小林一彦『100分de名著 鴨長明 方丈記』概要と感想~鴨長明と方丈記をわかりやすく学べるおすすめ入門書

小林一彦『NHK「100分de名著」ブックス 鴨長明 方丈記』概要と感想~鴨長明と方丈記をわかりやすく学べるおすすめ入門書
今回ご紹介するのは2013年にNHK出版より発行された小林一彦著『NHK「100分de名著」ブックス 鴨長明 方丈記』です。
早速この本について見ていきましょう。
「豊かさ」の価値を疑え!
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」の有名な書き出しで始まる『方丈記』。世の中を達観した隠遁者の手による「清貧の文学」は、都の天変地異を記録した「災害の書」であり、また著者自身の人生を振り返る「自分史」でもあった。日本人の美学=“無常”の思想を改めて考える。
Amazon商品紹介ページより

「鴨長明といえば『方丈記』」というほど有名なこの人物でありますが、皆さんはこのお方が京都鴨川の下賀茂神社の神官出身だったということをご存じだったでしょうか。名前の鴨長明もまさにこの鴨川と関係している可能性も高いです。
恥ずかしながら私も『方丈記』そのものは何度も読んだことはあっても鴨長明その人について学んだのは今回が初めてで、彼の家が神官一族だったとはまさに驚きでした。『方丈記』=無常のイメージがありましたのでずっと僧侶だと思い込んでいました。ただ、逆に言えば当時の人々の感性として無常というのは職業関わらず共有されていたとも言えるかもしれません。
さて、本書冒頭では鴨長明の『方丈記』について次のように述べられています。
『方丈記』は、国語の教科書などにもしばしば登場する、多くの方におなじみの古典です。とくにその書き出しは有名です。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみにうかぶうたかたはかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖と又かくのごとし。
流れる川の流れは絶え間ないが、しかし、その水はもとの水ではない。よどみの水面に浮かぶ泡は消えては生じて、そのままの姿で長くとどまっているというためしはない。世の中の人間と住まいも、これと同じなのだ―。読み手がぐっと惹きつけられる印象的な書き出しですが、ここだけが記憶に残っていて、その先を読んだ覚えがない、何が書かれているか知らない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
『方丈記』の最大の不幸は、あまりに有名な冒頭のために読んだ気になってしまい、その先が読まれていないことだといってもよいでしよう。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という冒頭のとおり、この世にあるものはすべて移ろいます。『方丈記』といえばこの書き出しによって「無常の文学」と思われがちですが、次を読み進めてみると、そこに書かれているのは哲学的な無常観ではなく、はかない世の中のありようを説明するために「世の不思議」、つまり平安京を襲った五つの災厄が、まるでルポルタージュのように生き生きと、迫真の描写でつづられているのに驚かされるのです。
NHK出版、小林一彦『NHK「100分de名著」ブックス 鴨長明 方丈記』P5-6
『方丈記』といえば有名すぎる冒頭のイメージが強烈ですが、実はここの引用の最後に述べられておりますように、この作品は災害文学でもあります。しかもその描写があまりに真に迫るものであり、後の箇所でも、
新聞記者の方にこの部分を見せると、みな「完壁な新聞記事だ」と絶賛します。「われわれは事件があれば警察の記者クラブなどに行って、情報を集めて記事を書くけれど、当時はそういうものがない。にもかかわらずこれだけのものを書くとは並大抵の取材力ではない。まさに現代のピュリッツァー賞ものだ」という方もいました。
NHK出版、小林一彦『NHK「100分de名著」ブックス 鴨長明 方丈記』P29
という話が出てくるほど『方丈記』はルポルタージュとして優れた作品となっています。
実際、私は現在浄土真宗の開祖親鸞聖人の生涯を記事にしてまとめている最中なのですが、この『方丈記』で説かれる京都の災害の記録には大いに助けられています。親鸞聖人もまさにこの災害の渦中に生まれ、それを見ながら若き日を過ごしています。こうした悲惨な現実があったからこそ聖人は「全ての人を救う」阿弥陀仏の教えに帰依していくことになります。
そうした意味でも『方丈記』そのものや当時の時代背景もわかりやすく説かれた本書は非常にありがたい解説書でした。巻末にはもっと鴨長明を学びたい方に向けての参考図書一覧も掲載されています。本書は鴨長明入門としてぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「小林一彦『100分de名著 鴨長明 方丈記』概要と感想~鴨長明と方丈記をわかりやすく学べるおすすめ入門書」でした。
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