MENU

池辺晋一郎『メンデルスゾーンの音符たち』あらすじと感想~メンデルスゾーンの名曲を解説する1冊!

目次

池辺晋一郎『メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」』概要と感想~メンデルスゾーンの名曲を解説する1冊!

メンデルスゾーン(1809-1847)Wikipediaより

今回ご紹介するのは2018年に音楽之友社より発行された池辺晋一郎著『メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」』です。

早速この本について見ていきましょう。

大人気“音符たち”シリーズの第10弾。バッハ、モーツァルト、ブラームス…と作曲家の名を冠した作品としては最終巻となる今作(シリーズは継続中)。人気作曲家・池辺晋一郎が子ども時代から惹かれつづけてきたというメンデルスゾーンで掉尾を飾る。
小難しそうな分析(アナリーゼ)や学者的なアプローチは一切なし! 著者いわく、「間違いなく、天才。音楽史上五指に入る大天才」ながら「やや不当な評価を受けてきている」メンデルスゾーンの天才性や抜群の作曲センスを、TVやFMでおなじみの語り口そのままの軽妙洒脱な筆致で初心者にもわかりやすく、しかも面白く説き明かす。
近年、再評価著しいメンデルスゾーンの音楽の魅力、真価を知るには恰好の1冊。
*『音楽の友』誌上の連載(2016年4月~2018年3月)に加筆訂正し、まとめたものです。


Amazon商品紹介ページより

この本はメンデルスゾーンの名曲を作曲家である池辺晋一郎氏が解説していくという流れの作品です。

上の商品紹介にもありますように語り口はかなり軽快です。難しい哲学的な話ではなく、読者に語りかけるかのような雰囲気でとても読みやすいです。

この本の第一章は次のようにして始まります。

メンデルスゾーンは、大局的に見て、やや不当な評価を受けてきているのではないか。もちろんこの作曲家とその作品を愛している人はたくさんいる。が、バッハ、モーツァルト、べートーヴェンなどと同じように世の称賛を一身に浴びているかというと、どうもそうではないような気がする。その理由の1つは、金持ちだったから。貧しいなかで音楽に目覚めた、とか苦悩を克服して至高の芸術へ、という話が好まれるのだ、一般的に。かくいう僕も、屋根裏部屋でろうそくの光で作曲した、などという話に憧れた子ども時代を経験している。なのに、メンデルスゾーンの音楽には、その子ども時代から惹かれつづけてきた。大好きな曲がたくさんあった。長じても、これは変わらない。すばらしい作曲家だと、思いつづけている。

間違いなく、天才。音楽史上五指に入る大天才だ。そして、このシリーズの重要なコンセプトである「全方位的な作曲家」である。このシリーズの10人目として扱うにふさわしい作曲家だと、僕は信じている。

ところで、いきなり妙な角度から話を切り出すが、画家としてのメンデルスゾーンを知っていますか?手元に、もちろん原画ではないが、スイスの風景を描いたメンデルスゾーンの絵が13枚、ある。絵画としてどれだけの価値があるか、それは専門家でない僕に分かるはずもないが、少なくとも技術的に、すばらしい。精緻にして幻想的。微細なタッチに惹きこまれてしまう。

作曲家としても「音楽の風景画家」と呼ばれてきた。「音で絵を描いた」と言われることもある。かのワーグナーがメンデルスゾーンを評して「第一級の風景画家」と呼んだことは知られているが、その際にワーグナーが感じ入ったのは序曲《フィンガルの洞窟》だ。実はこの曲、僕の大々愛好曲。では、そこから始めることにしたいと思う。


音楽之友社、池辺晋一郎『メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」』P9-10

メンデルスゾーンの生涯についてはこれまでも当ブログで紹介してきました。

たしかに彼は大銀行家の息子として生まれ、お金持ちでしたが彼もユダヤ人という出自や、その生真面目さによって並々ならぬ苦労をしています。決してお気楽な道楽ではありませんでした。あまりの激務、精神的なダメージによって彼は38歳で亡くなっています。

しかしそうしたことはあまりクローズアップされず、上で述べられるようにメンデルスゾーンはモーツァルトやベートーヴェンのようには評価されていないというのが実情なようです。

この本ではそんなメンデルスゾーンの名曲たちを楽譜と共に紹介していきます。メンデルスゾーンを代表する曲だけでなく、以下の目次のように様々な曲も紹介しています。

正直私は音楽経験がないので、楽譜を見てもその音楽的な解説を読んでもよくわかりませんでした。

ですが何か面白い!理論的なことはわからないのですが、自分が好きなメンデルスゾーンの曲はこんな風になっていてどうやらここがすごいらしいというのはこの本を読んでいて伝わってきます。

音楽に関する本を読んだことがほとんどない私にとって、音楽理論が書かれた本を読むというのはものすごく興味深い体験でした。音楽の専門家はこうやって楽譜を見ながら音楽を味わっているのだなと想像して読むのはとても楽しかったです。

メンデルスゾーン好きにはぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「メンデルスゾーンの名曲を解説する1冊!池辺晋一郎『メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」』」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」

メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」

次の記事はこちら

あわせて読みたい
中野京子『芸術家たちの秘めた恋―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代』あらすじと感想~歌姫ジェ... 19世紀を代表する作曲家メンデルスゾーン、デンマークの童話作家アンデルセン、スウェーデンの歌姫ジェニー・リンド。これら3人の大芸術家たちが織り成す物語。そして中野京子さんの筆が冴える冴える!とにかく面白い作品です!面白過ぎてあっという間に読んでしまいました。音楽ファンならずとも楽しめること請け合いです!

