MENU

佐藤弘夫『アマテラスの変貌』概要と感想~僧侶必見!神仏習合の実態や成り立ちに迫る衝撃の名著!

アマテラスの変貌
目次

佐藤弘夫『アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座』概要と感想~僧侶必見!神仏習合の実態や成り立ちに迫る衝撃の名著!

今回ご紹介するのは2020年に法藏館より発行された佐藤弘夫著『アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座』です。

早速この本について見ていきましょう。

圧倒的な存在感をもつ中世の神仏や死者。人々は「土着の神」や「外来の仏」ではなく、「あの世の仏」と「この世の神仏」という世界観のなかで生きていた。童子・男神・女神へと変貌するアマテラスを手掛かりに、中世の民衆が直面していた生々しいイデオロギー的呪縛を抉りだす。それは、神仏習合論、本地垂迹論、神国思想論、顕密体制論などの見直しを迫り、新たな宗教コスモロジー論の構築を促す。

紀伊國屋書店商品紹介ページより

これまで当ブログでは中世の仏教や歴史に関する衝撃的な本をいくつも紹介してきましたが、本書『アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座』もとてつもない一冊でした。

私たちは日本の宗教というと仏教と神道を連想し、それがかつて神仏習合的に信仰されて来たと習ってきました。

しかし、そもそも神仏習合や本地垂迹ということはいかにして始まり、どのように日本社会に根付いていったのかというとなかなかわかりませんよね。

「仏教の仏様が日本の神様として姿を変えて現れた」というのが一般的な解説ではありますが、これが実はそう単純な話ではないことがこの本で明らかにされます。この本を読んで私は驚きっぱなしでした。私たちが当たり前のように受け入れていた考え方がいかに史実と異なっていたかを痛感します。

そして本書を読んで一番ありがたかったのが、私がこれまで比叡山史を学んでいてずっとわからずにいた疑問に答えてくれた点です。

と言いますのも比叡山史を学んでいると、山内での抗争で僧兵が互いのお堂や僧房を焼き討ちしたり破壊するという事件が何度となく繰り返されて来た歴史を知ることになりました。(村山修一『比叡山史 闘いと祈りの聖域』参照)

比叡山における山門派(延暦寺を中心)と寺門派(三井寺を中心)の抗争は苛烈を極めましたが、一応は同じ天台宗であります。その同じ天台の僧侶間でなぜ互いのお寺を焼き払うことができたのか。仏像や貴重な経典、仏具などを破壊してしまったら罰が当たるのではないかと私は素朴にも思ってしまったのです。これが異教徒間の争いでしたら古今東西よくあることです。しかし同じ仏を信じている間柄でお寺を破壊し合うというのがどうしてもピンと来なかったのです。

しかしこの本でまさに「これぞ!」という当時の考え方が示されていたのです。詳しくは本書で解説されていますのでここではお話しできませんが、ここに本地垂迹的な神仏観が大きく影響していたのです。

「なるほど、これなら相手のお寺を破壊しても仏様本体を攻撃することにならないな」と私も納得しました。

当時を生きる人たちは私たちとまるで違う神仏観を持っています。私たちの常識で中世を考えると見えてこないものがたくさんあります。そのことを本書では幾度となく突きつけられることになりました。

本書はかなり専門的な内容ですので仏教や中世史にあまり詳しくない方には厳しいかもしれませんが、僧侶の方には特におすすめしたい一冊です。私たちの常識や先入観を破壊してくれる名著中の名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「佐藤弘夫『アマテラスの変貌』概要と感想~僧侶必見!神仏習合の実態や成り立ちに迫る衝撃の名著!」でした。

Amazon商品紹介ページはこちら

アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座 (法蔵館文庫)

アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座 (法蔵館文庫)

前の記事はこちら

あわせて読みたい
小林一彦『100分de名著 鴨長明 方丈記』概要と感想~鴨長明と方丈記をわかりやすく学べるおすすめ入門書 「鴨長明といえば『方丈記』」というほど有名なこの人物でありますが、皆さんはこのお方が京都鴨川の下賀茂神社の神官出身だったということをご存じだったでしょうか。名前の鴨長明もまさにこの鴨川と関係している可能性も高いです。 本書はそんな鴨長明入門としてぜひおすすめしたい一冊です。

関連記事

あわせて読みたい
村山修一『比叡山史 闘いと祈りの聖域』概要と感想~比叡山内の抗争、僧兵の歴史を知るのに特におすすめ... 本書はタイトル通り、比叡山内における抗争と宗教的な伝統について詳しく知れる超一級の資料となっています。 特に本書では僧兵の成り立ちと、なぜ比叡山内での武力抗争が相次いで起こったのかということに注目して解説されていきます。 そもそも僧兵はどこから現れたのか。彼らは何者なのか。本当に僧侶なのか? こうした素朴な疑問もこの本を読めば解決します。
あわせて読みたい
下坂守『京を支配する山法師たち』概要と感想~比叡山と経済界の繋がりを知れる刺激的な一冊! 本書では比叡山延暦寺の権力基盤、経済基盤がどこにあったのかを詳しく見ていきます。特に嗷訴とはいかなるものだったのかという解説は非常に興味深いです。なぜ朝廷や幕府は嗷訴をここまで恐れなければならなかったのかというのは非常に重要な問題です。実は単に神罰が恐ろしいからという迷信的な理由だけではなかったのです。
あわせて読みたい
上島享『日本中世社会の形成と王権』概要と感想~平安中期からの仏教と政治の関係を詳しく知れる大著 歴史の入門書とてはおすすめできませんが、本格的な研究書をお求めの方にぜひおすすめしたいです。 特に、仏教を日本史の観点からも本気で学びたい方には必読の一冊であると思います。これはものすごい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい
大隅和雄『愚管抄を読む 中世日本の歴史観』概要と感想~慈円の思想や当時の時代精神を学ぶのにおすすめ... この本はとてつもない名著です。慈円の『愚管抄』を題材に当時の時代背景や神仏の世界について新たな視点で考えていける素晴らしい作品です。紹介したい箇所が他にも山ほどありすぎてこの記事では到底紹介しきれません。それほど刺激的な解説が満載です。 これから先も私は何度もこの本を読み返すことでしょう。平安末期から鎌倉時代初頭にかけての時代精神を考える上で必読と言ってもよい名著です。
あわせて読みたい
多賀宗隼『慈円』概要と感想~『愚管抄』で有名な天台座主の真摯な求道に胸打たれる!親鸞が比叡山にい... 私はこの慈円の伝記に非常に強い感銘を受けました。親鸞聖人がおられた頃の比叡山を知りたいという思いから手に取った本書でしたが、実に素晴らしい作品でした。 当時の時代背景や慈円の熱烈な仏道修行、そして天台座主としての苦悩などさまざまな発見がある名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
アマテラスの変貌

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

目次