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平松令三『親鸞の生涯と高田門徒の展開』概要と感想~高田派の親鸞伝承や親鸞勧進聖説について詳しく学べるおすすめ論文集

親鸞の生涯と高田門徒の展開
目次

平松令三『親鸞の生涯と高田門徒の展開』概要と感想~高田派の親鸞伝承や親鸞勧進聖説について詳しく学べるおすすめ論文集

今回ご紹介するのは2024年に法藏館より発行された平松令三著『親鸞の生涯と高田門徒の展開』です。

早速この本について見ていきましょう。

親鸞および真宗の歴史学的研究に多大な影響を与えた第一人者の論文を集成。親鸞の生涯における転換点、初期真宗教団の展開、真仏・顕智の生涯や筆跡、真宗高田派の歴史や建造物に関する考察など、史料を駆使し実証的に論じる。

《目次》
刊行の辞…………真宗高田派法主 常磐井慈祥
第一部 親鸞の生涯をめぐって
  第一章 親鸞の生涯
  第二章 親鸞の六角堂夢想について
  第三章 後鳥羽院と親鸞
  第四章 善鸞義絶状の真偽について
第二部 初期真宗教団と真仏・顕智
  第一章 初期真宗教団の展開をめぐる諸学説
  第二章 真仏上人の生涯
  第三章 真仏上人の筆跡
  第四章 顕智上人の生涯
  第五章 新発見の古写本『三河念仏相承日記』
第三部 下野国高田から伊勢国一身田へ――真宗高田派の展開
  第一章 下野国高田山専修寺史考
  第二章 寺内町一身田
  第三章 専修寺真慧の教化について
  第四章 堯秀・堯円両上人の御事績とその背景
  第五章 円猷上人御事績の歴史的意義
  第六章 「かんこ踊」と「おんない念仏」――顕智上人の濡れ衣を晴らす
初出一覧
図版一覧
解 説

Amazon商品紹介ページより
本山専修寺 Wikipediaより

本書『親鸞の生涯と高田門徒の展開』は真宗高田派における親鸞聖人の伝承と本山専修寺の歴史を知れるおすすめの参考書です。

浄土真宗といえば東西両本願寺を思い浮かべるかもしれませんが、浄土真宗には全部で10の宗派があります。基本的には親鸞聖人の教えを奉じるという点で皆同じ流れなのでありますが、その伝承や儀礼作法など様々な違いがあります。

今回私がこの本を手に取ったのは、それぞれの宗派によって異なる親鸞聖人の伝承に関心があったからでした。私は学生時代に東本願寺(真宗大谷派)とご縁が深かった関係で本願寺系の伝承に親しんでいましたが、親鸞聖人の生涯を多角的に見るにはやはり様々な伝承も知る必要があります。高田派は親鸞聖人の直弟子の系譜を持つ宗派ということで、親鸞聖人の血筋の継承を旨とする本願寺とは異なる空気があります。なので改めて高田派の伝承や考え方を知ることでより親鸞聖人や本願寺のことを深く学ぶことができるのではないかと私は考えたのです。

そして実際、本書を読んでいて気づかされたのが、高田派と長野の善光寺との関係性です。

善光寺本堂 Wikipediaより

善光寺については以前当ブログでも「牛山佳幸『善光寺の歴史と信仰』あらすじと感想~長野の歴史ある寺院の歴史や法然門下、親鸞との関係も知れるおすすめ本」の記事で紹介しました。

現在、天台宗と浄土宗によって共同管理されている善光寺ですが、このお寺は古くから浄土教信仰が盛んで、親鸞聖人が越後から関東へ向かわれたのもこの善光寺で勧進聖として生活していたからという説が高田派で伝承されています。

この善光寺との関係性を重んじているのが高田派の特徴であり、本願寺との大きな違いです。

「親鸞聖人とは何者なのか」

実はこのことははっきりしないことが多々あります。つまり未だ学術上の決着がついていない問題が数多く存在するのです。その最たるもののひとつが親鸞聖人がなぜ越後から関東に移ったのか、そして関東でどのような布教生活を送っていたのかという問題になります。歴史的資料が少ないためおそらくこの問題は今後も学術上確定されることはないのではないかと思われますが、本書では高田派の立場から親鸞聖人の関東での足跡について詳しく見ていくことができます。これは私にとっても刺激的なものとなりました。

また、本書と合わせて本山専修寺より発行された『高田本山と法義と歴史』という本もおすすめです。

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この本では専修寺そのものや本尊や親鸞聖人の真筆など高田派に伝わる貴重な宝物の写真を見ることができます。また、それぞれの宝物についての解説も掲載されていますので、高田派の教義や歴史をさらに深く学ぶことができます。今回ご紹介した『親鸞の生涯と高田門徒の展開』と合わせて読まれることをおすすめします。

以上、「平松令三『親鸞の生涯と高田門徒の展開』概要と感想~高田派の親鸞伝承や親鸞勧進聖説について詳しく学べるおすすめ論文集」でした。

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親鸞の生涯と高田門徒の展開 (平松令三遺稿論文集 1)

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親鸞の生涯と高田門徒の展開

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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