MENU

藤木久志『土一揆と城の戦国を行く』概要と感想~室町時代のどぎつい現実を知れるおすすめ本!自力救済社会の究極がここに

土一揆と城の戦国を行く
目次

藤木久志『土一揆と城の戦国を行く』概要と感想~室町時代のどぎつい現実を知れるおすすめ本!自力救済社会の究極がここに

今回ご紹介するのは2006年に朝日新聞社より発行された藤木久志著『土一揆と城の戦国を行く』です。

早速この本について見ていきましょう。

世界各地で広がり続く内戦は多くの難民を生み出している。かつて日本にも同様な時代があった。飢饉で村を捨て、都市に流れ込む。流民たちが武器を持ち、生存をかけて戦う。日本の中世とはそういう時代だった。戦争から平和へ、武具を取り上げた近世の太平は、中世を克服することにほかならなかったのだ。『雑兵たちの戦場』で鮮やかに日本の中世像を書き換えた著者の「戦国を行く」シリーズ第3弾。

朝日新聞出版商品紹介ページより

本書では室町、戦国時代にかけて頻発した土一揆や戦乱による村人の苦しい生活ぶりを知ることになります。

著者によれば1300年頃から1850年頃は地球規模の「小氷河期」となっていて、特に応仁の乱を挟む100年は「夏が来なかった時代」と言われるほどの厳しい気候だったとされています。つまり、絶望的な飢饉が日常的に人々を襲う時代だったということになります。

そんなただでさえ生存困難な気候の中、さらに戦乱で田畑は荒らされ、恐るべき荒廃が街を襲っていました。そんな極限状態の中、村の人々はどのように生き抜いたのかということが本書で語られます。この本も私達の固定観念を覆す刺激的な一冊です。私達が想像するよりもはるかにバイオレンスな世界がそこには広がっていました。

暴力という前提がなければ全く生存不可能な世界です。ただ、そんな中でも本書を読めば寺院がある特殊な役割を果たしていたことにも私達は気づかされることになります。これもまた本願寺教団の形成を考える上で大きな示唆を与えてくれる内容でありました。

前回の「今谷明『戦国期の室町幕府』概要と感想~臨済宗五山派と幕府の関係性について知るのにおすすめ!実務官僚としての禅僧の存在とは」の記事でも室町戦国期の独特な時代背景があったからこそ本願寺教団が急拡大したということをお話ししましたが、本書ではそれをさらに具体的に見ていくことができます。

これは私も読んで衝撃でした。やはり「宗教は宗教だけにあらず」。私達の常識や先入観を覆すとてつもない世界がここにありました。これはものすごい名著です。

以前紹介した清水克行著『室町は今日もハードボイルド』もこうしたアナーキーでハードボイルドな室町時代について詳しく論じていますが、ぜひ合わせておすすめしたい作品となっています。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「藤木久志『土一揆と城の戦国を行く』概要と感想~室町時代のどぎつい現実を知れるおすすめ本!自力救済社会の究極がここに」でした。

Amazon商品紹介ページはこちら

土一揆と城の戦国を行く (朝日選書 808)

土一揆と城の戦国を行く (朝日選書 808)

前の記事はこちら

あわせて読みたい
今谷明『戦国期の室町幕府』概要と感想~臨済宗五山派と幕府の関係性について知るのにおすすめ!実務官... 本書はとてつもない名著です。私もこの本には参りました。「え!?」という事実が次から次に出てきます。完全に常識が覆されました。それほどこの本は衝撃的です。

関連記事

あわせて読みたい
山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』概要と感想~戦国時代の室町幕府の意外な事実を知れる刺激的な名著! 応仁の乱後の室町幕府の将軍は傀儡だったというのが世間の一般的なイメージでありますがそれとは全く異なる事実を本書で見ていくことになります。戦国時代に比べて影の薄い室町時代ではありますが、こんなに面白い時代だったとは!これはものすごい名著です。ぜひおすすめしたいです。
あわせて読みたい
清水克行『室町は今日もハードボイルド』概要と感想~私達の常識を覆す衝撃の1冊!面白すぎです! この本は私達が驚くような内容が次々と語られる一冊です。 室町時代がいかにアナーキーで暴力的でハードボイルドだったか。エンタメ感の強いタイトルや表紙とは裏腹に著者は資料に基づいた学術的な内容を楽しく解説していきます。 著者の語るエピソードもくすっとしてしまうユーモアもたっぷりで非常に読みやすいです。
土一揆と城の戦国を行く

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

目次