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神田千里『宗教で読む戦国時代』概要と感想~戦国時代の人々が共有していた「天道」とは何か。私達の常識を覆す一冊!

宗教で読む戦国時代
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神田千里『宗教で読む戦国時代』概要と感想~戦国時代の人々が共有していた「天道」とは何か。私達の常識を覆す一冊!

今回ご紹介するのは2010年に講談社より発行された神田千里著『宗教で読む戦国時代』です。

早速この本について見ていきましょう。

戦国日本人の「見えない宗教性」を解明。なぜキリスト教は拒否されたのか。一向一揆は宗教一揆だったのか。宣教師も驚いた戦国日本人の高度な精神性。その「ゆるやかな宗教性」のバックボーンとしての「天道」思想をキーワードに、一向一揆、キリシタン論争から島原の乱まで、日本人の心性に新たな光を投げかける。(講談社選書メチエ)

宣教師も驚いた戦国日本人の高度な精神性。その「ゆるやかな宗教性」のバックボーンとしての「天道」思想をキーワードに、一向一揆、キリシタン論争から島原の乱まで、日本人の心性に新たな光を投げかける。

講談社商品紹介ページより

前回の記事「神田千里『一向一揆と石山合戦』概要と感想~一向一揆は作られたイメージだった!?本願寺教団急拡大の背景を知れる刺激的な一冊」では室町戦国期の本願寺教団の歴史を学べる名著『一向一揆と石山合戦』をご紹介しました。

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神田千里『一向一揆と石山合戦』概要と感想~一向一揆は作られたイメージだった!?本願寺教団急拡大の背... 戦国時代の一揆といえば浄土真宗門徒による一向一揆というイメージが私達にはありますが実はこれが後世に作られた説話だったとしたらどうでしょう。戦国当時としては「一向一揆」という言葉がほとんど使われず、真宗門徒による一揆という観念すら乏しかったのだそうです。では、なぜ「この時代に一向一揆が頻発し、歴史に大きな影響を与えた」と私達は教えられることになったのでしょうか。そうしたからくりが本書で明らかにされます。これには私も驚きました。

そして今作も同じく神田千里氏の作品ですが、この本も非常におすすめです。戦国時代における宗教とはどのようなものだったのかを学ぶのにこの本は必読と言ってよいほど素晴らしい参考書でした。

しかもこの本でも私達の常識を覆す驚きの説が語られます。特に「天道」という当時の日本人が広く受け入れていた考え方についての考察はあまりに衝撃的でした。そして当時の仏教教団がどのような社会活動をしていたのかも本書では知ることができます。これも各仏教宗派の思想史だけを学んでもなかなか見えてこない姿です。やはり思想や教義だけを見ても見えてこない姿があることを深く実感しました。

さらに戦国時代に一気に広まったキリスト教と日本人の関係についての考察も非常に興味深いです。なぜ為政者はキリスト教を弾圧したのか、その理由にも上で述べた「天道」が関わってきます。

本願寺教団が一気に拡大したのは室町時代後期から戦国時代にかけてです。まさにこの激動の時代だからこそ本願寺が強くなったと言えるでしょう。その背景を考えるのに本書は非常に有益です。私も大いに目が開かれた読書になりました。

やはり「宗教は宗教だけにあらず」。

知れば知るほど宗教に対する見え方が変わってきます。これまで私は世界の宗教や歴史に目を向けてきましたが、いよいよこうして日本に目を転じてみるとやはり日本もこうだったかと思わずにはいられませんでした。ですがこうして歴史や政治経済、様々な分野を知った上で宗教をどう捉えるかというのは私達僧侶にとって非常に重要な責務だと私は考えています。だからこそこれからも学び続けていきたいと改めて気を引き締めた読書となりました。

これはものすごい名著です。刺激満載のとてつもない逸品でした。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「神田千里『宗教で読む戦国時代』概要と感想~戦国時代の人々が共有していた「天道」とは何か。私達の常識を覆す一冊!」でした。

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宗教で読む戦国時代 (講談社選書メチエ 459)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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