清水克行、高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』概要と感想~室町とソマリランド!強烈な対談がただただエキサイティング!

清水克行、高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』概要と感想~室町とソマリランド!強烈な対談がただただエキサイティング!
今回ご紹介するのは2015年に集英社インターナショナルより発行された清水克行、高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』です。
早速この本について見ていきましょう。
現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた!
世界観がばんばん覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による”超時空”対談。
世界の辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば世界の辺境の謎が解けてくる。中島京子さん推薦
Amazon商品紹介ページより
「脳天にハンマー直撃。目から鱗ボロボロ。」
今作『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は以前の記事で紹介した『室町は今日もハードボイルド』の著者清水克行氏とノンフィクション作家高野秀行氏によるとんでもなくエキサイティングな対談本です。
この本の成り立ちについて高野秀行氏は本書冒頭では次のように述べられています。ここからしてすでにものすごく面白いのでぜひ皆さんに紹介したいです。
私はふつうの人が行かないアジアやアフリカなどの辺境地帯を好んで訪れ、その体験を本に書くという仕事をしている。こんなことで生活できるのはありがたいと思うが、一つ困るのは話し相手がいないことだ。
たとえば、ここ五年ほど通って取材を行っているアフリカのソマリ人。彼らは数百年前から続く伝統的な社会システムを現在でも維持しており、それに従って内戦も和平も恋愛も海賊行為も行われている。面白くてたまらないのだが、ソマリ人が主に暮らすソマリアやソマリランドは数多くの武装勢力が群雄割拠する危険地帯と見なされているがゆえに、日本には専門とする研究者もジャーナリストも存在しない。
結局、私が一人で細々と取材し、相談する相手もないまま考えを巡らせている。これではなかなか知見が深まらないし、淋しい。「ソマリ人の復讐の方法って徹底してるよね?」と言えば、「そうそう、あれはすごいよね」と打てば響くように返してくれる「同好の士」が欲しいと常々思っていた。
そんなとき、ドンピシャの話し相手が想像もしない方角から現れた。
日本中世史を研究している明治大学教授・清水克行さんだ。
清水さんの著作を読み、室町時代の日本人と現代のソマリ人があまりに似ていることに驚いた私は、縁あって清水さんご本人と直接お会いする機会を得たのだが、ソマリ人はもとより、アジア・アフリカの辺境全般に過去の日本と共通する部分が多々あるということを発見、あるいは再認識し、ほとんど恍惚状態となった。
何しろ、私が「ソマリアの内戦は応仁の乱に似てるって思うんですけど、どうですか」などと、誰にも打てない魔球レべルの質問を投げかけても、清水さんは「それはですね……」と真正面からジャストミートで打ち返してくれるのだ。
同席していた編集者の女性に後で「高野さん、あのとき目がハートマークになってましたよ」と笑われたほどである。私としては長年探していた青い鳥がすぐ近くにいたらえに、その青い鳥が実は黄色かったというくらいの衝撃であり、予想外の喜びだった。最初は素面で、途中から居酒屋に移って日本酒を飲みながら、都合五時間もしゃべり倒した。後半は何をしゃべったか記憶がない。
当初はこれを仕事にしようなどとは毛頭思っていなかったが、その編集者が気を利かせて私たちのおしゃべりを録音し、後で文字に起こしてくれた。読むと意外に面白い。素面の部分と酔っ払っていた部分の区別がつかなかったのにも驚いた。最初から異様にテンションが高かったのだろう。
好奇心旺盛な清水さんもこの奇妙な会話録を面白がってくれ、「もっと話を続けて対談本をつくりましょう」ということになった。そしてできたのが本書だ。
話題は多岐にわたっている。タイやミャンマーの話もあれば、日本の古代や江戸時代にも飛ぶ。酒や米、国家やグローバリズム、犬や男色にも及ぶ。でも、清水さんと話していて興奮するのは、それが単なる雑学に終わらないことだ。
今まで旅してきた世界の辺境地ががらりと変わって見えるのだ。
いくら自分の目で見ても、アジアやアフリカの人々の行動や習慣は、近代化が進んだ都市に住む外国人の私にはなかなか理解できない。だが、日本史を通して考えれば、「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間がある。
逆に、清水さんは、「前近代を体感するうえで世界の辺境地の現状はとても参考になる」と言う。歴史学者といえども、何百年も前に生きた人の考え方や生活を想像するのは難しい。今、実際に生を営むアジアやアフリカの人たちと比べることで、古文書の理解が深まることもあるそうだ。
要するに、「世界の辺境」と「昔の日本」はともに現代の我々にとって異文化世界であり、二つを比較照合することで、両者を立体的に浮かび上がらせることが可能になるのだ。
では、世界の辺境と中世の日本はなぜ似ているのか。どちらも現代日本に比べれば格段にタフでカオスに満ちた世界なのはなぜなのか。
本書を手に取られたみなさんがそんな疑問を感じたら、もうしめたもの。それこそが本書最大のテーマだからだ。
これから始まる魔球対決にみなさんが参加し、私たちの同好の士となってくれることを祈念してやまない。
集英社インターナショナル、清水克行、高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』P3-6

いかがでしょうか。上の箇所を読むだけでもワクワクしてきますよね。
そしてそもそもですが高野氏の言うソマリランドという地名も初めて聞く方も多いと思います。ここはソマリア国内の内戦によって1991年にソマリアからの独立を宣言した地ではあるのですが、現在も国連では承認されてはいません。このソマリアの内戦はあの『ブラックホークダウン』で有名なモガディシュの戦闘があったことで知られています。この事件については記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
このソマリランドと室町時代のアナーキーでハードボイルドな社会が似ていると高野氏は直感したのでありました。
高野氏は早稲田大学出身ということで私の大先輩に当たります。本書の中でも「早稲田大学には変人が多く、そしてそのイメージのせいでイタいことになる」ということについても語られていたのですがこれが私も「わかる!」と思わずくすっとしてしまうお話でした。高野氏は学生時代冒険部だったそうで、その頃からぶっ飛んだ何かを追い求めていたのですね。たしかに私も在学中冒険部のぶっ飛びぶりはよく噂には聞いていましたが、この本を読んで改めて「それはそうだよね」とそのぶっ飛びぶりに納得してしまいました笑
以前の記事で紹介した『室町は今日もハードボイルド』も最高にエキサイティングな作品でしたが、今作は対談ということでまた違った視点から室町や現代世界を見ることができる実に刺激的な一冊となっています。これはぜひ学生にも読んでほしいなと強く思います。私達の常識や先入観を破壊する名対談です。ぜひぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「清水克行、高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』概要と感想~室町とソマリランド!強烈な対談がただただエキサイティング!」でした。
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