前の記事はこちら

あわせて読みたい
山下剛『もう一人のメンデルスゾーン』あらすじと感想~作曲家メンデルスゾーンの姉もすごかった! ファニーは作曲家フェリックス・メンデルスゾーンの4歳年上の姉です。 彼女はフェリックスを凌駕するほどの音楽的才能を持ち、彼の音楽家人生を陰ながら支えた人物です。 これまで祖父モーゼス、父アブラハムと見てきましたが、姉のファニーもものすごい才能の持ち主でした。メンデルスゾーン一族恐るべしです。

関連記事

あわせて読みたい
ドイツの天才作曲家メンデルスゾーン記事一覧~驚異の家系とその生涯、作品を知るのにおすすめの書籍も... スメタナの伝記から始まった私とクラシックとの出会い。 これまで全くクラシックに関心のなかった私でしたが、まさかこんなにはまるとは思ってもいませんでした。 そしてその中でもやはりメンデルスゾーンと出会えたのが何より大きかった・・・! なぜ私はこんなにも彼に惹かれたのか。 音楽はもちろん、彼の生涯、性格、そして文学とのつながりなどなど、考えてみればきりがないのですが、この記事で紹介した内容を読んで頂ければその魅力がきっと伝わってくれるのではないかと思います。
あわせて読みたい
ひのまどか『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』あらすじと感想~ナチスに抹殺された天才ユダヤ... これまで作曲家の物語シリーズをひたすら読んできたわけですが、正直、一番好きになったとも言える人物がこのメンデルスゾーンでした この伝記はあまりにドラマチックなメンデルスゾーンの生涯をひのまどかさん流の最高の語り口で堪能することができます。もうこれは読んで下さい!絶対に後悔しません!最高の読書体験になること請け合いです!
あわせて読みたい
H・C・ヴォルプス『大作曲家 メンデルスゾーン』あらすじと感想~曲紹介が充実のおすすめ伝記! この伝記はメンデルスゾーンの入門書として非常に優れています。 彼の生涯が130ページほどでコンパクトにまとめられており、しかも読みやすく、面白い。 また、この伝記の特徴として、伝記部分を終えた後に60ページほどを使って曲の紹介をしている点が挙げられます。この本はメンデルスゾーンの曲を聴く際の貴重なガイドとなります。
あわせて読みたい
『メンデルスゾーン家の人々―三代のユダヤ人』あらすじと感想~奇跡の一冊!ドイツの天才作曲家メンデル... この伝記も非常におすすめです!奇跡の一冊です!読んでいて驚くようなことが大量に出てきます 祖父モーゼスが大哲学者だったこと。そして父アブラハムもあのロスチャイルドと一時期並ぶほどの大銀行を設立していたこと これは衝撃の事実でした。特に祖父モーゼスがあのカントが尊敬していたほどの人物だったという事実には度肝を抜かれました
あわせて読みたい
シェイクスピア『夏の夜の夢』あらすじと感想~恋人たちと妖精のドタバタ喜劇!メンデルスゾーンの序曲... 『夏の夜の夢』は有名どころの作品と比べて、たしかに影の薄い作品かもしれませんが、大好きな作品です。 とにかく笑える愛すべき作品です。「スパニエル」、「石垣」がもう愛しくてたまりません。心がふっと軽くなる夢のような楽しい劇です。 シェイクスピア作品でこんなに笑える劇と出会えるなんて思ってもいませんでした。 ぜひぜひおすすめしたい作品です!
あわせて読みたい
作曲家メンデルスゾーンは絵もプロ級だった!『メンデルスゾーン(夢人館7)』私もお気に入りのおすす... メンデルスゾーンはモーツァルトに並ぶ神童と呼ばれ幼い頃から抜群の才能を示していましたが、彼にはなんと絵の才能までありました。 この画集にはずっと見ていたくなるような癒される絵がたくさん収録されてます。音楽家としてのメンデルスゾーンだけでなく、画家としての顔も見れるこの画集には大満足でした。
あわせて読みたい
星野宏美『メンデルスゾーンの宗教音楽』あらすじと感想~忘れられていたバッハを再発見したメンデルス... この本はメンデルスゾーンの宗教曲を楽しむための格好の解説書となっています。正直私は音楽家ではないので細かい音楽理論はわかりません。ですがそれでも楽しくこの本を読むことができました。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次