牛山佳幸『善光寺の歴史と信仰』あらすじと感想~長野の歴史ある寺院の歴史や法然門下、親鸞との関係も知れるおすすめ本

牛山佳幸『善光寺の歴史と信仰』あらすじと感想~長野の歴史ある寺院の歴史や法然門下、親鸞との関係も知れるおすすめ本
今回ご紹介するのは2016年に法藏館より発行された牛山佳幸著『善光寺の歴史と信仰』です。
早速この本について見ていきましょう。
全国屈指の著名寺院、信濃の善光寺。膨大な史料考証を元に、数々の伝承に彩られた同寺の姿を描き出す。善光寺を知る絶好の一冊!
Amazon商品紹介ページより

本書『善光寺の歴史と信仰』は善光寺を学ぶのにおすすめの参考書です。
北海道に住む私にとって善光寺というのは日本を代表するお寺として名前は知ってはいても、どうしても行きにくい遠い場所というイメージがあります。そのため、この寺院についてもなかなかその歴史や雰囲気というものが想像しにくいというのが正直なところでした。
そんな私がなぜこの本を手に取ったかといいますと、浄土真宗の開祖親鸞聖人が「勧進聖」として滞在していたと真宗高田派の伝承にあることを知ったからでした。
善光寺は現在、天台宗と浄土宗が管理するお寺です。親鸞聖人が生きた平安末期から鎌倉時代には園城寺(三井寺)の末寺ではありましたが、当時から様々な信仰を持った僧侶がお寺を守っていたそうです。その善光寺に親鸞聖人が滞在した可能性がある。それならばこのお寺についてもっと知りたい、そう思い私はこの本を手に取ったのでした。
本書では善光寺の創建から現在に至るまでの流れがわかりやすく解説されます。善光寺に特化して書かれた本書は非常に貴重です。
そして東国武士や法然門下、親鸞門下との関係性も詳しく説かれますのでこれは私にとっても実にありがたいものがありました。
せっかくですのでこの親鸞聖人とその門下について書かれた箇所をここに紹介していきます。
のちに浄土真宗の開祖とされるようになる親鸞も、法然の数ある弟子の中の一人で、独自の道を歩んだ念仏聖であった。その前半生については必ずしもはっきりしないが、一時期、善光寺の堂衆もしくは勧進聖ではなかったかといった見解が一部の研究者の間にはある。その根拠とされるのは、『高田開山親鸞聖人正統伝』に、建保二年(一二一四)越後流罪から赦免され、関東へ移住する途次、信濃国に滞留して善光寺に一七日間参寵したと見えることなどである。親鸞の配流先は当時の越後国府の近在で、現在の新潟県上越市板倉区の周辺に比定されるから、関東に向かうには信濃国を経由し、その道筋に当たる善光寺へ立ち寄ったことはまったく考えられないことではない。しかし、同書は親鸞の時代から五百年近くものちに、真宗高田派の僧五天良空が、同派の優位を主張する意図を持って執筆した物語的な祖師伝記であって、ここに記された善光寺での参寵や、さらに戸隠顕光寺にも参詣して「熊笹の名号」を認めたといった話は、そのまま事実とは認めがたいものである。
ただ、注目されるのは、彼が晩年に作成したとされる三種の和讃(三帖和讃)のうちの一つ、『正像末浄土和讃』の末尾に、俗に「善光寺和讃」と呼ばれる五首の和讃があり、善光寺如来が聖徳太子による「物部守屋誅伐」を助けた件りが述べられていることである。(中略)
「初期真宗」で括られる念仏聖の一派は、いずれもこうした太子信仰を媒介として善光寺信仰を受容していたのが特徴であった。
その早い例として、親鸞の一面授の弟子とされる真仏や源智が拠点とした下野国の高田の道場が、前にも触れたように当初は太子堂と善光寺式如来像を安置する如来堂からなっていたことは、その点が顕著にうかがえる好例である。在地領主層に出自を有する真仏らは、嫌倉初期から東国武士の間に流布していた善光寺信仰を、いち早く受け入れていたのであろう。その後、初期道場が「専修寺」という寺号を有する寺院に成長を遂げるにしたがって、他の真宗系寺院と同様に、親鸞像を安置する本堂(御影堂)が建立されるようになっていくが、それでも如来堂の役割は失われなかった。高田派は一五世紀後半に伊勢国の一身田(現三重県津市)に進出して無量寿院(近世初頭に専修寺を名乗る)を建立し、やがて「高田本山」(旧寺は「高田本寺」)と称するに至るが、両寺を含めて高田派の寺院では,独自性を主張する意味もあってか、善光寺如来への信仰を踏襲して今日に至っている。
法藏館、牛山佳幸『善光寺の歴史と信仰』P137-140
ここにありますように、親鸞聖人が実際に善光寺で勧進聖として滞在していたかは歴史上確定はできていませんが、聖人や関東の初期真宗教団と善光寺とのつながりを知る上でこの箇所は大きな示唆を得ることができました。
私は親鸞聖人と善光寺のつながりを知るために本書を手に取りましたが、そもそも善光寺自体が日本の歴史上非常に大きな存在であります。私のような真宗僧侶だけでなく、日本仏教に興味のある方、そして善光寺をもっと知りたいという方にもぜひおすすめしたい参考書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「牛山佳幸『善光寺の歴史と信仰』あらすじと感想~長野の歴史ある寺院の歴史や法然門下、親鸞との関係も知れるおすすめ本」でした。
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