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倉本一宏『平安京の下級官人』概要と感想~平安京に生きる多種多様な人々にスポットを当てたおすすめ本!疫病や災害に人々はどう対応していたのか

平安京の下級官人
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倉本一宏『平安京の下級官人』概要と感想~平安京に生きる多種多様な人々にスポットを当てたおすすめ本!疫病や災害に人々はどう対応していたのか

今回ご紹介するのは2022年に講談社より発行された倉本一宏著『平安京の下級官人』です。

早速この本について見ていきましょう。

平安のお役人もつらかった?
古記録から浮かび上がる庶民たちの人生!

五位以上の貴族と六位以下の下級官人たちの埋めがたい格差、下人同士の闘乱、平安京を彩る諸芸の人びと――。
平和で優雅な時代の苛酷な日常を描き出す一冊。

・上級貴族の邸第は一町四方、下級官人は四分の一町四方が標準
・下級官人は、家に築地塀を築いたり、檜皮葺にすることは禁止
・親が下級官人であれば、出世は事実上閉ざされていた
・任官を切々と訴える書家の申文
・官符を偽作した七十六歳の涙
・清少納言の兄の殺害事件
・道長邸で盗まれた二千両
・下級官人たちの抗議の訴え
・疫病に襲われた平安京の感染対策
・鴨川洪水の被害
・死穢は三十日の忌み

Amazon商品紹介ページより

本書『平安京の下級官人』は平安時代の庶民の生活を知れるおすすめの参考書です。平安時代といえば貴族が優雅に遊んでいるイメージがあるかもしれませんが、実際にはそんな彼らを支えた無数の下級官人たちの存在があります。

本書ではそんな下級官人の姿や、平安京に生きた様々な人々の暮らしについて知ることができます。

上流貴族の仕事を補佐する下級官人の仕事は現代の官僚・公務員にそっくりです。彼らがどのような生活をしていたかというのはとても興味深かったです。涙ぐましいまでの激務や献身もあれば、読んでいるこちらが呆気にとられるほどのさぼりっぷりもこの本では目の当たりにすることになります。

天皇が在所する内裏の警備が緩すぎて盗人が簡単に入ってくるというのは衝撃ですらありました。夜中の宿直がさぼって出勤してこないということが多々あったとのこと!これにはびっくりです。

そして私個人として一番印象に残ったのは疫病や天災に対する人々の反応についてでした。

現代に生きる私達からすれば平安時代というのは迷信的で非科学的とイメージしがちですが、その当時の社会状況を考えてみると、精一杯科学的な対処もなされており、単に迷信や怪異に右往左往していたわけではなかったというのです。

著者もこのことについて巻末の「おわりに」で次のように述べています。

先にも触れたが、平安時代の人間は、我々現代人よりも劣った連中であり、現代人は彼らよりも進歩した人類であるというのは、きわめて思い上がった考えである。あの時代には科学技術が発展していなかっただけで、彼らはその中においては、きわめて冷静で論理的に生きていたのである。むしろ、これだけ科学技術が発展した社会に暮らしている現代人が、「占いランキング」や結婚式・葬式の日取りを気にしたりしている方が、よほど愚かなことと感じざるを得ない。そもそも、歴史が果てもなく「発展」し、人類がとめどなく進歩しているという発想自体が、笑止千万なのである。(中略)

ともあれ、平安京に生きた人びとも、我々と同じく日本に暮らす人間なのだということを、今回、改めて実感した次第である。周囲の環境や科学技術、生活様式は違っても、それに対応する心や頭の動きは、そうは変わらない。この本で描いた下衆や下人は、じつは我々みんなのご先祖さまだったのである。これも師匠の口癖ではないが、「世の中なんて、そんなに変わるもんじゃあない」のであった。

講談社、倉本一宏『平安京の下級官人』P257-260

この本を読んでいると、「ほお、たしかになるほど、そうなのか」と思わず唸りたくようなことがどんどん出てきます。平安時代に生きた人々も私達と同じ人間です。「世の中なんて、そんなに変わるもんじゃあない」というのは至言ですよね。

平安時代の人々の暮らしというとどこか遠い世界のように考えてしまいがちですが、この本を読めばそんなイメージも大いに変わることでしょう。

平安時代といえば摂関政治などの派手な部分に目が行きがちですが、こうした名もなき人々の生活に目を向けることの大切さ、面白さを体感した読書となりました。ぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「倉本一宏『平安京の下級官人』概要と感想~平安京に生きる様々な人にスポットを当てたおすすめ本!疫病や災害に人々はどう対応していたのか」でした。

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平安京の下級官人 (講談社現代新書 2649)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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