佐々木恵介『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』概要と感想~藤原道長の栄華に至る歴史の流れを学ぶのにおすすめ!

佐々木恵介『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』概要と感想~藤原道長の栄華に至る歴史の流れを学ぶのにおすすめ!
今回ご紹介するのは2011年に講談社より発行された佐々木恵介著『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』です。
早速この本について見ていきましょう。
9世紀後半、幼帝清和天皇の外祖父・藤原良房が摂政になり、息子・基経が関白の地位を得て、その後200年におよぶ摂関政治の時代が始まった。醍醐・村上天皇の「延喜・天暦の治」と将門・純友の乱、そして道長の栄華。藤原氏が王権をめぐる姻戚関係を支配するなかで、天皇のみがなしえたこととは何か。「摂関家による政治の私物化」という従来の捉え方を超えて、天皇が「生身の権力者」から「制度」へと変貌していく時代を描く。
Amazon商品紹介ページより

本書『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』は藤原道長で栄華の絶頂を迎える摂関政治の流れを学ぶのにおすすめの参考書です。
この「天皇の歴史」シリーズは以前当ブログでも『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』を紹介しました。

前作『聖武天皇と仏都平城京』も奈良・平安時代初期をわかりやすく学べる参考書でしたが、今作『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』も期待に違わぬ素晴らしい一冊でした。
本書について著者は冒頭で次のように述べています。
本書で取り扱うのは、九世紀半ばの文徳天皇在位(八五〇~八五八)から十一世紀半ばの後冷泉天皇(在位一〇四五~六八)までの約一〇〇年間、政治史上の時代区分でいうと、摂関政冶の時代ということになる。(中略)
読者は、摂関政治という言葉で、どのようなことを思い浮かべるだろうか。摂政・関白が天皇を抑えつけ、勝手気ままな政治を行っていたというイメージを持っている人もいるかもしれない。あるいは、当時の貴族は寝殿造の邸宅で、日々宴遊にふけっていたと想像するかもしれない。このようなイメージが一般的だった時期があるのは事実だが、いずれにしても、ある時代に対するイメージや評価は、それぞれの時期の状況を背景に、歴史的に形作られてきたものである。そこで、この時代の天皇のありかたを探っていくために、まず摂関政治というものがこれまでどのように捉えられてきたのか、振り返ってみたい。
講談社、佐々木恵介『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』P10-11
「読者は、摂関政治という言葉で、どのようなことを思い浮かべるだろうか」
よくよく考えるとこれはドキッとする問題提起ですよね。私達が習ってきた、あるいはイメージする歴史がはたして本当に正しいのかという問題提起から本書は始まります。
そしてこの引用の最後で述べられたように、まずは摂関政治がどのように捉えられてきたかが解説され、そこからいよいよ歴史の本編に入っていくことになります。
本書を読んでいて感じたことは「とにかく読みやすくてわかりやすい」ということです。
平安時代の歴史を学ぶ上で一番難しいのは似たような人物名が多すぎて頭が混乱してくる点にあります。そんな混乱しがちなこの時代ですが、本書では歴史の流れに沿ってできるかぎりシンプルかつ流麗に解説がなされていきます。
もちろん、単に簡略化して複雑な内容を省いたというわけではなく、著者の語りがとにかくすっきりしているので私達読者が余計な混乱をせずに済むということです。これはすごいです。
あのややこしい人物相関図がすっと頭に入ってくるのです。道長だけでも兄弟が多数いますし、そのさらに親や祖父の世代となるとさらに増えてきます。しかもどんどん変わる天皇・・・そうなってくると普通は混乱してしまうのですが、本書ではそれらが驚くほどスムーズに語られることになります。これぞまさに著者の文章力、解説力のなせる業です。
摂関政治の流れを知るのにこの本はベストだと思います。私にとって著者の文章力・解説力にも頭が下がりっぱなしの一冊となりました。複雑な歴史を学術的にしっかり押さえた上でわかりやすくスムーズに伝えるということのすごさを体感した参考書です。いやあ、これはいい本です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「佐々木恵介『天皇の歴史03 天皇と摂政・関白』概要と感想~藤原道長の栄華に至る歴史の流れを学ぶのにおすすめ! 」でした。
Amazon商品紹介ページはこちら
天皇の歴史 天皇と摂政・関白 (3) (講談社学術文庫 2483)
前の記事はこちら

関連記事


