸術家がそうであるように、生存中はなかなかその真価が認められず、死後何十年かたってから、やっと埋もれていたものを掘り返すような人が出てきて再評価される―というケースとは正反対に、ドヴォルジャークの場合は、生涯の晩年を、この上さらに大きな地上での栄誉をえることは望めまい、と思われるほどたくさんの名誉や称号などの授与に会い、誰でもが簡単には会うことのできない「皇帝」自身が、彼のオぺラの上演に臨席して拍手を送ると同時に、ごく一般の民衆からも愛されてやまない存在であったという、いわば「立身出世伝」を書くためには、これ以上書きやすい人はいないだろうと思われるほど、逆にいえば、まるで、できあがっている物語をそのまま生きたのではないかと、考えたくなってしまうような一生を過ごしたアントニーン・ドヴォルジャークなのでしたが。

そんな人物の伝記を書くのに、なぜ、わたしが四苦八苦したかといいますと、まず第一に、わたしが作家ではないから、ということもいえますが、このさいその点は一応別問題にしておくとして、何はともあれ、この伝記を、いわゆる「出世物語」にしたくなかったからです。むしろわたしは、ドヴォルジャークというひとりの人間を通じて、「音楽」が、または「音楽家」が持ちうる「カ」について語りたかったのです。政治でも科学でもない「音楽」という、芸術の中の一分野が持ちうる「カ」が、時には文化の領域をはるかに越えて、社会的にも、政治的にもなりうる、ということをドヴォルジャークと、彼自身の生きた時代の両方に光をあてながら、わたしなりの方法で書いてみたかったからなのです。それは、四年前に出版した拙書『アジタート・マ・ノン・トロッポ』(激しく、しかし、過ぎずに)(未来社)にも書いたことを、もう一度、今回はチェコ民族の歩んだ歴史を下敷にしながらとりあげた、ということになるかも知れませんが。

一九一八年になってやっと、独立国民として〝再誕生〟したチェコ人にとって、ドヴォルジャークは、彼の先輩スメタナと並んで、「音楽」によって、その〝再誕生〟に必要な歴史の歯車の動きを大いに速めた〝祖国建設の英雄〟のひとりなのです。そのことが少しでも、本文の行間からみなさんに伝わってくれたなら、これ以上のよろこびはありません。

それはつまり、芸術家という存在が、彼の生きる時代や社会情勢から、どんなに影響されるか、ということと同時にまた、どんなに大きな影響を与えることもできるか、ということなのです。

リブリオ出版、黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』P345-346

このあとがきにも書かれていますように、この伝記では当時の時代背景もたくさん説かれます。やはり音楽もそれだけで存在するのではなく当時の政治、経済、国際情勢の影響を受けます。しかもその土地土地の文化や歴史、民俗性などももちろん関わってきます。弾き手がいて、聴き手がいる。その相互の関係なくして音楽が広がることはありえません。

ですので音楽と時代背景を一緒に学ぶことは非常に重要なことになります。これは音楽だけではなく、文学も絵も彫刻も、そして宗教も一緒です。それ単体で生まれてくることはありません。必ず当時の時代背景をベースにして生まれてきます。

私は僧侶として仏教、宗教を学ぶ時に「宗教は宗教だけにあらず」という考え方を大切にしています。そしてこの伝記シリーズを読んで改めて「音楽も音楽だけにあらず」ということを感じさせられたのでした。

この伝記はドヴォルジャークの桁違いの生涯を知るだけではなく、当時の時代背景も知ることができるので非常におすすめです。

以上、「黒沼ユリ子『ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ』チェコの大作曲家の生涯を知るのにおすすめ!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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