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山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』概要と感想~戦国時代の室町幕府の意外な事実を知れる刺激的な名著!

足利将軍たちの戦国乱世
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山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』概要と感想~戦国時代の室町幕府の意外な事実を知れる刺激的な名著!

今回ご紹介するのは2023年に中央公論新社より発行された山田康弘著『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』です。

早速この本について見ていきましょう。

足利将軍家を支える重臣たちの争いに端を発した応仁の乱。その終結後、将軍家は弱体化し、群雄割拠の戦国時代に突入する。だが、幕府はすぐに滅亡したわけではない。九代義尚から十五代義昭まで、将軍は百年にわたり権威を保持し、影響力を行使したが、その理由は何か――。歴代将軍の生涯と事績を丹念にたどり、各地の戦国大名との関係を解明。「無力」「傀儡」というイメージを裏切る、将軍たちの生き残りをかけた戦いを描く。

中央公論新社商品紹介ページより
最後の将軍足利義昭(1537-1597)Wikipediaより

本書は室町幕府の流れを知るのに最高の一冊です。主題は応仁の乱後の幕府と将軍の動きでありますが、本書前半でそこに至るまでのおおまかな流れも解説してくれますのでこれは非常に助かります。しかもとにかく読みやすくてわかりやすい!物語調で歴史を語ってくれるためすっと流れが入ってきます。

そして応仁の乱後の室町幕府の将軍は傀儡だったというのが世間の一般的なイメージでありますがそれとは全く異なる事実を本書で見ていくことになります。戦国時代に比べて影の薄い室町時代ではありますが、こんなに面白い時代だったとは!これはものすごい名著です。ぜひおすすめしたいです。

そして著者はこの時代を学ぶことの意義について次のように述べています。

私たちは現代に生きている。それゆえ、現代の世界についてよく知らない、というのは危険なことである。「自分がいまどのような場所にいるのか」がわからなければ、これからどちらに進むべきなのか、ということもわからないだろう。しかし現代は、私達にとってあまりにも身近な存在であるがゆえに、私たちには現代の姿がなかなか見えない。当たり前すぎて、ついつい見すごしてしまうのだ。あるいは「現代のことなど、すでによく知っている」と思いこみ、じっくり考えることを怠ってしまうこともある。

そこで戦国時代を知り、これと現代の世界とを比較してみるのである。すると、現代の特徴が浮き彫りになり、その結果、「すでによく知っている」と思いこんでいた現代の世界を、自分が意外に知っていなかったことがわかってくる。そして、日ごろは当たり前すぎて気づかない、現代の世界があらためて見えるようになってくるのだ。つまり、戦国時代の日本列島を知ることは、私たちに、現代の世界を再発見する気づきをあたえてくれる。だから、私たちにとって戦国時代を知ることには「意味がある」のである。

中央公論新社、山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘』Pⅳーⅴ

ここで著者が述べるように、本書は戦国時代のあり方を通して私達の生きる現代も考えさせられることになります。

上でも述べましたが本書では私達の常識や先入観を覆す衝撃の事実が次々と明らかにされます。

また、私達浄土真宗僧侶にとっても室町幕府と本願寺教団の関係性は見逃せません。本願寺教団は蓮如という偉大な中興の祖の存在によって急拡大したと一般的には語られますが、彼一人の存在で織田信長と戦えるほどの巨大王国になることはありえません。実はこの急拡大にも幕府と当時の時代背景が密接に絡んでいたのです。読めば読むほど呆然としてしまうほどの背景がそこにあったのでした。

この本を読むと私達が今まで教わってきた歴史とは一体何だったのかということまで考えさせられます。まさに戦国時代を通して今が問われてくるわけです。

これはとてつもない名著と出会ってしまいました。ぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』概要と感想~戦国時代の室町幕府の意外な事実を知れる刺激的な名著!」 でした。

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足利将軍たちの戦国乱世 応仁の乱後、七代の奮闘 (中公新書 2767)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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